週刊大阪日日新聞

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2018/5/12

ニュータウン再生の鍵 ニコイチに期待 

子育て世代呼び込む


▲公営住宅2戸を1戸にする「ニコイチ」が人気を集める茶山台団地=堺市南区

 大阪府堺市と和泉市東部に広がる西日本最大規模のニュータウン「泉北ニュータウン」の茶山台団地(堺市南区)で、大阪府住宅供給公社が始めた隣同士の2戸を1戸にリノベーションする「ニコイチ」事業が4年目を迎える。広い間取りやデザイン性の高い設計が受け、子育て世代の呼び込みに成功。2018年度は同団地を含めて府内で新たに20戸のニコイチを計画し、取り組みを加速させる。

多彩なデザイン


▲部屋の中に自転車用のガレージがあるタイプのニコイチ=堺市南区の茶山台団地

 茶山台団地は1971年4月に入居が始まり、2017年9月末の時点の総戸数は29棟941戸。空き家率は17・2%(17年3月末現在)だが、名義人の年齢は60歳以上が52・4%と高齢化の波が押し寄せており、今後も空き家が増えていくと予測されている。

 同公社は14年度、若い世代向けに団地内の5戸をDIY(日曜大工)でリノベーションし、注目を集めた。ところが、実際に入居者を募ると、1戸当たりの面積45平方mが「子育て世帯には入りづらい」と敬遠され、思ったほどの応募がなかったという。

 この経験から考案されたのが、隣り合わせの2戸の間の壁を抜き面積90平方mの1戸に改装するニコイチだ。15年度は3戸、16年度は6戸、17年度は香里三井C団地(寝屋川市三井が丘)の5戸も加え計10戸のニコイチを提供した。

 リノベーションのデザインは事業者から公募。その結果、元の1戸分をほぼリビングダイニングに活用したタイプ、部屋の中にガレージがあるタイプなど多彩なニコイチが誕生した。壁を抜かず、バルコニーを廊下にし、部屋と部屋の間を行き来するタイプもある。


▲応募倍率が11倍と最高だったタイプのニコイチ。元の一戸分がほぼリビングダイニングキッチンとなっている=大阪府住宅供給公社提供

 平均募集倍率は年度ごとに4・7〜7・0倍と高く、現在も空き家は1戸のみ。家賃は7万2千〜8万5千円。同公社経営企画課の大井理恵技師は「使う素材が建築家によって違うので、個性的なデザインが生まれる。若手建築家の登竜門的な存在になれば」と期待を込める。

ニコイチが結ぶ縁

 16年3月からニコイチに入居した白石千帆さん(39)は、夫と長男(8)、次男(5)の5人家族。夫の転勤に伴い、東京から茶山台団地に移った。

 部屋の形態は「3LDKプラス土間」。家賃は月額7万2千円。若年子育て世帯に対する堺市の家賃補助が2万円あり、実質5万2千円で入居している。

 白石さんは「子どもの成長に伴い、部屋が手狭になって広い家に転居する子育て世帯は多い。ニコイチは家賃も魅力だが、部屋が広いので退去する人が減ると思う」と話す。

 白石さんはNPO法人に所属し、数年前まで使われていなかった団地内の集会所で「茶山台としょかん」を運営している。児童らが多い日で30人集まり、宿題や遊びの時間を共に過ごしている。他のニコイチに住む女性も手伝っている。

 同公社経営企画課の小原旭登主事は「ニコイチで若い世代に団地に住んでもらい、自治会とは別の住民同士のコミュニティーが生まれた」と副次的効果を語る。同じように団地住人の減少や高齢化に悩む自治体からの視察も相次いでいる。


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