週刊大阪日日新聞

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2017/11/25

がん特集2017 がんの治療法

 がんと診断され、治療することになったら、基本的に「3大治療」と呼ばれる手術、化学療法(抗がん剤治療)、放射線治療を選択することになる。今回は先進医療と呼ばれる陽子線治療をはじめ大きく進歩した放射線治療、がん病巣を国内で開発された電磁波加温装置の電極で挟み、深部のがん病巣の温度を高める温熱療法など患者に優しい治療法が可能となっている。今回は体に負担の少ないがんの先端治療を紹介する。

陽子線治療

放射線治療の中で安全性が高い「陽子線」


▲陽子線治療施設を紹介する同クリニック医学物理士、櫻井さん

 「陽子線」と呼ばれる放射線の一種を使って、ピンポイントでがんを治療する最先端の施設が、府内で初めて大阪市此花区の医療法人伯鳳会「大阪陽子線クリニック」に完成し、11月から先進医療施設として一般の治療を始めている。

 この施設では最新の陽子線治療装置に加え、強度変調放射線治療装置を備え、兵庫県立粒子線医療センターから技術的な支援を受け、放射線治療を提供している。

ピンポイントでダメージを与える

 陽子線治療は外部放射線治療の一つで、陽子(水素原子核)を光の速さの約70%に加速させたものを使っている。通常の放射線治療に使われるX線は人体に当てると、がん細胞で止まらずに突き進むため周辺細胞にも影響を与えやすい。

 一方、陽子線治療は「陽子」と呼ばれる放射線の一種を使って、設定した深さでがん細胞に最大のダメージを与えて停止するという特性(ブラッグ・ピーク)がある。また、放射線治療が手術療法や薬物療法と異なるのは、実際に治療を行う前にコンピューターを使ってどこにどれだけ放射線が照射されるかをシミュレーションできることだ。

 同クリニック医学物理士、櫻井勇介さんは「がんの腫瘍をピンポイントで狙い撃ちする治療法で、従来の放射線治療より体への負担が少なく、効率的にがんを治療できる」として、体にやさしい治療とされる。身体的な負担も少なく通院での治療も可能ということで、注目されている。

 同クリニックの陽子線治療で適応があるのは前立腺がんと肺がんの二つで、その他のがんについては順次拡大予定。前立腺がんの治療の場合、がんの悪性度により、ホルモン療法の併用が必要になることがある。また、より正確な照射を行うために金属マーカーを前立腺に挿入することが必要になる場合がある。

先進医療の治療費は自己負担

 加速器(シンクロトロン)の設営など建設コストが高いため日本には少数の施設しかなく、関西では「兵庫県立粒子線医療センター」に続いて2カ所目。「大阪で初めて陽子線治療施設が誕生することになり、利便性もよく、陽子線治療をがん治療の選択肢の一つとして検討できるようになる」(同クリニックの山本道法院長)。

 民間の医療保険を活用することで、通常の保険診療よりも負担を少なくすることができる。

《取材協力》 医療法人伯鳳会「大阪陽子線クリニック」
 大阪市此花区春日出中1―27―9、電話06(6462)1888


ハイパーサーミア

局所加熱でがん治療 疼(とう)痛緩和に効果


▲ハイパーサーミアの施術を紹介する近藤院長

 がん細胞が温度に弱いことを利用して治療するのが「ハイパーサーミア(がんの温熱療法)」。国内で開発された電磁波加温装置(サーモトロン RF─8 )で患部を電極で挟み高周波を流し治療するので、全く副作用がなく深部のがん病巣の温度を高めることができる、患者に優しい治療法だ。低容量の抗がん剤や放射線治療、免疫療法などとの併用で効果が上がる同治療法への関心が高まっている。ハイパーサーミア治療を行っている「千春会ハイパーサーミアクリニック」院長、近藤元治氏(京都府立医科大学名誉教授)にがんの温熱療法についてインタビューした。

 ―ハイパーサーミアとは。

 がん細胞が温度に弱いことを利用して治療するのが「ハイパーサーミア」です。人間は恒温動物ですから、入浴やサウナなどで外部の温度を上げてみても、体温上昇はせいぜい38度まで。とてもがん病巣を目的温度の42度にはできません。そこで電磁波加温装置が国内で開発されました。

 ―どのように施術するのですか。

 患部を電極で挟み高周波を流す「局所加温」で全く副作用がない。深部のがん病巣の温度を高めることができる、患者に優しい治療法です。健康保険が一定期間使えるので、経済的な負担は軽く安心です。

