週刊大阪日日新聞

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2018/12/8

相続どう変わる? 40年ぶりの大改正 

相続法改正(中)

B 遺言制度

全文自筆の緩和と保管制度の創設

 相続を巡る争いを防止するために有効、というより「必要」といえるのが「遺言書」。ない場合には、全相続人で遺産分割協議を行い、まとまらなければ家庭裁判所で調停や審判を受けることになる。これは経験して初めてわかることだが、家裁に通う時間的負担もさることながら、これまで親しくしてきた身内同士での争いは、想像以上に精神的にきつい。

 遺言書(普通方式)には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類がある。(普通とは別に、死の危機が迫った緊急時に遺言する特別方式≠ェある)。

 うち自筆証書遺言は全文を遺言者が自書する必要があったが、今度の改正で手書きではなく、パソコンなどで作成したものでもOKになった。 この方式の見直し緩和は来年1月13日からの施行となる。

 自筆遺言書で何が大変かといえば、不動産や株式といった財産を記載し、それをだれに相続させるかを明示する、本文とは別に添付することもある「財産目録」だろう。不動産であれば、所在地や地目などの登記事項、預貯金であれば口座番号など、間違いやすい細かい数字や一つひとつ「すべて手書き」は高齢者にとって負担が大きい。

 それが「財産目録を別紙として添付する場合に限り」の条件付きだが、パソコンで作成した書面や登記事項の証明書、預金通帳のコピー添付などの方法が可能となった。偽造防止のため、添付書類の全頁に遺言者が署名、捺印する必要はあるが、家族に手伝ってもらう方法もできるようになった。

 今回、自筆証書遺言の保管制度も創設された。全国に約300ある「公証役場」の公証人がかかわる「公正証書遺言」と違い、これまで自筆遺言書には公的機関に保管する制度がなく、大半は自宅に保管されるのが常だった。

 新たに設けられた制度は、自筆証書遺言を遺言者自身が法務局に持参し、申請するだけで保管してもらえるというもの。数百円の手数料で済む見込みだ。

 制度を利用するためには、法務省が定めた様式の遺言書であることが必要で、簡単な審査がある。署名押印のもれや日付のミスなど、簡単なチェックがされるため、後々の「有効性をめぐる争い」の火種は確実に小さくなる。さらに、これまで遺産分割前に必要だった「家庭裁判所での検認手続き」は不要に。なお遺言書の内容は遺言者の死後、「遺言書情報証明書」の交付などによって確認できる。

トラブル防止には「公正証書遺言」

 「(2年以内ということだが)自筆証書を法務局が保管してくれるようになった点は、改ざんなどによるトラブルの防止という面では良かった。しかし数多く手掛けた経験から言わしてもらえれば、正しい∴竚セ書を作成するのは簡単ではない。そもそも遺言書を作ろうという人は、法定相続分通りに分割しようというのではない。それならば遺言書は必要ないのであって、依頼者の8、9割が違う分け方をしたいから、死後にもめることが予想されるから、遺言書を作るというのが実情。中にはペットに遺産を相続させたいという人までいるぐらいで、トラブル防止を考えると、やはり公正証書遺言を薦める」(酒井康雄・DY国際法務事務所代表・行政書士)


C 遺留分制度

遺留分の金銭請求が可能に

 遺言によって、自分の財産は自由に処分できる。相続人ではない人に遺贈したり、法定相続分とは違う、不公平な割合で相続人に相続させることが可能であるとは、よく知られている。しかし実はこれは原則であって、遺族の生活保障のために、自由は制限されている。

 故人の兄弟姉妹以外の法定相続人である配偶者、直系卑属(子や孫)、直系尊属(両親や祖父母)=遺留分権利者=には、遺言の内容にかかわらず最低限の財産相続が認められている。この権利を「遺留分制度」という。具体的には、相続人が直系尊属だけのケースは財産の3分の1、それ以外は2分の1が遺留分として認められており、特定の人だけに財産が遺された場合でも、請求(遺留分減殺請求)によって取り戻せる。

 今回、この遺留分請求に関して改正された。これまで請求によって返されるのは、不動産など現物が原則であって、金銭での支払いは例外とされてきた。これを「金銭のみ請求できる」とした。このシンプルな金銭一本化は「分割できずに共有」したため、建て替えすら自由にできなくなった不動産などの問題の多くを回避でき、請求処理もやり易くなる。それに支払いが金銭になったのを考慮して、裁判所に請求することで、一定期間は猶予してもらえることにもなった。

 遺留分について、算定方法も改正された。これまで相続人の間で、とかく争点になってきたのが「特別受益」だ。相続人の中に、高額な生前贈与を受けた(特別受益)人がいる場合、単純に法定相続分どおりに分けると、極めて不公平になってしまう。そこで遺留分の計算には、生前贈与も含め、特別受益者の取り分は減額される。

 見直されたのは、その贈与を受けた時期で、これまで相続人については「すべての期間の贈与」が対象とされていたものを「相続開始前の10年間に限って」参入されることになった。期間を限定することで、長期化しかねない争いを早期解決へとつなげようというものだ。


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