週刊大阪日日新聞

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2017/8/26

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

米朝間でグアム標的騒ぎ チキンレース裏の思惑は?

 北朝鮮が2度にわたる大陸間弾道ミサイル(ICBM)打ち上げに続き、グアム周辺海域を標的にすると宣言。不安と緊張が日本列島を駆け抜けた。結局、北朝鮮側が「米国の出方を見守る」という声明で収束したものの、今週から米韓合同軍事演習が始まり、再び北東アジア地域は緊張する。人類唯一の被爆国日本にとって、核戦争の恐怖はいつまで続くのだろう?


【米朝間グアム標的騒動の経緯】

7月4日

 米国独立記念日に北朝鮮がICBM「火星14号」発射

28日

 北朝鮮が祖国解放戦争勝利(朝鮮戦争休戦協定締結)記念日に合わせ、深夜に再びICBM「火星14号」発射

8月1日

 米共和党上院議員のインタビューで、トランプ大統領が「もし戦争になれば、現地(朝鮮半島)で起こる。大勢死ぬとしても向こうで死ぬ。こちら(米国)で死ぬわけではない」と発言、局地戦の危険性に言及が明らかに

5日

 国連安保理が中ロも賛成し全会一致で北朝鮮への制裁決議を採択

6日

 ARF(ASEAN地域フォーラム)に米韓日朝の外相級が参加。ICBM問題を機に米が北朝鮮追放の思惑示すもアジア各国は応じず

8日

 北朝鮮が米国への警告として中長距離弾道ミサイル「火星12号」による「グアム包囲射撃作戦」検討を公表。トランプ米大統領は「(実行すれば)世界がこれまで見たことのないような砲火と激烈な怒りに直面することになる」と警告

9日

 北朝鮮は「4発の火星12号を同時発射し、日本の島根、広島、高知各県上空を通過し、グアム周辺水域に着弾させる」と発表。「発射態勢で金正恩朝鮮労働党委員長の命令を待つ」と具体的に威かく。

10日

トランプ米大統領は、静養中のニュージャージーのゴルフ場で「グアムに何かすれば、誰も見たことがないようなことが北朝鮮で起きる」と不快感を示し警告。

11日

米グアム準州政府が、核ミサイル攻撃に対する緊急ガイドライン発表。トランプ米大統領は、ツイッターで「北朝鮮が浅はかな行動を取れば、軍事的に対抗する準備は完全に整っている。彼(金委員長)は後悔することになる。われわれは臨戦態勢にある。逃げおおすことはできない」と強い警告

12日

北朝鮮が労働新聞で「核強化から一歩も引かない」と表明

14日

 金委員長は戦略軍司令部を視察し、「米国の行動をもう少し見守る」とトーンダウン発言

16日

トランプ米大統領は、金委員長の発言に対しツイッターで投稿、「非常に賢く、理にかなった判断をした」と一定の評価

21日

米韓合同軍事演習「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」を31日までの予定で開始。両国で7万人近い兵員が参加。北朝鮮は強く反発


 表の経緯を見ると、北朝鮮が新聞やテレビで米国を盛んに挑発する一方、米側はトランプ大統領がツイッターなどで直接意見発信し、すれ違い気味。北朝鮮の方がしたたかで、トランプ氏が相手の挑発に乗って同じレベルで応じているように映る。ニュースだけ見ると、まさに一触即発で不安を感じるけれど、実際の思惑は違うところにありそうだよ。

 まずトランプ氏を見てみよう。国内では人種差別問題で再び失言するなど側近の離反や解任の連鎖が止まらない。各行政機関ではトップ不在が相次ぎ、組織の体が取れない異常状態と言える。こうした中、浮上してきた北朝鮮脅威論は、実はトランプ氏にとっては渡りに船=B

 その理由は、かつて9・11同時多発テロを受けてジョージ・ブッシュ・ジュニア大統領がイラクのフセイン政権に戦争を仕掛け、低支持率を回復させた前例があるから。「内政の失敗を外敵に求める」のは、各国の政権が行う古典的な人気回復策なんだ。休暇中のゴルフ場から声明を出しているあたり、本気で怒っていると思えない。

 実は安倍政権も同じ。「モリ・カケ問題」(森友と加計)で人気が低迷する中、北朝鮮脅威論が大きく報道されることで、PAC3を4県に配備したり、防衛力強化で米国から高い迎撃用兵器を購入したりと完全に国民の目くらましに役立っている。大騒ぎの割りには、夫人と地元山口県の盆踊りに参加。お盆は山梨の別荘で休暇だから、本当に切迫しているとは思えないよね。

 つまり、日米のトップはそれぞれ北朝鮮の跳ね返り行為をうまく利用し、国民に点数稼ぎをしているんだ。

選択肢は米国に

 「そんなこと言っても戦争になったらどうなるの?」にも答えよう。米軍はまず日本海にいる爆撃機から妨害電波を出し、北朝鮮の指揮命令系統やミサイル発射システムを制御不能にする。それから爆撃を開始すれば勝敗は一夜で決する。つまり、北朝鮮としては先制攻撃しない限り、1発のミサイルも打てないのが現実なんだ。選択肢は米国にあって、「北朝鮮の核保有を認め、互いの抑止力として共存するか、それとも目障りな存在を一気に叩き潰すか」の2つに一つさ。中国も米国の攻撃力を知っているから、「北朝鮮が勝手に仕掛けるなら、朝鮮半島が火の海になっても知らんよ」と静観を決め込んでいる。

 では、北朝鮮が核兵器やミサイル開発をする意図についても考えてみよう。それは核がないと「米国の思惑で突然潰されかねない」という恐怖心に他ならない。「同じ独裁国家だったイラクのフセイン大統領は核を持っていなかったからやられた」「リビアのカダフィ大佐は欧米にだまされて核開発を断念した途端、殺された」という過去の教訓があるからね。

 だから金正恩体制を維持するためには絶対に核兵器やミサイル開発は止めないし、経済制裁も実効はない。北朝鮮は米国の立ち位置を常に図るため、裏で国連のあるニューヨークを舞台に2国間交渉に入っているんじゃないかな。

 こうした中、被ばく国日本としては常に「核廃絶」を訴え続けないといけない。でも、政府と自民党の政策をみると、福島原発事故の教訓を生かせず、核に対する建前と本音の自己矛盾を常に抱えているようだ。


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