週刊大阪日日新聞

大阪市(北・都島・城東・旭・鶴見区)・守口市・門真市
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2018/9/1

大阪の豪雨対策 「防災の日」特集

巨大台風襲来で大水害 国交省近畿地方整備局

 西日本豪雨は、死者数が200人を超える甚大な災害となったが、3月に国土交通省近畿地方整備局は大阪市が巨大台風などに襲われると「広範囲で被害が起きた際の想定で、高潮による浸水では、3日後でも8万人以上が取り残される」と想定し、対策指針をまとめている。大阪府市やライフライン事業者は今後、指針に沿って災害手順作成などの対応策を急ぐが、大阪市民も自助・共助を含めた日頃からの備えが必要だ。

浸水3日後でも8万人孤立

高潮で市内沿岸部 17区が浸水

 同整備局は伊勢湾台風(1959年)などを基にシミュレーションした大阪湾の高潮や、JR大阪駅に近い淀川左岸堤防の決壊による洪水のそれぞれの対策と被害想定を示した。

 それによると、高潮では市内24区のうち西側の17区にまたがる84・5平方キロmが浸水するとされ、浸水1日後では域内人口104万人にうち、19万3000人、浸水3日後でも8万2000人が孤立したままになると想定。4日後には救助を終える想定となっているが、少なくとも3日分の食料や水の確保が必要となる。

 また、JR大阪駅に近い淀川左岸が決壊したとのシミュレーションでは梅田地区など7・2平方キロmが浸水し、住民12万人うち11時間後には6万4000人が孤立したままで、孤立は2日半で解消すると想定している。

雨水対策整備率8割

大阪市の地盤高図

 大阪市の下水道は、家庭や学校などで使われた汚水を速やかに排水するための施設整備は、ほぼ100%完了。しかし、雨水をすばやく排水するための施設整備は、おおむね10年に1回の大雨(1時間あたり60ミリ)でも浸水しないことを目標に進めている。このような下水道整備ができた区域の比率「雨水対策整備率」は2016年度末で約79・7%と全国平均を上回るものの、集中豪雨時には、今なお浸水が発生している。

 このため、抜本的な浸水対策として東淀川区から淀川区、西淀川区を結ぶ総延長22・5キロmの大下水道幹線「淀の大放水路」や、主要な下水道幹線の建設や、「此花下水処理場内ポンプ場」などポンプ施設の新増設を進めている。また、大規模な雨水排水施設の整備には長い年月を要することから、局地排水用マンホールポンプの設置など局地的な浸水対策も進めている。

自助・共助の取り組み

▲大阪北部地震で設置された大阪府災害医療本部

 「公助に加えて、防災に対する市民の日頃からの意識、一人一人が身の回りでできることから取り組む自助・共助が大切」。こう指摘するのは大阪府医師会救急災害医療担当理事の鍬方安行さん(関西医科大教授)。鍬方さんはさらに、「各自治体が作成している避難時の心得を示した防災マップを活用していただきたい。自分の住んでいる場所がどのようなリスクがあるのかを把握し、いざという時にとるべき行動をあらかじめ考えておいてください」と日頃からの備えの重要さを指摘している。

「早め」「明るいうち」「念のため」

▲大阪市の備蓄物資

 大阪市では局地的な集中豪雨や台風による都市型の浸水被害を最小限にくい止めるため、港区弁天町オーク1番街のベイタワー屋上に降雨レーダーを設置し、市民に向けて降雨状況を知らせる「降雨情報提供サービス」を実施している。

 防災専門家は避難については「『早め』『明るいうち』『念のため』がキーワード」として早めの避難の重要性を呼び掛けている。

 また、大阪市では、浸水に対する被害軽減策の一つとして、降った雨水をその場で貯留し、雨水の流出を抑制する雨水貯留タンクの普及促進を図るため、購入費用の一部を助成するための雨水貯留タンク普及促進助成制度を設けている。


