「大阪モノ物語」
都コンブ
世代を超えた国民的おやつ

▲1パッケージ15個ミリに計量された商品は容器に入れ、フィルムでパックされる。おなじみの赤い箱に入れて外側をフィルム包装を施すと完成
小学生のころ遠足のおやつは300円まで。限られた値段で選んだおやつの中には、必ずといっていいほど「都こんぶ」が入っていた。甘酸っぱくて、かめばかむほど味の出るそれはまさに「日本のチューインガム」。祖父母からもらった小銭を握っては近所にある駄菓子店に走ったことなども懐かしい。そんな世代を超えて愛される国民的おやつ「都こんぶ」の製造現場をのぞいてみた。
原料は最高級品の北海道・道南産の真昆布
工場内を案内してくれたのは木村史郎常務と岸田隆夫総務部長。
白い作業着に着替え、消毒を施してから内部へと足を踏み入れる。独特の酢のにおいに迎えられ、まず向かったのは原料となる昆布の倉庫。そこには部屋中にあふれんばかりの昆布の束。話によると約2年間分が保管されているという。「都こんぶ」の原料となるのは昆布の中でも最高級品とされる北海道・道南産の真昆布。ほかの昆布に比べ、柔らかさと甘みが特徴で、酢昆布に適している。
誕生は昭和6年 望郷の思いで「都こんぶ」と命名

▲都こんぶ独特の調味液に漬け込む作業。創業当初から大切に守られて秘伝の味は企業秘密
誕生から約80年。製造工程は発売当時からほとんど変わっておらず、手作業が中心。「昆布は自然の恵みなので、一つ一つ大きさや厚みが違っています。細かい付着物を取り除くにはやっぱり人の手でなければならない」と木村常務。 「都こんぶ」の誕生は1931(昭和6)年にさかのぼる。生みの親である中野正一さんは、少年のころ奉公先の昆布問屋で商品にならない昆布の切れ端をしゃぶっているときに、昆布を甘くすることでお菓子にできないかと考えた。独立した中野さんは中野商店を創業し、黒みつ入りの酢に漬けた昆布を硫酸紙に包んで販売。望郷の思いを込めてこの新しいお菓子を「都こんぶ」と名付け、紙芝居などで売り始めた。
53年には東京に営業所を構え、駅の売店や劇場など多くの人が集まる場所で販売。地道な営業販売で順調に売り上げを伸ばしていったが、「都こんぶ」の甘みを引き出すために使われていた人工甘味料のチクロに発ガン性があると指摘され、使えなくなるという窮地に追い込まれたことも。しかし、アミノ酸系の粉をまぶすという新たな方法を見いだすことで危機を脱することができたという。

▲乾燥した状態の昆布を酢に漬けてやわらかくする「荒漬け」の工程
生産は工場の2階で行われ、それ ぞれの持ち場を1−2人の従業員が担当。荒漬けと呼ばれる工程から梱包(こんぽう)を終えるまでに約1週間かかるという。製造の様子をカメラに収めるべく職員の方に話し掛けると、「こんにちは」とにこやかにあいさつをしてくれた。
忙しい作業の邪魔にならないよう少し離れたところからシャッターを切る。ファインダー越しに見事な手さばきを目の当たりにし、徐々に製品になっていく姿を見て、「都こんぶ」はこうして出来ていたのかと感動した。
美容や健康に効果
若い女性や小さな子どもを持つ母親も新たな需要
製造工程を終えた商品は1階の包装・梱包フロアへ。昆布の加工に比べ、こちらはずいぶんと機械化が進んでいる。ベルトコンベヤーから流れてくる出来たての製品たち。シンボルマークの桜と「都」の文字が書 かれた赤いパッケージは発売当初からほとんど変わっていないというから驚きだ。

▲「『都こんぶ』の歴史と質を守りながら、消費者のニーズに応えた新たな商品の開発にも積極的に取り組みたい」と話す木村常務(左)と岸田総務部長
最近ではこれまでの中高年ファンに加え、美容や健康の効果に注目した若い女性や、小さな子どもを持つ母親など新たな消費者も。
「作業的には手間暇がかかります が、手を抜くとお客さんはすぐに気付きます。今まで築いてきた信頼を崩したくはない。本物志向を貫きながら『都こんぶ』を維持発展させて、さらにいい商品を提供していきたい」。その頑固なまでのこだわりが長年にわたり支持される理由なのかもしれない。
中野物産株式会社 堺市堺区大仙中町14番20号
1931(昭和6)年に堺市で中野正一氏によって「中野商店」として創業される。昆布を原料としたお菓子「都こんぶ」を開発し、駅の売店や劇場などを中心に販売。59年に「中野物産株式会社」を創立し、地道な営業努力で徐々に売り上げを伸ばしていった。97年にはそれまで製造を行ってきた堺工場から貝塚市二色の浜に移転。伝統的な手作業による製法と最新の衛生・包装・管理設備を両立させた。最近では「都こんぶ」をベースにした新しい味と商品展開で多様な消費者のニーズに応えている。
過去のヒット作

-
真相・検証
-
突撃取材
-
ディープサウス探訪
-
スポーツ
- 浪速のJoe「辰吉丈一郎」
- 亀田一家の凋落
- 時代錯誤の日本相撲協会
-
大阪の動向
-
インタビュー





















