週刊大阪日日新聞

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2017/12/9

日馬暴行の一部始終は?

「内情」明らかに

 私は今、むなしさで心を痛めている。事件発覚から1カ月余り。大相撲日馬富士(33)の暴行事件は、横綱自身の引退と書類送検、そしてきたるべき刑事処分で一応の節目を迎える。今後、被害者貴ノ岩(27)や師匠貴乃花親方(45)はどうなるのか?まだはっきりしない事件の真相について、じっくり書いてみよう。(畑山博史)

 私はかつて日本相撲協会三賞選考委員を務め、今も関西運動記者クラブ相撲分科会の現役記者。鳥取の新日本海新聞社で長く役員を務めたことから現在も鳥取城北高相撲部後援会副会長をしている。自身がアマ相撲公認5段で日本学生相撲連盟副理事長、西日本学生相撲連盟広報委員長とあまりにも角界に近い。

事件概要が判明

 事件の概要については、貴乃花親方も同席した11月30日の日本相撲協会理事会で元名古屋高検検事長の高橋利雄・協会危機管理委員長が正式に報告した通り。

@1次会で横綱白鵬が平幕貴ノ岩に説教、横綱日馬富士がかばい止めた

A2次会で白鵬が訓示時に、貴ノ岩がスマートフォンを操作、今度は日馬富士が注意。その際の貴ノ岩の態度に日馬が激高、暴力に及んだ

B似た境遇の日馬と貴ノ岩は普段から兄弟のような関係

Cモンゴル力士会は異国に暮らす同胞の生活互助会。冠婚葬祭支援や母国での社会奉仕活動などを行い、単なる食事会ではない─と指摘した4点だ。

 この報告に異論がないのは、事件翌日の鳥取巡業の支度部屋で、貴ノ岩から日馬に謝罪し握手し和解したこと。さらに日馬が引退会見の際に、貴ノ岩に対する言葉として「礼儀と礼節がなっていなかったので、それを直してあげるのはおとうと弟子に対する先輩としての義務」と言い切った事で分かる。

 貴ノ岩は「事件がバレたら大ごとになる」と十分に分かっていて、親方には当初ひた隠していた。それが知れるところとなり観念、白状した。

貴乃花が先に連絡?

 ここで私の得た情報だと、貴乃花親方は協会トップ(理事長直接かどうかははっきりしない)にすぐ電話し、傷害事案の発生を口頭で報告したようだ。しかし、相手側は「当事者の親方同士でよく話し合って下さい」と返答。この言葉に貴乃花親方は、「協会執行部は、まともに取り合ってくれない」と感じ、鳥取県警に直接被害届を出したというのだ。

 執行部に対する理事としての貴乃花親方の強い不信感が見て取れる。

逮捕におびえた日馬


▲イメージ写真

 当初貴乃花親方や協会は「引退」までは考えていなかった。しかし、日馬富士は自ら決断に至った。なぜか?

  そのカギは11月17日の東京・両国国技館での鳥取県警による日馬に対する被疑者としての取り調べにある。夜になって日馬は知人に「ひょっとして帰れないかも、と思った」と打ち明けている。つまり、調べが事件の核心にまで及び、横綱が「このまま逮捕されるのでは?」と覚悟したほど厳しく追及されたのだ。この日を境に「どうしたら厳罰に処されないか?」と本気で周囲に相談。「自ら引退すれば、社会的制裁を既に受けたことになり、罪一等が減じられる」と知り、書類送検前に電撃引退に踏み切ったというのだ。

貴ノ岩はイバラの道

 残る心配事は、九州場所を全休し来場所は十両降格が確実な貴ノ岩の今後。彼の意に反し大ごととなった今回の事件。結果的に母国モンゴルでは「同胞の日馬富士を辞めさせた男」として非難されている。

 来年1月初場所に土俵に戻れても、好奇の目を含め前途にはイバラの道が待ち受ける。このまま引退の可能性も捨て切れない。

孤立無援の貴乃花

 一方、孤高を貫く貴乃花親方の理事任期は来年1月場所後まで。今回の件で孤立無援を痛感した同親方は、いま絶望感を抱いている。「真っ正面から取り組めば、もっと多くの親方衆が支持してくれると思ったのに」との無念さだ。理事選に5期目を目指し立候補するのか、仮に出ても当選できるのか。書類送検後も、この師弟コンビから目が離せない。


貴乃花の大相撲観と現状

真っ直ぐで頑固

 私は貴乃花が入門した頃からずっと彼を見てきた。父親の初代貴ノ花(元二子山親方、2005年に55歳で死去)の教えを真っ直ぐに守ってきた純粋な男だ。すなわち、相撲部屋での力士間のいじめや強要などの禁止。土俵に上がれば同情や忖度(そんたく)などは一切しない真っ向勝負。良く言えば一直線でブレない人、悪く言えばまったくといっていいほど融通が効かず不器用だ。よき理解者だった母藤田憲子さん(現在は紀子、70)や実兄で元横綱二代目若乃花の花田勝さん(現在は虎上、46)とも、ちょっとした行き違いから現在に至るまで没交渉になっている。

 名理事長と言われた北の湖親方(15年に62歳で死去)は、常に人の話に耳を傾けた。現在の八角理事長(元横綱北勝海、54)は協調と内外の人々の協力による組織運営で頂点に上り詰めた。

外国人、学生出身と距離

 そう考えると貴乃花親方の理想実現は困難だ。今の角界は、十両以上の関取の3分の1がモンゴルを中心とした外国人、また3分の1は大学で活躍した学生出身。親方の望む中学、高校からの日本人入門者は残る3分の1しかいない。外国人と学生出身者は、当然その出自から土俵を離れれば所属部屋を越え食事などを通じて旧交を温め合う。それを「なれあい」と見る発想には、無理がある。

 周辺を含め1千人にも及ぶ協会員をまとめるには、個人事業経営者のようなワンマン体質ではなく、上場大企業経営者のような周囲幹部に推される人望が欠かせない。現役時代の強さや人気とは必ずしもイコールでないから余計に難しい。


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