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2017/7/14

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

西野監督に見るビジネス論 W杯 日本代表の活躍の裏に─

金本阪神との違い

 初夏の日本列島を寝不足にさせたサッカーワールドカップ2018ロシア大会(W杯)もいよいよ、残るは欧州勢4チームによる3位決定戦と決勝だけになった。日本代表は、「手のひら返し、サポーター総ざんげ」や「西野マジック」と言われ、良い意味での予想外の大豹変で皆を驚かせた。技術的な評価は専門家に任せ、ビジネス学的に西野ジャパン躍進の秘密を探ってみよう。

火中のクリ拾い

 サラリーマンが一番嫌がるのは 火中のクリ拾い=Bつまり、トラブっている組織に飛び込み、責任を負わされることだ。今回の西野朗監督のパターンはまさにコレ。W杯の開幕前に突然、ハリルホジッチ監督の後任を託された。

 2人の違いは何だろう。ハリル監督と言えば、プライドが高く自分が立てた作戦や選手起用をとことん押し付ける。一方の西野監督と言えば、まったく正反対。ハリル監督が嫌ったベテランの本田、香川、長友を正式代表に加えた。

 大会前のテストマッチは戦術も選手起用もバラバラで負け続けたけれど、「開幕まで10日あればOK」と涼しい顔をしていた。

 チームの平均年齢は28・3歳で、半数が2〜3大会連続のW杯出場組。マスコミは「おっさんジャパン」「忖度そんたくジャパン」とひやかし、辛口解説のセルジオ越後さんに至っては「1次リーグ突破の可能性は1%」と評するほどだった。

手のひら返しのサポーター

 ところが結果は1次リーグを見事2位通過し、決勝トーナメント初戦では強豪ベルギーをギリギリまで追い詰め、初のベスト8入り寸前にまでたどり着く活躍ぶり。日本代表の出発には見送りのサポーターがわずか150人だったが、帰国時には5倍の800人に出迎えられた。

 この結果に、一時は西野監督の続投説も浮上したけれど、本人はサッと身を引いた。私は予定通りの行動と見る。西野氏はJリーグ史上最多の270勝を挙げる大ベテラン。突然の就任だっただけに「失う物は何もない。むしろ少しでも成果を上げれば高評価につながる」とサラッと割り切っていたはず。代表には、前監督に嫌われた連中を招集し「よぅし、見返してやるぞ」という気持ちにさせた。短い期間だからこそ、自身のプレースタイルに執着せず、選手の柔軟な試合運びに託した。

 さらに、大会中には監督が選手にわびたり、ベルギーに逆転負けしたときには素直にミスを認め、勝てば選手の手柄、負ければ監督の責任≠フ姿勢を最後まで貫いた。誇り高き前監督なら絶対になかった選手との一体感だ。7月末で退任を決めていたからこそのサバサバ感だった。

コーチ人選にも妙

 この後の西野氏にはバラ色の人生が待つ。決勝トーナメント進出で、日本協会にはFIFAから4億円の分配金が余計にもたらされた。当然、西野氏にも相当の報奨金が入る。加えて時の人≠ニなった西野氏にはすでにテレビCMや講演、執筆の依頼が次々と舞い込んでいるそうだ。

 その裏で、あまり知られていないが、西野氏の今大会のコーチ人事には、ベテランらしく、したたかな面も垣間見える。ハリル前監督とともに退任予定だった元リオ五輪監督の手倉森誠コーチとコンディショニング担当の早川直樹コーチを留任。その一方で2020年東京五輪代表チームの森保一監督をコーチに招集したからだ。

 手倉森コーチは代表チーム内の長所短所を最もよく理解しているし、早川コーチは長年代表チームに帯同し、精神面を含めた体調を見極めるプロだ。これに森保コーチを加えたのは、再来年を見据えてベテラン重視体制を敷いた後の若手選手へのフォローに当たらせるため。そう考えると、突然の監督就任でも日本協会に最大限の人的サポートをさせた裏での根回し力が透けてくる。

猛虎と比べると…

 分かりやすく説明するため、プロ野球の阪神タイガースと比べてみよう。昨年は2位、今年こそは優勝と意気込んだ金本知憲監督だが、前半戦を終わって成績はイマイチでパッとしない。西野ジャパンに比べ、阪神のコーチ陣は金本監督の現役時代のお友だちばかりで、指導力に疑問符のつく人が多い。それが証拠に、昨季から制球に悩む藤浪投手を再生させられず、鳴り物入りで来日したロサリオの変化球対応も修正できない。昨年、定位置をつかみかけた高山、大山、北條の若手も全然伸びない。これらはすべて、悪い意味で放任するコーチ陣が、選手に的確な指導や助言を与えられていないのが原因なんだ。

 金本監督は野球殿堂入りするほどの鉄人。「なぜこんなことくらいできないんだ」のいら立ちが顔や態度に出る。監督のまじめさが返ってベンチの選手を萎縮させている。2軍から上がった陽川、中谷、原口も指揮官の顔色にビクついており、結果も長続きしない。

 西野監督と金本監督。実務家役割分担コーチ陣とお友だち阪神コーチ陣。2つを比べれば「伸びる組織と伸び悩む組織」の違いが分かるよね。


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