週刊大阪日日新聞

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2017/10/28

がん特集2017 第1弾 予防と検診

 日本人の2人に1人がかかり、死亡原因の1位になっている「がん」。だれもが向かい合うことには不安を抱いているかもしれないが、しかし恐れることはない。がんは早期に発見できれば、ほぼ治る病気になってきた。しかも予防することができる病気である。正しい知識を持つことで「たとえがんになっても安心して暮らすことができるように」を願って、3回連続で「がん特集」を掲載する。まずは1回目として「予防と検診」を取り上げた。

予 防

生活習慣の改善で30%は予防できる

 絶対にがんにならないという方法はない。しかし発生率を下げる予防法はある。多くの人がすでに承知済みだろう「生活習慣の改善」だ。なんだと思わずにもう一度、考えてほしい。 なぜならば英国の疫学者や米国の予防センターなど、多数の研究で、食事などで死亡の30%ほどは予防できるとの数字が出されているからだ。

 まず世界保健機関(WHO)が提案する指針をみると「体重の維持」「運動の継続」「飲酒しない」「中国式の塩蔵魚など食塩の摂取は控えめに」「アフラトキシンの摂取は最小限に」「野菜・果物は最低1日400g摂取」「ソーセージなど加工肉は控えめに」「飲食物は熱い状態でとらない」といった、かなり過激というか過剰とも思える項目が並ぶ。

 もっともアフラトキシンは食品衛生法で規制されており、中国の塩蔵魚を食べる日本人もほとんどいないだろうし、まったくの禁酒も無理に実行すればストレスが溜まりそうだ。加工肉も驚くような量を食べるとは考えられないし、家族にうどんやラーメン、みそ汁を冷めた状態で食べろとは言えないだろう。

 そこで2011年に国立がん研究センターが「日本人のために」まとめた「がんを防ぐための新12条」を示しておこう=上記。

 これらの項目から、予防に劇的な効果が期待できないことは明白。つまり日頃の地道な継続が大事であるということだ。

 それと注意すべきは、世の中には「がんに利く」をうたい文句にした少なくない食品。とにかく情報にいちいち振り回されるのではなく、科学的な根拠を確かめる必要がある。

 「予防は100%ではない。笑い∞発酵食品 ストレスなし≠フ生活を送り、そして検診を受けよう」と大嶋医師は提唱する。


検 診

がんは早期発見で助かる

 がんは早期発見し、治療することで、確実に死亡を減らせるが、その早期発見に欠かせないのが検診だ。事実、検診を受けた人に比べて、受診していない人の死亡率が高いという結果が出ており、間違いなく悔やむよりは面倒でも受診するべきだといえる。

 ところが世界各国と比べて、日本は検診受診率が極めて低い。検診にはいくつかの種類があるが、代表的なものは、市町村が行っている住民を対象にした「対策型検診」と、人間ドックなどの個人の「任意型検診」だ。例えば最近大きな話 題となった「乳がん」。その対策型≠フ「50〜69歳」では、英国74・1%、米国60・6%、豪州57・0%で、韓国でも61・2%であるのに比べ、日本は23・8%と恥ずかしいぐらいに大きく下回っている。他のがんの数字もほぼ同じような傾向を示しており、総じて日本の受診率は20〜30%程度だが、欧米では80〜90%とその差は極めて大きい。

あまりにも低い大阪の検診受診率


▲受診率アップとがん検診を呼び掛ける松井知事(左)ら

 しかも残念なことに大阪府はさらに全国平均よりもかなり低く、胃がん21・5%、大腸がん18・9%、肺がん14・9%、乳がん26・8%、子宮頸がん28・3%(平成16年国民生活基礎調査・40〜74歳)と、すべて10、20%台というレベルである。

 では、なぜ検診を受けないのか。内閣府の調査によると、その理由にあげられたのが「面倒だから」「医療機関にかかればよい」「時間がない」「費用がかかる」「健康には自信がある」などとなっている。

 対策型検診は公的な助成があるため安い費用で受診できる。しかし土日や夜間といった、融通がつけやすい時間帯には、今の日本の体制では受診できない。仕事や育児に追われている者にとっては、かなり難しいのは確かだ。

