週刊大阪日日新聞

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2018/11/24

相続どう変わる? 40年ぶりの大改正

相続法改正(上)

 相続に関する民法の規定(いわゆる相続法)が今夏、40年ぶりに大きく見直された。可決成立した改正法のうち遺言制度の一部が来年1月13日から、を筆頭に、残りは順次、施行される。今回の改正では、配偶者居住権など新たに設けられた制度もあり、全体的には高齢社会に対応したものとなっているが、これまでの相続の常識が変わったことも確かだ。そこで主な改正ポイント6つを、専門家のアドバイスも加え、3回に分けて掲載する。さらにその後には相続に関する<求[ルなどをピックアップし「どうすればスムーズに、相続という関門をうまく乗り切れるのか」を取り上げることにしている。

@ 配偶者居住権

夫の死後も妻は住み慣れた家で

 「人生100年時代」といわれる高齢社会の進展で、残された相続人、特に配偶者である妻が高齢という老老相 続≠ェ普通になってきた。妻は夫の遺産の2分の1が法定相続分。残りは子どもたちが人数で割って相続する。しかし子どもの相続分や自身の生活費を捻出するには、妻は自宅を処分しなければというケースが少なくない。つまり住み慣れた家を出て行かなければならない。これは高齢者にとって、かなりきつい。

 そこで救済策として新たに設けられたのが「配偶者居住権」。短期と長期の2つの居住権があるが、配偶者(妻)は被相続人(夫)が亡くなった後も、被相続人の持ち家に「無償で」住み続けられるという権利である。

 これまで「使用の合意が推定される」という判例で、遺産分割が終わるまでは配偶者の居住が保護されていたものの、住宅が第三者に相続されるなどのケースでは、保護できなかった。それを原則6カ月間は住めるとしたのが短期居住権だ。ただし使用は居住部分に限られ、1階部分を店にしていた場合などでは、住居にしていた2階部分だけしか権利は及ばない。遺言などで定めておく必要はない。

 長期の居住権は、住んでいた家を終身で使用できる権利で、所有権とは関係なく作り出されたもの。そのため子どもに家を相続させ、配偶者には居住権と別にできる。この権利は財産的価値を相続したものと扱われるが、評価額は低く抑えられるのが普通。遺産分割においての金額換算は、相続人の間での話し合いで決めればよい。

 また短期と違って、居住部分以外の店舗や賃貸にしていた部分も、引き続き利用できるうえに、所有者の承諾があれば、新たに居住部分を収益に利用することも可能だ。さらに居住権は登記して主張もできるため、例え相続した子どもが家を売ったとしても権利は消えない。

 ということは反対に子どもの立場からすると「売れない不動産」となりかねない。しかも子どもは相続すれば固定資産税を納めることになるわけで、住んでもいない、売ることも、貸すこともできないにも関わらず、税金だけは負担となると、言い争い≠ネどが生じることも考えられる。配偶者が「居住権を放棄する」ことはできるが、それでは「新たに住む家」が必要となる。これは老人ホームに入居する場合などには有効だが、これまでの暮らしぶりを続けたい人が多い現実からすると、得策とは言えない。

 「今回の改正の大きな特徴だが、配偶者の権利を拡大した分だけ、子どもの権利が縮小しており、やはり家族全員で十分に話し合い、改正で新たに生じることになったプラスマイナス両面について専門家からアドバイスを受けるなどが、紛争回避の近道になるだろう」(樫木秀俊・のぞみ相続税専門相談センター副代表・税理士)


A 遺産分割

居住する家は分割の対象外に

 亡き夫から遺贈や生前贈与された「特別受益(家など)」は、遺産分割ではいったん遺産に「持ち戻し」、つまり分割の対象に含めるのが、これまでの原則だった。これを今回は「居住不動産」は「対象から除外」と改正された。これも配偶者の権利を大きく拡大した改正点だ。

 これまではもとの家に「住み続ける」ためには、家以外の例えば現金などの遺産の取り分が少なくなった。しかし家は計算外になるので、家プラス現金の2分の1を相続も可能なわけで、配偶者の実質取り分が極めて多くなった。

 「遺された配偶者の暮らしを守るためには大きなプラスとなる。ただし贈与が計算外と認められるのは、婚姻期間が20年以上の夫婦間と設定されている。これは一時、社会問題となった後妻業≠フような配偶者をシャットアウトするためだ。それでも子どもたちに不満が残るケースもあるのでは」(樫木副代表・税理士)。

 また遺産となった預貯金の取り扱いについても、今回見直された。これまで複数が相続した預貯金は、遺産分割前には相続人全員の同意がないと、引き出せなかった。しかし考えてみれば、すぐに分かることだが、葬儀費用や医療費、借金の返済など、緊急に必要なことが少なくない。配偶者も日々の暮らしがあり、立て替えにも限度があり、支払い困難なケースに直面なんて事態が生じかねなかった。

 改正法では、遺産分割前に預貯金を引き出す方法が2つ、設けられた。ひとつは銀行の窓口で相続人が求める方法。法定相続分の3分の1までか、複数口座がある場合の「法務省令で定める額」までは、引き出せるようになった。時間がかからないため、緊急性が高い費用に適している方法だろう。

 もうひとつは家庭裁判所に仮払いを申し立てる方法で、こちらは金額に上限がなく、必要と裁判所が認めれば、預貯金全額を引き出すこともできる。しかし手続きや時間を要するため、分割協議がこじれて長期化した場合での、配偶者の生活費などに適しているだろう。

 なお相続人から預貯金の持ち分を譲り受けた債権者らが、金融機関から直接、引き出すことはできないと、法律的には解釈されている。

 さらに改正では、これまで分割前に処分された遺産は「分割の対象にならない」となっていたものが、公平を期すために、処分した者以外の相続人全員の同意があれば、なお「遺産」として「存在するもの」とみなされることになった。


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