 ―施術効果は。

 がん細胞を42度に加温できたら、それだけでがん細胞は死滅します。周囲の正常組織は血流が豊富なため、40度以上には加温できずダメージはありません。これを週に1〜2回くり返すことで、がんの増殖を抑え、縮小させることが可能になります。

 ―がん治療には放射線治療や化学療法がありますが。

 ハイパーサーミアを併用しますとその効果が高まります。言葉を代えると、抗がん剤の副作用で困っている場合、投与量を減らしてもハイパーサーミアと併用すれば、目的の効果が得られます。ハイパーサーミアは副作用がなく疼(とう)痛緩和に効果があり、患者さんの良い「QOL(生活の質)」が得られます。

《取材協力》
 千春会ハイパーサーミアクリニック
 京都府長岡京市神足2―3―1 バンビオ1番館7階
 電話075(958)6310


低侵襲医療

心身に負担の小さい「低侵襲医療」


▲「最近の医療にはQOLが重要視されています」と話す藤井理事長・病院長 

 最近の医療において、QOL(生活の質)が重要視されている。低侵襲医療とは、検査・治療においてできる限り患者さんの身体への影響を減らした治療法だ。

 放射線治療において、以前使われていたガンマ線には エネルギーが低く、患部への照射も絞り込みにくいといった技術的な課題があった。藤井正彦病院長は「現在では、リニアックを用いたX線に置き換えられ、IMRT(強度変調放射線治療)のように多角的に放射線を照射できる機器も開発されている。これらの治療法は臓器を取り除く外科的手術よりも、機能温存、QOLを高める効果がある」という。

放射線治療の特徴

 放射線療法は、比較的病巣が小さい場合、単独でも高率にがんを治癒することができる。

 手術の場合、体に傷跡が残ったり、手術直後には痛みを伴い、一時的に食事を摂ることが難しくなるなど体力的な負担が大きい場合が多いが、放射線療法であれば体にメスを入れず、痛みも無いため、一般的に体力的負担が少ないと言える。

 例えば、早期の乳がんでは、がん病巣を中心に小さく摘出し、乳房の形を残す温存手術が主流となってきたが、藤井病院長は「残った乳房に対して放射線療法を行うことで(乳房温存療法)、乳房をすべて摘出する乳房切断術と比較して、治療成績は同等と報告されている」とQOLの大切さを指摘する。

痛みがないため患者への負担が少ない

 同医療センターが導入している新型の放射線治療器は「サイバーナイフ」「トモセラピー」「トゥルービーム」の3機器だ。

 サイバーナイフは体幹部の腫瘍や、呼吸により動きのある腫瘍に対しても治療が可能。対応疾患は頭頚部、脊椎、体幹部など。

 トモセラピーは、放射線治療装置がヘリカルCTのように回転しながら360度全方向から腫瘍に集中的に放射線を照射するIMRTの専用装置。360度方向から複雑に照射野を整形するために、複雑な腫瘍の形状にフィットした照射を行うことができる。

 放射線を照射して治療を行いたい腫瘍と、放射線をあまり照射したくない正常臓器が近接している場合や、正常臓器が腫瘍に取り囲まれているような場合でも腫瘍に集中的に放射線を照射することができる。

 国内で初めて導入した最新放射線治療装置「トゥルービーム」は従来の放射線治療装置と違い、正常な組織を守りながら治療効果をあげる「IMRT」(強度変調放射線治療)と、呼吸の動きを補正する機能を組み合わせた、最も先進的ながん治療システム。

 肺がん・乳がん・前立腺がん・肝臓がん・食道がん・膵臓がん・転移性腫瘍・骨腫瘍・頭頸部がんなどさまざまなな疾患に適応でき、1回あたりの治療時間も短くなり、からだにやさしく、高精度な放射線治療が受けられる。

低侵襲医療とは

 手術や検査などにともなう発熱や出血、痛みなどをできるだけ少なくした医療。内視鏡やカテーテルなど、体に対する侵襲度が低い医療機器を用いた診断・治療のこと。患者への負担が少なく、早い回復も期待できる。

低侵襲医療と呼ばれる治療例

 内視鏡的治療 腹腔鏡下手術 胸腔鏡下手術 定位放射線治療 PSA監視療法

《取材協力》
 神戸低侵襲がん医療センター
 兵庫県神戸市中央区港島中町8─5─1
 受診・予約専用電話078(304)5480


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