週刊大阪日日新聞

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2018/5/26

プログラミング教育、なぜ必要? 2020年度から必修化

コンピューターと人間をつなぐ


▲クレーンローバを動かして燃料補給の任務≠ノ臨む子どもたち
=5月5日、大阪市北区の関西大梅田キャンパス

 子どもの習い事で「プログラミング」の人気が高まっている。2020年度からは小学校からの必修化も発表され、世間やメディアの関心が高まり、プログラミング教育を提供する民間企業も急増中だ。何のために学ぶのか、将来どう役立つのかを調べてみた。

 そもそも「プログラミング」とは何か。意味を調べると「コンピューター言語を使ってプログラムを開発すること」とある。もっと分かりやすく言えば、コンピューターにさせたいことを順番に書く、いわゆる台本を作るようなものだ。

 身近なもので言えば、交差点の信号機もプログラムで成り立っている。「青を消す→黄色を点灯→1秒待つ→黄色を消灯→赤を点灯」といった感じだ。ほかにも自動販売機や駅の自動改札などさまざまな機械や装置がプログラムで動いている。

 小学校での必修化と聞くと、「難しいコードを覚えるの?」と心配になるが、ご安心を。なにも算数や理科のような新しい教科ができるわけではない。教科書がなければ、テストで評価されることもない。すでにある教科の中で、プログラミングを取り入れた学習を実施するというものだ。

 つまり、目的はプログラマーの育成ではなく、あくまで体験。コンピューターは魔法の箱≠ナはなく、「自分もコンピューターを使って何か作れるんだ」と気付くことや、特に重要なのは、物事の問題解決の手順とも重なる「プログラミング的思考」を身に付けることにある。

磨かれる思考力

 プログラミング学習は「進む」「曲がる」などの命令が書かれたブロックコードをパズル感覚で並び替えることでソースコードを作成し、キャラクターを思う通り動かしていく。現実にはプログラミングの構造の基礎が体得できても「クリックしたとき音を鳴らす」などとコードは複雑で、少しでも間違っていると、最初にプレイしたのと同じ動きを再現できない。このため、誤っているカ所を探す必要があるが、プログラミング教室の担当者は「このデバック作業が子どもたちの論理的思考に役立つ」ということだ。

 オリジナルゲームをつくるなら「創造力」が自然と鍛えられ、プログラミングを通して子どもたちが積み重ねた思考が、やがては新しい未来をつくるヒントを生み出すという。

進む全自動化


▲ロボットプログラミング教室「プログラボ」でロボットを組み立てる子どもたち=2月18日、大工大梅田キャンパス

 プログラミングができれば将来が明るい。なぜ明るいのかの例を挙げてみよう。まずは人間と自動車の関係を見るとわかりやすい。クルマは現在、人間が運転しているが、各メーカーでは自動運転の開発を急ピッチで進めている。将来的にはクルマの運転はコンピューターが担う時代になるだろう。

 みんながよく利用するコンビニエンスストアも同様だ。今は店員が24時間常駐し、レジを操作して会計をしてくれるが、これも全自動化が進みそうだ。すでに米アマゾンは、シアトルに無人コンビニ「アマゾン・ゴー」をオープン。この店の最大の特徴は「レジがないこと」で、お客は入り口でスマートフォンをかざして入店し、好きな商品を棚から選んだ後、店の外に出れば買い物が終了する。店内に備えたAI機能搭載のカメラやセンサーが、客が何を買ったかを自動で認識する仕組みだ。

 以上、2つの分かりやすい例を挙げたが、自動車やレジに限らず現在人間が直接機械を操作している作業は、コンピューターに移りつつある。あらゆることが全自動化に進んでいるこうした現状を考えても、コンピューターに指示を出すプログラミングのスキルは将来大きなアドバンテージになる。

将来はIT人材が不足

 すでに経産省によると、IT人材の不足は今後ますます深刻化し、2030年には最大で79万人不足すると推計している。コンピューターを使いこなせれば人生を生きていくうえで最強の武器となるし、新たなビジネスにチャレンジする幅も広がる。


アイデア、モノを作り出す
「読み・書き・プログラミング」の時代に

大阪工業大学 ロボテックス&デザイン工学部
システムデザイン工学科教授 小林 裕之さん

 プログラミングを学ぶことでどんな効果があるのか。プログラミング教育に詳しい大阪工大、小林裕之教授にインタビューした。

 ―児童に向けたプログラミング教室が流行しています。

▲「日本語で考えるのと同じように現代は、プログラミングで考える時代です」と話す小林教授

 プログラミングは家庭でもコンピューター、たとえばAI(人工知能)スピーカーなどが生活に組み込まれている。コードが組めれば将来、就職や仕事でもすぐに役立ちます。身の回りのコンピューターは人間とのやり取りの中でプログラミングが組まれています。プログラミングはコンピューターに対する命令のかたまりです。コンピューターは基本的には命令されないと動けない。いろいろな指示をしてあげることで、複雑な動きができるようになり、最終的にアプリ(ソフト)になります。

 プログラミングを勉強することで機械に正しく命令を伝え、上手に付き合える。

 アイデア、モノを作り出す能力は母語で考えます。日本人なら英語ではなく日本語で考えるが、同じようにプログラミングで考えるようになります。モノづくりの中にはソフトウェアが入っています。

 今の世の中の仕組みの大きな部分を情報技術がつくっている。それを知った上で、社会に出てることは、大きなアドバンテージになると思います。

 ―プログラミングを学ぶことで子どもたちにどんな効果があるのですか。

 プログラミングをやっている子どもたちはすごい集中力で取り組んでいます。自分が組んだプログラムで指示通り動くか、うまくいかなければ修正を繰り返し成功体験を積んでいく。

 その過程で「論理的な思考」「考える力」が身に付くし、同時に自分で作り上げたという自信や達成感も得られます。子どものころに適切な「失敗」と「成功」の体験を積んでおくのは、とてもいいことです。

 ―すでにモノづくりの現場ではソフトウェアははずせない。

 一昔前はパソコンは使われていませんでしたが、これからはプログラミングは理系文系に関係なく必要になる。自分で考え、論理的な表現が好きな文系にもプログラミングは適していますし、入り口レベルだと文系の人の方が能力が高いです。

 プログラミングを取り入れると効率も全然違う。「読み・書き・そろばん」という言葉がありますが、それにプログラミングが加わる時代になっています。建築の世界でも空間デザインに必要な能力です。

 プログラミングの複雑な処理は作文と同じで一人一人違う。問題や結果が一緒でも途中のやり方、手順(アリゴリズム)が異なります。能力があればプログラムのソースコードが短くなったり、実行時間が早くなる。ここ50年くらいはコンピューター、ソフトウェアで制御する時代になりました。現在はプログラミング言語も進化してきました。

 これからは人でないとできないと言われていたことが、AIがとって変る時代になると思いますが、プログラムを書ける子ども、学生には自分でつくれる強さ、自信が感じられます。


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