 一方、任意型検診は全額自己負担で費用がかかる。それと中には、まだ研究段階だとか、有効性が未確認である検診が含まれていることもあるので、内容の理解と不利益の確認を十分にやる必要がある。

 それに検診にもマイナス面がある。一般的な検診でがんの疑いがあるとなった場合、精密検査を受けることになる。これを「偽陽性」というが、現実的には精密検査を受診し「やはりがんだった」というケースがかなり低い(例えば胃がん2・3%など)。つまり「偽陽性」となると、不必要な精神的、時間的、経済的、身体的な負担を受けることになる。また治療する必要がない良性のがんを治療してしまう「過剰診断」の問題もある。

 「偽陽性は現実には1%あるかないか。患者は実際に精密検査には1割程度しか行かないため、医師はどうしても行かせるために°ュめに診断書を書く傾向がある」と正直に答えてくれたのは、放射線科医で大阪信愛女学院短大の大嶋太一客員教授だ。

 がんは進行に応じた病期をステージ0期からW期の5段階で示すが当然、発見されたステージで死亡率が変わり、またこの差が大きい。

 大腸がんを例にすると、ステージ別の5年生存率はT期91%、U期81%だが、V期になると結腸がん69%、直腸がん58%と急激にダウンし、W期では13%にまで落ちてしまう。また胃がんでは、胃の内部にがんがとどまっている状態ならば、10年生存率は96%だが、肝臓などに転移した状態ならば4%という極端に低い数字になってしまう。

 そして検診で見つかった大腸がんの72%が早期の状態である事実。そこから導かれるのは「検診の重要さ」であり、検診で命が助かるという重さ≠ナある。

 「検診受診率を上げるには、土日にやっている自治体も一部にはあるようだが、そんな利便性の向上や電話で受診を誘うなど、きめ細やかな行政のフォローが必要になる」と大嶋医師は指摘する。

 ところで精密検査といえば、内視鏡検査が相場だが、肛門からスコープを挿入ということに、臓器の変形などで痛かったり、女性には恥ずかしさを感じる患者も少なくない。そんな抵抗がなく、挿入技術の必要もない検査がある。超小型カメラを内臓したカプセル(長さ26ミリ、直径11ミリ)を使うもので、水で飲み込むだけでOKという優れもの。ただし費用がかかるのが欠点で、スコープが1・5万円に対して、カプセル型は10万円だ。

 この検査を取り入れている府内でも数少ない病院のひとつ、門真市の正幸会病院の東大里院長は「内視鏡のように治療はできないが、その場に医師がついている必要がなく、時間的拘束が少ない」などの利欠点があるが「こんな検査もあるのか、と興味を持って訪ねてくれれば」と、検診率アップに結果的につながることを期待する。


「笑い」はがんに有効だ

落語家や漫才師らが笑いを提供

▲研究について語る宮代所長(右端)ら

 大阪国際がんセンター(大阪市中央区)ががん患者への「笑い」の効果を科学的に実証しようと取り組んでいる。5月から8月までに計8回、複数の芸能プロダクションの協力を得て、落語家や漫才師らお笑いタレント≠ェ病院内に設けられた舞台から「笑い」を提供。これを通院中の患者や看護師ら約130人が体験し、公演前後に、採血と2種類のアンケート調査に応じた。同センターでは研究成果を来年3月までにまとめて発表することにしている。

 お笑い≠ニ免疫についての研究は、これまでにも実施されてきた。しかし今回のように長期のスパンで測定した研究は初めてで、しかも客観的、科学的な調査である点に意味があるという。

 今回、血液検査では血液中の免疫細胞の数や刺激による活性化を調べるだけでなく、免疫を抑制する細胞の検査も行った。またアンケートは国際的に一定の評価がある方式を採用し、「自己効力感」(できるという見込み感)と「生活の質(QOL)指標」の2種類について実施した。

 がん対策センターの宮代勲所長が「笑いのチカラを科学的に評価しようと真面目に取り組んでいる」と力説する研究だが「来年以降も続けたいが、予算的に…」(広報課)とあって未定だという。


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