2007/9/22

なぜ多い? 50代ネットカフェ難民

 インターネットカフェなどで寝泊りしている「ネットカフェ難民」は若者たちと思いきや、なんと厚生労働省が実施した調査で、50代が最多の20代に肩を並べる勢いで増えていることが明らかになった。そこで実際にネットカフェを泊まり歩いている50代の男性に接触し、話を聞いた。日本の高度成長期を担った50代は、長引く経済の低迷に押し潰されようとしており、悲哀を感じさせられる。(若野正太郎)

サラリーマン男性に密着ルポ 6割は短期契約労働者

 Kさん。54歳独身男性。ノーネクタイだが、専門職のサラリーマン。「酒を飲んで遅くなり、帰るのが面倒になった」のが、ネットカフェをオールナイトで利用するようになった始まりだという。

 もともと酒好きで、よく飲む。ところが母親が住む実家は地下鉄とJRの新快速に、薄い本なら読めてしまうほどの時間を乗っていなければならない。大阪でアパートを借りる気になったこともあったが、やはり母親1人を置いて行けなかった。帰らない日が多くても、別に住居を構えるよりも抵抗がなかった。


▲商店の軒先で寝る野宿者。写真のすぐ奥にネットカフェの灯が見える

 泊まる回数が増えるに従って、宿泊先はビジネスホテルからカプセルホテルやサウナになった。西成のドヤ街にも泊まった。しかし最近はもっぱらネットカフェだ。

 「安いし、清潔。食べるものもそろっているし、テレビやパソコンもあって、朝食やソフトドリンクなどのサービスも充実している。本がたくさんあって、わたしらの世代に人気があるコミックを読めるのもいい。利用してみると、それなりに快適だと思う」

 例えば都島区のある店では、利用は1時間以上からで、30分100円。午後6時から受け付けの10時間パック「ハッピーナイトコース」はトースト、コーヒー食べ、飲み放題、卵1個の「おはようセット付き」で900円という安さ。インターネットは使い放題で、ソフトドリンクは飲み放題と、まさに「難民天国」だ。

 Kさんは多い時には「週に3、4日」は利用する。厚生労働省の調査では、この頻度の利用客が20・1%で、「週5日以上」が17・8%。これら週の半分以上をネットカフェでオールナイト利用する「ネットカフェ難民」は全国で約5400人に上るとか。

 ただしKさんは同じ店で連泊しない。中央、北、都島区にあるネットカフェを泊まり歩く。背中のリュックサックには「この通り、着替えが」と取り出して見せる。食料も入っている。

 「朝、ネクタイをして出て行き、毎晩、きちんと帰ってくるサラリーマン風の人を含め、使いたくない言葉ですが、いわゆる難民≠ニいわれる人が、うちの店でも6、7人いらっしゃいます」(キャリア2年の店員氏)のが、どこの店でも現実だ。

 背景にあるのは不安定な雇用の増大だ。調査でも日雇い労働者と1カ月以内の短期契約労働者で、難民≠フ6割を占めていた。失業者や無業者も少なくない。「路上生活者と紙一重。その日暮らしで、泊まる金がなければ野宿する難民≠烽「る」と指摘する声もある。

 「ネットカフェ難民」は拡大する所得格差が生んだ貧困層だ。働いても働いても暮らしが向上しない低賃金労働に甘んじさせられているのは、かつての経済成長の担い手である50代。皮肉な実態ではないか。


より便利に、より快適に進化するインターネットカフェ

 「ネットカフェ難民」などが社会問題化しているが、その一方でインターネットカフェや漫画喫茶などは利用料金の低下が進み、サービスも向上して快適さを増している。

 ネットカフェは漫画喫茶などの延長として2001年ごろから急速に広がった。1時間当たり200−300円程度、しかも終夜などの長時間利用ではパック料金が適用されるなどカプセルホテルなどに宿泊するより安く、簡易宿泊所として利用されることも増えた。

 一方でサービスは向上する一方だ。マンガ読み放題、ネットつなぎ放題、無料ドリンクは今や当たり前。ゲームやDVDの無料貸し出しのほか、カラオケ、ビリヤード、卓球などが利用できるところもあり、時間をもてあましてしまうことはない。ビジネス向けのサービスも拡大中だ。

 また、快適度も格段に向上している。リクライニングシートやハイバックのオフィスチェア、中にはマッサージチェアを置いている店もあり、ゆったりくつろぐことができる。個室を設ける店も増えており、ペアで利用できる部屋を用意している店も。また、シャワールームが用意されてシャンプー、ドライヤーなどがすべて無料で利用できるところもあり、快適に「生活」できること請け合いだ。


厚労省のネット難民実態調査

 厚生労働省が初めて実施した実態調査で、ネットカフェ難民が全国で約5400人に上ることが分かった。これまで中心と見られた20代の若者に加えて50代にも広がっており、「格差社会」がいわれる中、働いても住居費さえまかなえない「ワーキングプア」が広がっている実態が裏付けられた。

 調査は6月から7月にかけて行われ、全国の24時間営業のインターネットカフェ、漫画喫茶など3246店舗におけるオールナイト利用者などを調べた。

 その結果、全国で1日当たり約6万900人がネットカフェなどをオールナイトで利用していることが判明。ネットカフェなどを週半分以上常連的に利用する「ネットカフェ難民」は約5400人と推計した。

 性別では男性が大阪で92.7%、東京で94.2%を占めた。年代別では20代が26.5%と最も多く、50代も23.1%と2つの山があったが、大阪だけを見ると30代が約半数の48.8%だった。

 ネットカフェ難民約360人への聞き取り調査では、住居を失った理由としては「仕事を辞めて家賃などが払えない」(東京32.6%、大阪17.1%)、「仕事を辞めて寮や住み込み先を出た」(東京20・1%、大阪43・9%)、「家族との関係が悪く住居を出た」(東京13.8%、大阪12.2%)などがあった。

 ただ、住居確保に向けては「具体的な活動・努力をしていない」とする人が約半数を占め、問題点としては▽入居の初期費用確保の難しさ▽家賃を払い続けられるかどうか不安▽保証人が確保できない−などが多く、いったん住居を失ってしまうと元の生活に戻ることが困難な実態も浮き彫りになった。

 「店を拠点にして働きに行っている人もおられ、ネットカフェに泊まる人を野宿者と同様に扱ったり、難民という言葉で差別したりするのはおかしい。営業マンがお茶を飲み、休憩する場所として使われていることが多い。われわれのお客にレッテルを張るのは止めていただきたい」とはネットカフェ側の意見。


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