週刊大阪日日新聞

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2018/3/10

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

ドライバーサポート 過信するな

最新鋭車暴走事故から見えるもの

 2月18日、東京の閑静な住宅街である交通死亡事故が起きた。元東京地検特捜部長の男性弁護士(78)が運転する最新型の高級車「レクサスLS」が歩道に乗り上げて暴走。歩行者の男性(37)を巻き込んで道路脇の商店に突っ込み死亡させたのだ。事故当時、「あの敏腕特捜部長が…」という論点がマスコミの話題となったが、私には全く違った観点からの疑問がわいた。それは自動ブレーキやペダル踏み間違いを防止する機能が付いた1千万円もする最高級車が「なぜ、事故を防げなかったのか?」だ。

安全装置より人の判断優先

 レクサスの装備を見ると、最新の予防安全装置が付いており、前方に人や車があると、運転者に音やサインの点滅で異常を知らせ、自動的にブレーキやハンドルを操作し衝突を回避したり軽減したりしてくれる。

 ところがこの装置は、運転者が無視してアクセルを踏めば「オーバーライド」といって、自動のスイッチが切れ運転者操作が優先される。それに自動でエンジン回転を下げて減速させる仕組みは時速60キロぐらいまでのスピード引き下げが限界。仮に100キロで走っていたら40キロ程度までしか落ちないことになる。

 自動車のテレビCMで、ぶつかりかけて「あぁよかった!」とホッとする場面を見ると自動ブレーキは万能≠ニ思い込む人は多いが、実際は「低速だから事故にならなかった」だけで、アクセルとブレーキの踏み間違い暴走には対応できない。

 そう書くといぶかる人もいるだろうが、実際に公道走行中にドライバーの意志に反して、車が勝手に急ブレーキを掛けたりハンドルを切ったりしたら「どれほど危険か?」はちょっと想像すれば分かるはず。あくまで装置は補助的存在で、運転責任はすべてドライバーというのが日本の現状なのだ。

カメラとレーダー、3次元地図

 では今後予想される安全装置の進化を考えてみよう。まず高齢ドライバー増加で起こる「気付く・決める・動かす」の運転3要素の衰えをカバーするのが、ADAS(先進運転支援装置)だ。まずカメラで前方を監視、別に赤外線やミリ波のレーダーを組み合わせて衝突回避する。この分野では、欧州が日本をリードしていて、なかでも代表的なメーカーの一つ「ボルボ」は、「2020年までにボルボ社の車による死亡者や重傷者をゼロにする」という壮大な目標を掲げているが、これもあくまで運転者補助という基本に変わりはない。

 完全な自動運転にはこうした各車両による自立型装置以外に、高精度3次元地図とGPSを組み合わせたインフラ協調型の整備が必要。特に、別表のレベル3以上の人に頼らない運転≠フ実現には絶対欠かせない。なぜなら、車線数や幅、歩道、信号などの場所の基本情報はもちろん、ガードレールや電柱、縁石から側溝のふたまで把握した詳細地図を車に与え、自立型のレーダーやカメラなどと組み合わせて瞬時にコンピューター処理させることで、「目的地を設定すれば勝手に運んでいってくれる」という機械だけでの運行管理が実現可能だからだ。

自動運転レベル付け基準

(2016年SAE=アメリカ自動車技術者協会=制定)

レベル0運転支援が何もない車。運転責任はドライバー。

レベル1ACC(速度を含めた車間距離維持装置)装着車。運転責任はドライバー。

レベル2ACCに加えALK(進行方向を含めた車線維持装置)装着車。運転責任はドライバー。現行市販車はこれ。

レベル3高速道路のみ自動運転可。運転者常駐が必要。運転責任はドライバーとメーカー双方。現行法改正が必要。

レベル4すべての道路で自動運転可。運転者常駐が必要。運転責任はメーカー。

レベル5すべての道路で自動運転可。運転者は不要。運転責任はメーカー。


高齢者ドライバー対策急げ

 今、急速に少子高齢化が進む日本では、国内の交通死亡事故はどんどん減って昨年は統計を取り出して以来最低の3694人までに落ちた。しかし後期高齢者である75歳以上のドライバーに限った死亡事故発生率はその他の年齢層の2倍に上り、大きな社会問題になりつつある。

 政府が打ち出している「団塊の世代も80歳まで働いて」という働き方改革に対応しようとすれば、現代社会の最多層である70歳以上高齢者から生活の足であるマイカーを完全に奪い取ることは、地方を主体に生活基盤そのものを失わせることになりかねないからだ。

 免許証返納という小手先ではなく、認知症でも飲酒していても運んでくれる自動運転車登場が待たれるのは、こうした社会政策上の重大要求でもある。

エコ対策電化も待ったなし

 自動車業界は、こうした安全対策上の待ったなしの問題以外に、環境対策として押し寄せる電気自動車時代到来への対応も迫られている。

 これからの自動車業界に求められるのは、「C」コネクテッド(コンピューターでつながっている)、「A」AI(人工知能で運転制御)、「S」シェアリング(部品だけでなく車利用の共有)、「E」電化(水素燃料やハイブリットを含め石油燃料をできるだけ使わない環境対策)という多岐多様な難題だ。

 我が国の貿易黒字の半分を担ってきた自動車業界の体質改善は、道交法改正などの法整備を含め、官民ともに待ったなしの状態だ。


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