週刊大阪日日新聞

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2018/9/15

教員評価に「学テ」を反映 大阪市検討

全国学力テストで2年連続最下位

 大阪市の吉村洋文市長は8月2日、全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の成績が政令市で最下位だった結果を受け、2019年度から市立学校の成績に数値目標を設け、結果を校長などの人事評価に反映する制度を検討すると明らかにした。教員の意識改革を促し成績を底上げするためだが、教員や退職者らでつくる市民グループはこれに猛反発している。

教員、市民グループら猛反発

 学力テストは小学6年と中学3年の児童生徒を対象に、国語と算数・数学は毎年、理科は3年に1度実施する。07年に開始以降、市は全校を対象にした学力テストで全国平均を全科目で下回る状況が続く。政令市20市の結果公表が始まった17年度からは2年連続で最下位だった。

 市によると、市立の小中学校全体の平均正答率について目標値を設定。各校の達成状況に応じて校長や教員のボーナスに当たる「勤勉手当」を増減させたり、校長の裁量で使える予算を変動させたりする。

 これに対し、市民グループは「府内外の学校関係者など84団体から抗議声明に賛同を得ている。暴挙としか言えない。市長は明確に反対してほしい」と抗議声明を手渡し、自民党市議団も市長や教育長に会い、再考を求めた。

今後、具体策を議論

 吉村市長は「学校全体のテストの結果を個々の教員の手当に反映することには法的な課題もある」とし、今後、市長と市教委で構成する総合教育会議に提案し、具体策などを議論するが市は「政令市20の中15位を目指す」という。

 学力と家庭の経済力との相関関係は以前から指摘され、学テに関する文科省の委託研究(昨年度)でも家庭の経済力が高い児童・生徒が平均正答率が高いことが明らかなっている。大阪市でも意識しており、▽中学生の塾代助成(月1万円)▽学テの成績下位校に退職校長を派遣し個別指導▽専任チームが定期的に授業力向上を指導▽生活面でも約120校に支援員を配置―など実施している。

禁 じ 手

 元小学校長は「長年教育に携わってきた経験から人事評価発言はやってはいけない禁じ手。過去にも同じようなことが行われ、多くの弊害が生れた」と警鐘を鳴らす。

 実際、1961年から行われた全国一斉学力テストで、テストの結果が全国の公立小中学校の教員の勤務評定に結びつけられたことから、「徹底的にテスト練習が行われ、本来の授業が猛スピードで授業についてこれない児童、生徒が続出した」―という。


元大阪市教育委員長(ジャーナリスト)

大阪の教育課題 根本からの問題摘出を


元大阪市教育委員長
池田知隆さん

 大阪市の学力テストの成績は2年連続で政令都市の中で最下位に、市長なりの危機意識をもつことはよく理解できます。教員の待遇改善で教育成果の向上が期待できることも確かにあります。しかし、学力テストの目標達成次第というやり方は、マイナス効果が大きく、教育破壊につながりかねません。

 学力のみを測定し、それに基づいて人事評価を実施すると、教員は学力ばかりを重視するようになり、児童・生徒のコミュニケーション能力や学力以外の能力など他の目標が実現されなくなります。

 さらに加えて貧困や経済格差が深刻な課題となっている大阪という地域社会の問題もあります。

 吉村市長は、大阪市の学力テストの成績が最下位である原因を、どのように考えているのだろうか。教師の努力が足らないという従来の教師バッシングの後追いなのだろうか。大阪市の子供の何が問題なのか、創造性が足りないのか、どんな背景があるのか、もっと語ってほしい。まずやるべきことは、教員にプレッシャーをかけることではなく、教育改善に向けた地域社会の在り方について取り組むことではないか。


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