週刊大阪日日新聞

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2017/9/16

大阪駅の名物「ドーム屋根」完成秘話 未明2時間半のミッション

南北ビルつないだ連絡橋

 JR大阪駅のドーム屋根は、2011年の駅舎新装に合わせて誕生した。弓なりの形状は大阪の玄関口の象徴になったが、そもそも、この巨大な構造物はプラットホームの上空でどのようにして設置されたのか。工程を振り返ると、駅が眠る「2時間半」のわずかな時間帯に集中し、難工事に挑んだ技術者、建設者の連帯感があった。

 東京の玄関口であるJR東京駅は12年に赤れんが駅舎の保存・復元工事を終えて脚光を浴びたが、その前年から大阪駅は衆目を集め、人々をいざなっていた。

 新装した大阪駅と南北の駅ビルで構成する「大阪ステーションシティ」が11年5月4日に全面開業し、新設の北側ビル(ノースゲートビルディング)に商業施設がオープンしたためだ。さらに、ガラス張りのドーム屋根をはじめ、南北ビルをつなぐ連絡橋の「時空の広場」も街≠形成した。この一連のプロジェクトが始動したのは04年。総事業費2100億円が投じられ、延べ240万人が工事に携わる大規模な現場だった。

線路上の難工事

 このうち、大阪駅改良工事の施工者は大林組、大鉄工業、竹中工務店、錢高組、淺沼組、奥村組6社の共同企業体。設計・監理を担った事業主のJR西日本で現場担当者だった池田耕二さん(39)=1級建築士=は「駅の営業を担保しながら駅の上空に屋根を造るのは難工事」と当時を振り返った。

 駅利用者の安全と列車の運行を担保するため、工事の時間帯は、終電車が過ぎて始発電車が走り始めるまでの午前1時30分〜同4時に限られた。ドーム屋根を構成する鉄骨を中央部から左右へ毎分50cmの速度で15回に分けて広げる「送り出し工法」によって工事は続いたが、最も時間と神経を割いたのが日々の「仮固定」作業だ。

 全長180m×100mのドーム屋根の総重量は3500tに上る。重いほど揺れるため、地震対策は特に重要だった。通常の工事ならば仮固定の部材としてボルトを使うが、ドーム屋根の工事現場は衝撃吸収装置のオイルダンパーなどを用いた。「これ(仮固定)がなければ駅として次の日を迎えられない」と池田さんは回想する。

 落下物があれば大惨事につながるため、工事現場では構造物を手で触って直接確認する触診検査も徹底。ボルト落下実験を通して安全意識の高揚も図ったほどだ。

民営化の象徴


▲ドーム屋根の工事を担当したJR西日本の池田さん

 ドーム屋根だけでなく、連絡橋も同様に共同企業体との間で細心の注意を払い、築いていった。「造り上げる連帯感は会社間を超えていた。連帯感が無ければ、緊張した中で仕事できなかった」。プラットホーム上空で続いた深夜の難工事が完了した日、始発電車を迎えた池田さんは「無事故でできた」と感慨にふけった。それだけに、苦労を共にした共同企業体のメンバーとは今も付き合いがあるという。

 現在の大阪駅は1874年の開業から5代目の駅舎になる。「4代目駅舎は四角四面で顔がない」と世間的に言われていただけに、JR西はドーム屋根を大阪駅の象徴と位置づけていた。今年は国鉄民営化30年の節目でもあり、JR西はドーム屋根で覆われた新装大阪駅の全景写真を10月発行予定の周年史に掲載する。

 ドーム屋根と共に整備された連絡橋も象徴的な存在だ。ノースゲートビルディングとサウスゲートビルディングをつなぐだけでなく、北側のグランフロント大阪や南側の北新地の繁華街の往来をスムーズにさせている。

 大阪駅の北側では「うめきた2期」の開発が進み、一帯は一層脚光を浴びていく。1日80万人以上が利用する西日本最大の大阪駅を象徴するドーム屋根と連絡橋は、大阪を代表する名物≠ニも言える。


▲時空の広場でくつろぐ大阪駅利用客

記者の視点「大阪に平成京≠創ろう」

 新装JR大阪駅と南北の駅ビルで構成する大阪ステーションシティは、駅北側に位置する「うめきた」の起爆剤でもある。うめきたは1987年の国鉄民営化によって売却が決まった貨物駅跡の再開発地域。JR西日本発足30年の節目を迎え、改めて大阪の潜在力に目を向けたいと思う。

 大阪駅北側24へクタールを舞台にした一連の再開発は、奈良の平城京や京都の平安京を引き合いに「大阪に平成京≠創ろう」との合言葉を生んだ。平成京のフレーズには、戦後の中央集権体制を背景に失速した商都・大阪の危機感が込められていた。

 大阪ステーションシティが2011年5月に全面開業した2年後の13年4月、うめきたにグランフロント大阪は誕生した。現在はうめきた2期区域の開発と併せ、なにわ筋線の整備計画も動き始めている。関西最大駅の大阪駅を起点に進む一体的な再開発は、大阪復権の試みとも言える。

 東京一極集中是正の意味もあると捉えれば、普段何げなく利用する大阪駅の光景は違って見えるかもしれない。


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