週刊大阪日日新聞

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2018/5/12

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

「アル中」は病気 依存症は推定100万人

 TOKIOのメンバー、山口達也さん(46)が、酔って知り合いの女子高生を自宅に呼び寄せ、キスしようとして強制わいせつ容疑で書類送検(告訴取り下げがあり、検察庁の判断で起訴猶予に)され、ジャニーズ事務所を5月6日付けで契約解除となったのは衝撃的だったね。私が気になるのは、世間が「彼は以前からアル中で、意思の弱いヤツだったから間違いを引き起こした」というイメージがジワジワ広まっていること。私は誰にでも起こりうるアルコール依存症とみているよ。今回は山口さんのケースを含め、この依存症について解説しよう。

深酒は病気ではない?

 まず根本的な勘違いをひとつ。俗に「アル中」またはアルコール中毒と呼ばれる症状は、正確にはアルコール依存症のこと。病理学的な急性アルコール中毒は、一気飲みなどで急激にお酒を飲みすぎて血液中のアルコール濃度が危険域に達するケースのことだから、習慣的な連続飲酒でさまざまなトラブルを起こすのとは根本的に異なるんだ。

 アルコール依存症の最大の問題点は、日本で約100万人の潜在患者がいると推定されるのに、実際に治療を受けているのは約4万人と極端に少ないこと。つまり、覚せい剤などの薬物依存は摂取そのものが犯罪なので、潜在的に患者が増える危険性は抑制されるけれど、アルコール依存は本人に自覚がなく周囲も気付かないまま深刻な事態へと陥ることが多い。薬物と違って酒を飲むことは犯罪でないし、タバコの受動喫煙のように周囲にも害を及ぼさないので、規制自体がほとんどないことが主な原因なんだ。

依存症の見分け方

 では、どういう症状があったら依存症を疑えばよいのか?まずは連続飲酒。「休みの日だから」と朝から自宅でお酒を口にしたり、「ストレス解消に」と会社の机にカップ酒を忍ばせたりするのは危険信号。

 次に離脱症状といって、お酒が切れると冷や汗をかいたり動悸が止まらなかったり、不眠や寝坊で予定に間に合わなかったりする。決定的なのはブラックアウトで、飲酒の記憶が飛んでしまい自分がどこでだれとどのくらい飲んだのかを覚えていない症状だ。

 基本的には日本酒2合、ビールなら2本程度なら肝臓で解毒できるけれど、それ以上の連続飲酒は内臓だけでなく脳もダメージを受けるんだ。しかも、アルコール処理能力は総じて男性の方が高いから、女性の方が依存症になりやすい。特に主婦の場合、家族を学校や職場に送り出し、独りになって飲酒をする人も。これは米国でキッチン・ドリンカー≠ニいって社会問題になっているよ。

まず病気を自覚しよう

 アルコール依存症は精神科の領域だけど、精神科というと受診のハードルが高いよね。例えば、軽いうつ症状などは心の風邪引き≠ニして精神科で治療薬を処方してもらえば早期に治る可能性が高いけれど、専門医に行くのを嫌がってそううつ症へと進行してしまい、治療に多くの時間と手間を掛けるケースが多く見られる。

 山口さんは、「アルコール依存症ではない」と主張しているようだけれど、私の見る限り退院直後に自宅で大量飲酒やキスなどの行為を覚えていないブラックアウト症状、これまでの酒豪伝説などを見聞きすると依存症が疑われる。そう考えると、「甘え」や「意思が弱い」「無責任」などの精神論で非難するよりも、一日でも早くアルコール外来のある専門医を受診することを勧めたい。

その治療法は?

 治療方法はまず断酒。薬物治療と同じで、体から完全に酒を断たないといけない。しかも、何年断酒を続けてもひとたび酒を口にすれば逆戻り。それには患者自身が「自分は依存症」と自覚して治療に取り組むことがスタートなのだ。酒を飲むと気持ちが悪くなる抗酒薬≠使う治療法もあるけれど、服用を止めてしまうと効果がないから医師のサポートが大切。

 2013年にアルコール健康障害対策基本法という法律ができ、大都市に設置されている精神保健福祉センターをはじめ、各地の保健所でも専門医療機関情報が手に入るようになったので活用してほしい。

 ここまで読んできて、「私には関係ない」とホッとしているあなた。歩行中にも片時も携帯から目を話せないスマホ依存症や、そのスマホやパソコンの画面にのめり込んでいるゲーム依存症もジワジワと増えている。対人関係でストレスの多い現代社会は、依存症に陥るという新たなリスクを忘れてはならない。


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