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2018/11/24

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

タトゥー(刺青)は医療行為じゃない?

アートメークやピアスは該当するのに


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 今月14日に大阪高裁でタトゥー(刺青)の施術について、医師法違反に問われていた大阪在住のタトゥーアーティスト(彫り師)に対し「医療行為には当たらない」として逆転無罪判決があった。針を用いて他人の肌を刺す行為は、病院での注射はもちろん、眉を濃くするアートメークや耳たぶに穴を開けるピアスなどすべて医師かその指示を受けた看護師でないと業務として行えず、医師法に触れる。針灸治療は別の国家資格が必要で、いずれも厳密に指導監督されてきた。では「なぜタトゥーだけがOK?」なのかを考えてみよう。

摘発は厚労省通達が根拠

 誤解しないでほしいが、アートメークやピアスはもちろん、タトゥーも一般の人が入れていて法に触れることはない。自分で施術するのもOK。法に触れるのは、業務として他人に施術した場合のみ。

 根拠は2001年に厚労省が出した行政通達で、アートメークやレーザーによる脱毛によるトラブル原因の健康被害防止が目的だった。警察・検察はこれを拡大解釈し、タトゥーアーティストに対し「刺青自体が反社会的」との判断から同様の摘発に着手。これまでは大半が罰金刑だったので、摘発された側が金を払って事を納めてしまうのが大半だった。今回逆転無罪となったタトゥーアーティストが「異議あり」と公判請求し1審は有罪、そして今回の2審は無罪と司法判断が分かれた。どうやら最高裁判例として、3審で確定するまで争いは続きそうだ。

判決に「意義ある社会的風習」

 高裁の判決文を読むと、「タトゥーは装飾的、美術的な意義がある社会的な風習」と、はっきり医療目的と区別。「(タトゥー)施術に求められるのは美的センスやデザインの素養などで、医療従事者の担う業務とは根本的に異なっている」と、その芸術性や文化性を認めている。

 日本では、スーパー銭湯などの施設には必ずといってよいほど「入れ墨のある方の入場お断り」の張り紙がある。行政が所管する「公衆浴場法」という法律下にある一般銭湯は大半が「全国浴場組合」に所属、タトゥーを理由に入場を断ることはできない。張り紙のある施設は「温浴振興協会」という別の団体が多く、行政の指導を受けなくてよいからタトゥーの人を断る自由もあるわけだ。

行政指導で適正化せよ

 刺青は日本ヤクザの象徴なのだろうか? 「ニューヨークタトゥーコンベンション2000」で優勝した国際的な名人彫り師の彫長さん(2011年78歳で死去)は、前職は高校英語教師で、資料収集や自著書を通じ業界の地位向上に尽くした人。彼はタトゥーに対しての世間的な偏見や誤解を論理的に次々と打破、「入れる人の肉体を駆使したアートであり、是非は本人が決めること。ただし見たくない人も多く、許されたところ以外で見せてはならない」と客に対し完成後のマナーも厳しく指導していた。また反社会的勢力の人に対しては、施術をキッパリ断っていた。

 欧米では登録制や公官庁指導制の国が多い。日本伝統刺青・和彫は、国際的にも高い評価を受けている。 先駆者の努力を無にすることなく、横の連携が薄い彫り師同士が、今回の判決を受けてより広く社会的に認知されるためにも早く業界団体を組織し、自主規制や衛生管理の統一基準作りがまず必要だ。

外国では自己表現の一つ

 外国の場合はどうか? タトゥー発祥の地とされる仏領ポリネシア・タヒチを舞台した米国映画「バウンティ/愛と反乱の航海」(1984年)は、厳格な英国戦艦の艦長にアンソニー・ホプキンス、反乱を組織する副艦長にメル・ギブソン、部下の水兵にリーアム・ニーソンという大作。寄港地タヒチの人々に同化する副艦長の体に次第に先住民族によるタトゥーが増えていき、艦長が不機嫌になる場面が印象的だ。つまりタトゥーは先住民には勇者を表す友情のシンボルだが、文明世界に住む者から見れば野蛮な行為と映る。今の日本と対して変わりはない。

 同じく米国映画で昨春公開のディズニーアニメ「モアナと伝説の海」はもっと記憶に新しい。主人公の女性と共に、大海原を旅するポリネシアの神マウイには上半身いっぱいにタトゥーがあり、見ていてギョッとしたお母さんも多かったはず。欧米でのタトゥーは今や自己表現の一つであり、けっして悪のシンボルではなくなっていることが分かる。 来年のラグビーワールド杯、再来年の東京五輪開催を前に、タトゥーが多く見受けられる外国のスポーツ選手には、日本の社会事情に考慮し公共の場では見えないようにする通達が競技団体から出されはじめた。

覚悟いる究極アート

 現代日本で安易にタトゥーを入れることには賛成できない。美容整形技術が発達しても消去には多額の費用が掛かり、それでも傷跡は消えない。スーパー銭湯やプールなどに入れないことも多い。将来を共にするパートナーに強く嫌がられ悩む人も数多い。よほど強い意志で覚悟してからでないと一生付き合う事はできない究極のアート≠ニいえそうだ。


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