週刊大阪日日新聞

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2018/4/28

リノべで新築より価値高く 

関西で中古住宅の人気高まる


▲阪急不動産がリノベーションした築36年の物件=大阪府豊中市東寺内町

 関西で中古住宅や中古マンション市場が活性化している。都心部の新築分譲マンションは高騰し、新築一戸建ては土地の確保が難しくなっているからだ。好立地の中古物件を新築同然にリノベーション(リノベ)して住むスタイルが、若い世代を中心に受け入れられており、住宅メーカーや不動産会社は新たにブランドを立ち上げ、中古物件の売り込みを強化している。

 「近くの新築分譲マンションは7千万円もするが、3500万円で駅から徒歩7分の98平方mの住宅が手に入った。床材や窓などに自分たちのこだわりを反映。ストレスはなく、100%満足」。兵庫県西宮市で築45年の中古マンションをリノベして住む40代の会社員は笑顔を見せた。

新しい選択肢

 近畿圏不動産流通機構の調査結果によると、2017年10〜12月期の大阪市内の中古マンション成約件数は991件、前年同期比1・4%増と堅調。 大手不動産会社など7社が共同で同年に実施した意向調査結果によると、新築と中古のマンションの「両方検討」と答えた人は43・8%を占め、中古物件への抵抗感が薄らいでいるようだ。

 不動産会社は中古物件とリノベをセットにした販売に力を注ぐ。阪急阪神不動産(大阪市北区)は、物件探しとリノベ、アフターサービスを一貫してサポートするオーダーメード型の「リノブルーム」、中古物件をリノベして再販する「スタイルズ」など3ブランドを立ち上げ、近年は右肩上がりの状況だ。

 同社住宅事業企画部の古城昭洋課長は、新築より中古の方が立地や価格面で顧客の希望に沿えるとし、「リーズナブルに良い住まいが手に入る」と強調。リノベは顧客が求める間取りや価格を設定できるため、「建て売りの新築物件よりも自由度が高い」と話す。

 大京穴吹不動産(東京都)は、17年4〜12月のリノベ住宅成約件数が1082戸、前年同期860戸から増加。担当者は、中古物件の割安感に加えて従来の新築と中古の二択から「リノベ住宅という新しい選択肢ができた」と分析する。

「3ない」払拭

 新築中心の住宅メーカーもリノベ市場に参入。大和ハウス工業(大阪市北区)は既存住宅の売買や買い取り再販といった事業の強化を目指し、統一ブランド「リブネス」を1月に立ち上げた。拠点を現在の40カ所から、25年度までに計100カ所に増やす計画だ。

 同社住宅ストック事業推進室の平井聡治室長は、近年の住宅ニーズは「中心回帰」が強まっていると指摘。高齢化が進み、病院や行政機能が集まる中心地に住まいを求める傾向になっているものの、「(新築は)立地がなく、残された選択肢は中古物件しかなくなる。(中古物件のイメージの)汚い、古い、分からないの3ない≠払拭する必要がある」と語る。

 業界団体も中古リノベ住宅の人気を追い風≠ニ捉える。日本住宅リフォーム産業協会近畿支部の矢島一支部長(44)は「従来は中古物件を買っても外壁や水回りをリフォームする程度だったが、今は耐震性や省エネ・断熱性能を高めた長期優良住宅レベルまで改修が可能」と技術力の向上をアピールする。

 国が推奨する「安心R住宅」の団体登録、中古住宅の劣化状況を専門家が診断する「インスペクション」の活用で、顧客が安心して中古リノベ物件を選べるよう、業界としても力を注ぐ考えだ。

リノベーション

 既存の建物を大規模に改修し、元来の建物が備えていた性能以上に新たな付加価値を生み出す手法。老朽化した建物を建築時の性能に戻すリフォームとは区別される。全国で中古住宅が増加する中、市場流通性を確保する手段としても注目されている。


新築に負けない魅力£mって

大阪府・市も本腰

 都市再生や少子高齢化、空き家対策の観点から、行政も中古住宅の流通やリフォーム市場活性化に本腰を入れ始めた。

 大阪府は「空き家が増加すると、活力や地域の安全性・防災性の低下が懸念される」とし、中古住宅の流通を促すため2012年度に官民でつくる団体「大阪の住まい活性化フォーラム」を立ち上げた。空き家を活用したリノベーション事例のコンクールやフォーラムを開催し、中古住宅が新築に負けない魅力的な住まいとして感じてもらう。