※1 河川敷遊歩道、中之島西公園以外は○ 
※2 河川敷遊歩道以外は○
※地震について、河川敷公園(16,17,18,19)は津波来襲時の危険性が極めて高いため、津波の有無に関わらず地震時は「×」
※津波について、南海トラフ巨大地震による津波浸水想定域外の場合は「○」、津波浸水想定域内の場合は「×」 
※洪水について、広域避難場所は洪水時の避難先として想定しないため「-」(ただし、洪水(河川氾濫)の浸水想定区域内の場合は「×」) 
※指定当初から開発が進んでいるため、避難場所の指定取消を含め検討中です。「1 新大阪駅北側」「25 阿倍野再開発地区」避難できる具体的な場所については事前にご確認ください

災害に備えて食料などを備蓄 大阪市

 大阪市は、市内約550カ所の災害時避難所や区役所、8カ所の備蓄倉庫(阿倍野区、生野区、西区、旭区、西淀川区、中央区、鶴見区、東淀川区)で備蓄を行っている。備蓄している物資の主な品目は、飲料水、アルファ化米や粥、粉ミルクなどの飲食料の他、毛布、おむつ、生理用品などの日常生活物資。

 物資量は、市域最大の被害想定に基づいて備蓄を行っており、現時点ではこれまで最大の被害想定とされてきた上町断層帯地震に備えた物資を備蓄してきたが、被害想定を見直し、16年4月から南海トラフ巨大地震の被害想定に基づいた備蓄体制の構築を進めている。この見直しにより従来の約34万人分(1日分)から約53万人(3日分)への備蓄と物資量を府市共同で拡充している。

 大阪市の主な備蓄物資(17年3月末現在)は食料(アルファ化米・ビスケット)121万食▽高齢者食(お粥・マッシュポテト) 9・2万食▽飲料水(500ミリリットルペットボトル) 292万本▽毛布34・8万枚▽日用品セット(13・6万セット)▽防水シート (11・1万枚)。

 大阪市では、災害発生時における避難生活の環境改善や物資不足等の観点から、最大の被害想定が違う近隣都市と物資を融通し合う相互応援協定のほか、大規模災害が発生した場合に、大阪市の要請に基づいて民間事業者が製造・販売する物資を避難所に届けてもらうなどを取り決めた協 定の締結を推進している。

被災地広島へ緊急消防援助隊派遣

 大阪市消防局は、西日本豪雨により災害を受けた広島県へ総務省消防庁長官の指示を受け、7月6日から同31日まで緊急消防援助隊(155隊509人)を派遣。


▲西日本豪雨で被害を受けた広島県で被災民の援助にあたる大阪市消防局の緊急消防援助隊員(大阪市提供)

大阪府内消防本部(204隊832人)でも派遣し、大阪府大隊(合計359隊1341人)によって生存者2人、死者12人、救急搬送7件(うちヘリコプターによる救急搬送1件)の救出を行った。

家庭での備蓄

 大規模災害が発生した時には、交通網やライフラインが寸断され、食料や飲料などの供給の減少が予想される。このほか、インスタント食品など保存性の高い食料品を中心に需要が一時的に集中し、一部の食料品が品薄状態や売り切れ状態になる恐れがある。こうした事態に備えるため、食の視点から防災を研究している「まなぼうさいラボ」(坂本佳奈所長)は「日頃から家庭でも家族の1週間程度の食料と飲料水(水の備蓄は1日3リットル)を確保し、『防災用』と特別視せず、普段から食べていて長期保存できる『自分食』を多めに買いおいておくとよい」と家庭での備蓄確保を呼び掛けている。

 食べ物の種類が多いため、何を備蓄すればよいかわからないという人は多い。災害時は食事を取り巻く環境や被災者の欲求が変化する。阪神・淡路大震災、東日本大震災の体験や調査から判断すると、日常に戻るまでに約3カ月間が必要だ。

 大きく3つの時期▽「災害が起こった直後」▽「やや落ち着きを取り戻した時期」▽「日常へ向かう回復時期」に分けてローリングストック(普段食べているものを多めに買い置きし、期限が切れる前に食べ、不足分を新たに補充する)方式でそれぞれ適切な食品を備えることが必要といえる。


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