週刊大阪日日新聞

大阪市(北・都島・城東・旭・鶴見区)・守口市・門真市
(社)日本ABC協会加盟紙 251,012部

2018/5/26

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

日大危機管理の危機 

スポーツは「勝てばOK」ではない!


写真はイメージ

 大学アメリカンフットボール界の東西両雄、関学大と日本大の定期戦で起きた悪質な無法タックル≠フ余波が広がっている。日大の守備側DL(最前列で相手攻撃を防ぐ)の選手(20)=3年=が、関学攻撃側のQB(パスを投げる役割)の選手(19)=2年=に対し、既にパスした2秒後の無防備状態なのに後ろから猛然とタックルし、右膝軟骨と腰部靱帯の損傷で重傷を負わせた。テレビやネットの映像でご覧になった方は、「もともとアメフトは危険なスポーツなんでしょ。ルールが複雑でよく分からないし…」と首をひねっている方も多い。よろしい。元スポーツ記者で、アメフトや日大の内部事情にも詳しい私が分かりやすく説明しましょう。

アメフトは頭脳的団体格闘技

 そもそもだが、欧州で誕生発展したサッカーやラグビーに対し、米国生まれのアメフトは、人数がサッカーと同じ11人で戦い、ラグビーと違ってボールを前に投げることができる(ただし1プレーで1回だけ)。野球の3アウト制と似て、4ダウンで攻守交代(ただし10がサッカーと同じ11人で戦い、ラグビーと違ってボールを前に投げることができる(ただし1プレーで1回だけ)。野球の3アウト制と似て、4ダウンで攻守交代(ただし10ヤード前進できれば更新といって、再び1ダウンから攻撃続行)。全米では最も人気のあるスポーツで、高校、大学はもちろんプロもある。日本にプロはないが、年末の大学王座決定戦「甲子園ボウル」(阪神甲子園球場)や年始の大学王者対社会人王者の日本一決定戦「ライスボウル」(東京ドーム)はよく知られている。

 ルールは分かりにくいが、守備側の選手は、ボールを保持している攻撃側選手1人に対してのみタックルできる。主にボールを投げたり渡したりするQBはチームの司令塔。そのため、QBは一斉に襲ってくる守備側選手が来る前にボールを手離して自身へのダメージを防ぐ。仮に守備側が、ボールを持っていないQBにタックルするとラフィングザパサー、同様にボールを持っていない攻撃側選手にタックルするとインターフェアを取られ、場合によっては即退場。それ以外でも大きな罰退(反則を犯したチームに課せられる陣地の後退)をチームが課せられ勝敗に関わる。

 アメフトは他の団体ボール競技と異なり、ボールがない所でも常に攻守双方の全選手が肉弾戦でしのぎあう。計7人と球技最多の審判がフィールド内におり、プロではビデオ判定も常時導入、審判の目を盗んだ悪質な反則をチェックしている。

日大のプレーを徹底検証

 それでは今回の日大選手のプレーで、専門的な立場から問題点を整理しよう。

@タックルは悪質だったか?

 悪質。両校のような大学トップ級チームの守備側選手は常にボール位置を目で確認、攻撃側QBがパスした段階でボールを追って次の動きに移る。例外的にQBがボールを保持しているふりをして(後フェイクという)自分の所に相手を引き付けて時間を稼ぐプレーがあり、その場合はだまされてタックルしても反則は取られない。今回はその可能性ゼロ。

A監督の指示はあったのか?

 「あった」可能性が高い。試合後、当事者の内田正人監督(62)は取材記者に対し、「ウチは力がないから厳しくプレッシャーを掛けている。アレぐらいやっていかないと勝てない。やらせている私の責任」と答えている(後に「誤解を招いた」と撤回)のが本音。極めて組織的頭脳的戦いを要求される団体球技で、監督コーチの命令は絶対。DL選手は一種のマインドコントロールされていた状態と見る。内田監督の辞任表明は当然だし、コーチ15人も同罪だ。

B日大の事後対応は妥当か?

 後手に回った。日本初の危機管理学部があるとは思えない手際の悪さで傷口を広げた。日大の田中英寿理事長(71)は元横綱輪島と同期の日大相撲部出身で自身もアマ横綱3度の名伯楽。相撲部監督、総監督を経て大学職員として経営トップまで上り詰め、JOC(日本五輪委)理事、副会長を務めた人。その右腕が今回の内田監督で経営陣ナンバー2の常務理事(人事担当)。学内でこの2人のつながりに忖度(そんたく)し、何とかトカゲのしっぽ切り≠ナ事を収めようとした人物がいる。しかし、田中理事長は、スポーツ日大≠標榜する母校の名誉と結果責任を問うて内田監督の速やかな退任を決断した。少子化の中、大学の生き残り戦略が論議される時代に、アメフト部の問題にとどまらない日大全体のイメージ低下をトップはこれ以上容認しなかったのだ。

一億総スマホ撮り時代

 それにしても改めて感じるのは、スマホで鮮明な動画が簡単に誰でも撮れてネットでアップして、誰でも視聴できる時代になった現実だ。今回の悪質プレーも審判や関学側選手らは、直後に退場や抗議をしていない。ボールの動きに気を取られて、悪質タックルを見ていなかったのだろう。しかし、映像の存在は言い逃れできない。「やった、やらない」や「見た、見ない」の水掛け論はもう成り立たない。見つからなければ「勝てば何をやっても許される」という邪悪な誘惑に乗る事はスポーツ世界でもはや通用しない。

 野球もスライディングやブロックなどのクロスプレー、相撲のヒジ打ち、ラグビーのハイタックル、柔道のかにばさみ危険プレーは映像にバッチリ残り即アウトになる。以前なら、「審判に見つからないように反則スレスレのプレーをするのも技術の内」というゆがんだ概念が選手や指導者の底流にあった。相互監視の中では、「みんな一生懸命やった結果」などとの誤った精神論でよこしまなプレーをごまかせないので、師弟とも真のスポーツマンシップを学ぶことが先決だ。


週刊大阪日日新聞
最新号
毎月第2・第4土曜発刊
毎月第4土曜発刊
「大阪日日新聞」
電子版
電子版の詳細はこちら
アップルストア グーグルプレイ
日日チャンネル【Gotoキャンペーン編】/「宿泊」「ステーキ食べ放題」「お酒飲み放題」で、なんと! 2,500円 だった
pagetop