 府は16年に策定した「住まうビジョン・大阪」でも、中古住宅流通とリフォーム市場の環境整備と活性化の方針を明示。リフォーム・リノベーションの年間実施戸数を13年度の約12万戸から、25年度には約20万戸に増やす数値目標も掲げた。

 府都市居住課は「空き家を発生させないためにも中古住宅の流通促進は重要。市町村と連携し、空き家バンクの活用も進めていきたい」としている。

 大阪市は人口増加傾向が続くが、結婚・出産後に若い子育て世代が住まいを求め市外に転出してしまう傾向は強い。同市の13年の空き家数は約28万戸で、空き家率17・2%と全国平均(13・5%)よりも高い。

 市内に良質な住宅を確保することが課題で、市は子育て世代が持ち家を取得しローンを組む際の利子補給、築後年数が経過している中古賃貸マンションを今の家族構成に合わせた間取りに変更する際の補助など、独自の制度で支援する。


購入と売却、ほぼ同じ価格で

近大・宮部准教授に聞く


宮部浩幸氏

 中古住宅リノベーション(リノベ)の利点について、近畿大建築学部の宮部浩幸准教授(建築学)に聞いた。(聞き手は北尾雄一)

 ―リノベが注目されている。

 都会は新築を建てられるエリアが限られている。選択肢を中古に広げると、主要駅周辺など利便性の高いエリアで家が持てる可能性がある。都心部の新築マンションは高騰しているが、中古で探せば郊外の新築一戸建てと同じような価格で買える。新築の資産価値は購入時が最も高く、二十数年かけて下がり、その後横ばいになる。一方、中古物件は既に価格が下がり切っており、資産価値が変わりにくい。立地を見極めれば、売却時に購入時とほぼ同じ価格で手放せる。

 ―中古物件に抵抗感がある人もいるが。

 「古い」「汚い」という問題はリノベで解決でき、耐震改修で安全性も確保できる。新築より廉価に購入できるので、浮いたお金でリノベすればいい。

 ―日本人には新築信仰≠ェある。

 戦後復興期の住宅不足を背景に、国が「郊外に家を建て幸せに暮らす家族」のモデルを作り上げてきたからだ。デパートで商品を買うように決められた中で新築住宅を選んできたが、最近は自分で自由に間取りを考えたい人が増えた。新築よりもリノベで理想の家が手に入る。

 ―都市再生の観点は。

 都心部の空洞化が深刻だ。空き家をリノベし賃貸住宅として活用するのは合理性があり、長屋を福祉施設にリノベするベンチャー企業もいる。今も郊外で乱開発が続いているが、やめた方がいい。「将来の空き家」を量産している。中古物件の活用で人を回帰させ、ある程度の範囲の中で密度の高いまちづくりを展開しないと、自治体は限られた税収を有効活用できない。

 地方も県庁所在地の空洞化が進んでおり、活性化の手法としてもリノベは広がるだろう。

宮部浩幸(みやべ・ひろゆき)氏
 1972年千葉県生まれ。東京大大学院工学系研究科建築学専攻修了後、同助教、リスボン工科大客員研究員を経て2007年からSPEACパートナー。15年4月から近畿大建築学部建築学科准教授。「1930の家」「目黒のテラスハウス」などリノベーションを多く手掛けた。


「安心R」住宅と18年度税制改正


「安心R住宅」のロゴマーク

 国は2018年度税制改正で、中古住宅を買い取り再販する事業者や購入者の税制優遇措置を延長、拡充する。人口減少に伴う空き家の増加を背景に中古・リフォーム市場を活性化するのが狙い。顧客の不安感を払拭して流通を促すため、優良認定を受けた「安心R住宅」マーク付き物件の推奨を進める。

 国が13年に実施した住宅・土地統計調査結果によると、空き家は過去最高の約820万戸に上り、全国的な社会問題になっている。大阪市此花区では3月12日、築102年の空き家が倒壊の恐れがあるとして、空き家特措法に基づく行政代執行で解体された。

 国は昨年12月、特定の団体による住宅診断で基準を満たした物件に「安心R住宅」マークの使用を認める制度を創設。リフォームや耐震性、維持管理の履歴といった情報を開示することを認証要件にしており、中古住宅に対するマイナスイメージの払拭を目指す。

 国は18年度税制改正で、事業者が買い取った中古住宅をリフォームして販売する際、購入者の登録免許税を引き下げる特例措置を2年間延長。不動産取得税も減額し、空き家の流通を促進させる。

 国土交通省住宅局は25年までに市場規模を12兆円に拡大したい考え。担当者は「中古物件は交通の便が良いところにある。情報を全て開示するRマークを知ってもらえれば」と話している。


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