週刊大阪日日新聞

大阪市(北・都島・城東・旭・鶴見区)・守口市・門真市
(社)日本ABC協会加盟紙 251,012部

2018/10/27

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

労働市場に横たわる時代錯誤のブラックバイト

ご当地アイドルの自殺が投げかける問題

 愛媛県のご当地アイドル大本萌景(ほのか)さん(当時16)の自殺で、遺族は過重な労働環境やパワハラなどが原因として所属事務所を提訴した。社会経験の未熟な若者に対して、時代錯誤のむちゃくちゃな労使契約を結ぶ例は、今でも珍しくない。現状を考えてみよう。

危ない契約書、明らかに

 遺族の説明によると、萌景さんは2年前の中学2年の時、無給の研修生としてグループに加入。愛くるしい顔立ちで人気も出て正式にメンバー入りし月給は3万5千円に。昨春の高校入学時には勉強との両立を考えて、通信制県立高を進学先に選んだ。

 通信制高は昼間に働いている生徒が多く、その分文化祭や体育祭などは勤め先が休みの土日祝日に行われる。一方で、アイドルとしての活動も週末に行われることが多く、萌景さんは悩んだ末に全日制高校に入学し直すことを決めた。その過程で事務所との金銭トラブルに進展。度重なる暴言による叱責と多額違約金をチラつかされたという。

 萌景さんは精神的に追い詰められていたが、グループとの契約書に業務内容の秘密厳守≠ェ唱われていたため、家族とも相談できず独りで死を選んだとされている。

アイドルもつらいよ

 モーニング娘。やAKB48などのトップアイドルグループの女性タレントはほんの一握りで、そこを目指して二軍や新人の予備軍が下部組織に大勢在籍していることはよく知られている。東京や大阪などで名のある芸能事務所に所属していても月収10万円なんてざらにあり、実家から通ったり、アルバイトや仕送りをあてにしたりしなければ到底暮らしてはいけない。

 真偽のほどははっきりしないが、愛媛の場合「遅刻や欠席に対する罰金や仕事内容を家族も含めた外部に漏らすと違約金が発生」という契約書の存在を遺族が主張している。もし事実なら、3万5千円の固定給がアッという間に吹っ飛ぶことになりかねず、実態は無給以下の奴隷的な契約だったことになる。

ハイ、これブラックです!

 地方アイドルに限らず、高校生や大学生、専門学校生など主に未成年者に対する都市型ブラックバイトの問題は常に労働市場に横たわっている。

 アルバイトの3ブラックとして悪名高い業種は、@居酒屋やファミレス、ファストフードなどの飲食店Aコンビニやスーパーなどの小売業B学習塾─だ。いずれも「アルバイトは戦力として必要欠くべからざる存在」とされる業種ばかりだ。

 労基法に触れるのに意外に多い違反は、@手袋やエプロンなど仕事で必需品なのに自腹A誰かが休むと勝手に、または半強制的にシフトを増やされるB皿やコップなどの備品を壊すと罰金C開店準備や後片付けなどの残業代や時間外賃金が支給されない─など。これらはすべてアウトだ。

広がるブラック二重構造

 さらに悪質なのはバイトにバイトを管理させる≠ニいう手口。チーフなどの名称で時給を50円、100円単位で上げ、後輩バイトを先輩が指導するよう義務付ける。チーフになった先輩バイトは「会社に信頼されている」と忠誠心を抱き、後輩をLINEグループに入れるなどして管理。真面目なバイトほど辞められなくなり、やがて学生の本分である授業出席や研究活動を犠牲にしても、店のために頑張っていれば「就職活動にもきっと立つ」と勘違いしてしまうから怖い。

 会社は同業他社との競争の中で、いつの間にか補助労働者のはずのバイトを基幹労働者化させていることに気付いていない。バイトはいつになっても正社員にはなれず、企業が株主 へ利潤を出すための安い労働力≠ニして使い捨てにされることも多々ある。

 こう考えると、今回のご当地アイドルと、ブラック化する学生アルバイトの実態は驚くほど似ている。

日本企業の弱点

 日本と欧米の働き方を比較しよう。日本は企業に入社し総務や営業、企画、販売などさまざまな業種を経験させる。終身雇用や年功序列をバックに管理職を目指させる分だけ企業への忠誠心は厚くなるが、一方で専門性が低く個々の社員の生産性は低い。典型的なのは、その会社以外では使い物にならない中間管理職が日本には数多く存在することだ。

 その点、欧米は「職場はスキルを上げるところ」と割り切っており、日本のような滅私奉公とは無縁。終身雇用や年功序列ではなく、「必要な時に必要な人材を相応な対価で確保する」という文化だ。

今どきの若者意識

 中高年のリストラが続いており、親が仕送りできるような状態ではないから、大学生の2人に1人は奨学金をもらっているといわれる。このためアルバイトをする必要があるが、社会の暗黙のルールに忖度(そんたく)せず、「この取り決めっておかしくない?」と働く側の権利について調査する事からまず始めよう。

 そして学生の時代から、自身の専門性と得意分野をしっかりと定め、ライフスタイルをシミュレーションする。間違っても「会社のために何でもやります」などとは答えないことだ。少子高齢化の日本では、若者は常に売り手市場。構造改革の続くメガバンクなどで中高年リストラはさらに続くが、ブラック3業種などのアルバイトはやがて外国人労働者やAIなどに取って代わられる運命だ。

 ご当地アイドルもブラックバイトも、若者を粗末に扱う国に未来はない。若者が生き生きと働ける場をいまだに確保できない日本に、違う意味で沈没≠フ危機が迫っている。


週刊大阪日日新聞
最新号
毎月第2・第4土曜発刊
毎月第4土曜発刊
「大阪日日新聞」
電子版
電子版の詳細はこちら
アップルストア グーグルプレイ
日日チャンネル【Gotoキャンペーン編】/「宿泊」「ステーキ食べ放題」「お酒飲み放題」で、なんと! 2,500円 だった
pagetop