週刊大阪日日新聞

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2018/11/10

ホンダへの賠償請求認めず 大阪地裁が除斥適用

東住吉冤罪事件の火災


▲公判後の会見で苦渋の表情を浮かべる青木さん(中央)と弁護団=10月26日、大阪市北区の司法記者クラブ

 23年前、大阪市で少女が死亡した火災をめぐる冤罪(えんざい)として知られる「東住吉事件」で、無実の罪に問われた母親の青木恵子さん(54)が、火災は車のガソリン漏れが原因だとしてメーカーのホンダに約5200万円の損害賠償を求めていた裁判で、大阪地裁(倉地真寿美裁判長)は10月26日、20年が過ぎると請求権がなくなる「除斥」という規定を適用し、訴えを退ける判決を言い渡した。

弁護団は控訴の方針

 青木さんの弁護団は「刑事裁判での誤った判決により、20年以上請求ができなかったのに、除斥を適用するのは著しく正義に反する」として、ただちに控訴する考えを明らかにした。

 裁判でホンダは、火事から20年が過ぎているから「除斥」という規定で請求はできないと主張。一方、青木さんの弁護団は「有罪が確定して刑務所で服役するなど、請求の権利が行使できない状態に置かれていた」として、除斥を適用しないよう求めていた。

 判決で大阪地裁の倉地裁判長は、青木さんが娘の相続人として権利を行使することを妨げられていたと認めた。

 その上で、除斥の規定を適用しないのは、加害者(ホンダ)が被害者(青木さん)の権利行使を意図的に妨げたなどの事情が認められる場合に限られ、青木さんのケースではそこまでの事情は認められないとして、除斥を適用し、青木さんの訴えを退けた。

 倉地裁判長は判決を言い渡した後、原告側を向いて「終局判決になりましたので、ご検討ください」と述べた。

 これについて青木さんの弁護団は会見で、「あのようなことをわざわざ言うのは珍しい。検討するまでもなく、控訴する」と述べた。

 1995年7月、大阪市東住吉区の住宅から火が出て、小学6年生だった青木めぐみさん(当時11歳)が亡くなった。めぐみさんの母親の青木恵子さんは、内縁の夫と共謀して保険金目的で自宅に放火し娘を殺害したとして警察に逮捕され、殺人罪などで無期懲役の判決が確定。

 青木さんは一貫して無実を訴え続け、弁護団の実験で自白通りの方法では放火はできないことが立証され、再審(やり直しの裁判)で2016年8月、無罪を勝ち取った。

「また裁判所に裏切られた」
 門前払いに憤り 東住吉冤罪事件の青木さん

 「また裁判所に裏切られました」─。

 大阪地裁の判決の後、青木さんはこう声を絞った。

 23年前、自宅に放火し娘を殺害したとぬれ衣を着せられ、逮捕・起訴された。「裁判所はわかってくれる」と信じたのもむなしく、一審の大阪地裁、二審の大阪高裁、そして最高裁もすべて有罪と認定し無期懲役が確定した。

 刑務所に服役してもなお無実を訴え続け、ようやく2年前、再審で無罪となり、「娘殺しの母親」の汚名をそそぐことができた。これでやっと娘の死を招いたホンダの車の責任を問うことができる。

 そう思って提訴してから1年9カ月。裁判所が出した結論は「除斥で請求権はない」。自分に最初に有罪判決を出した、あの大阪地裁が…青木さんにとって再びの裏切りだ。

 「裁判長は非公開の弁論準備では、除斥について『中間判決で結論を示す』と言っていました。当然、除斥は認めないものと思っていたのに、何が起きたんだろうという思いです」

 この日は3年前、再審開始が決まった青木さんが刑務所から釈放された日。大切な記念日に、門前払いの判決を出された。「こういう裁判官は許せません」。青木さんは静かに語った。

 一方、弁護団はさらに手厳しい。青木さんが逮捕された直後から弁護にあたってきた塩野隆史弁護士は「(刑事裁判での)裁判所の誤った判決で、権利の行使ができなかった。にもかかわらず権利を認めない、こんな判決は理解できない。著しく正義に反する判決だ。ただちに控訴したい」ときっぱりと言い切った。

 弁護団の一人、甲斐みなみ弁護士も「(有罪判決により)法律上、請求の権利がなかった。その原因を裁判所が作っている。でも権利を認めない。そこが許せない」と憤りをあらわにした。

 最後に青木さんは語った。「ホンダは車からガソリンが漏れて火災を起こしたことを謝るべきです。リコールをすべきです。(類似のガソリン漏れについて)他社はしているのに。車を作っている会社として、どうかと思います」


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