週刊大阪日日新聞

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2017/6/24

知識は記憶から活用へ 

日本の教育が大激変! 備えよ!インダストリー4・0


▲タブレットを活用しながら課題について深く調べる生徒たち(常翔学園中)

 2011年度に米国の小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう─。米デューク大のキャシー・デビッドソン教授の見解だ。英オックスフォード大のマイケル・A・オズボーン准教授も「今後10〜20年程度で、米国の総雇用者の約47%の仕事が自動化されるリスクが高い」と予測している。今後、モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)の活用が進むことで、ドイツ政府が提唱したインダストリー4・0、いわゆる第4次産業革命の時代がやって来ると言われている。従来人間が行っていた労働はロボットが代替し、自動車は自動運転技術の発達で移動弱者や事故死亡者がゼロになるなど、現在の暮らしは大きく変わるだろうということだ。

21世紀を生き抜くスキル、どう磨く?

次期学習指導要領は「生きる力」

 この予測不能な変化にも柔軟に対応できる人材を育てようと、文部科学省は今年3月に次期学習指導要領「生きる力」を公表した。

 具体的には「確かな学力」「豊かな人間性」、「健康・体力」の知・徳・体をバランスよく育むこと。2020年にスタートを切る新しい大学入試は、こうした能力を問うテストになる。

 その中の一つ「確かな学力」について見てみよう。従来のテストは、頭に詰め込んだ知識量を問う内容だった。大雑把な表現だが、単に記憶力を測るテストだったとも言える。

 しかし、新テストでは記憶した知識について自ら深く考え表現し、さまざまな問題を積極的に解決する力が試される。こうした力を身につけるのにはアクティブラーニングという学習法が効果的だと言われている(別項参照)。

 例えば、「少子高齢化が進む自分の町を活性化するにはどうしたらよいか」などの答えのない問題に対峙したときに、自らの知識や技能を活用し、他者とも協力して取り組むなど「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」を身につける学びだ。

 他者と協調しながら問題を解くには、どのように相手の理解を得るかなどの課題にも直面するため、「豊かな人間性」が磨かれる。

可能性広げるICT授業

 子どもたちが興味を持って能動的に学習するアクティブ・ラーニングをいかに授業に取り入れるか─。そこで関心が高まっているのがICT(情報通信技術)を活用した授業だ。

 タブレット端末などを使った授業は、子どもたちの興味や関心を高めるうえ、最新のデジタル教材などで分かりやすい授業も展開できる。「一斉学習」はもちろん、一人一人の能力や特性に応じた「個別学習」や、子どもたちが教え合ったり学び合ったりする「協働学習」も可能になる。

 一斉学習が効果的に行われている例では、古文をゲーム形式で学ぶ「助動詞カルタ」がある。先生が「連体形接続」などのキーワードを出すと、生徒がこれに合った助動詞をアプリの「カード」に素早く書き込んで教員のiPadに送信。早押しクイズのような楽しい授業になる。

 英語のスピーキングテストでは、iPadに配布された課題文を生徒が朗読。内蔵マイクで録音された音声ファイルは先生のiPadに集約し採点。生徒は順番を待つ必要がなく、スムーズな授業が進められる。

 ICT授業を経験した生徒たちは「授業への積極性が増した」「数学や物理などのイメージしづらい概念を、目で見て理解できる」など効果を実感している。


▲チームごとに研究した結果を発表する生徒たち(近畿大付属中)
時間的メリット生かす私立中高一貫校

 アクティブラーニングはすでに私立校では導入が進んでおり、なかでも中高一貫校が先駆的だ。高校受験対策をする必要がないメリットを生かして、中学のうちから理科の実験や観察、社会のフィールドワークやディスカッションに時間をかけているほか、英語や数学、国語など受験科目でも、調べ学習やレポート形式の課題をこなせる時間的メリットがある。

 今春の大学入試(首都圏)は連年通り、私立中高一貫校が難関国公立・私立大学への合格実績を伸ばした。なかでも海城、渋谷教育学園幕張、市川など東京大への合格実績を伸ばした私学の多くは、「双方向型・対話型授業」「ICT授業」を行うなど、アクティブラーニングにICT(情報通信技術)などテクノロジーを取り入れた「21世紀型教育」を実践している。

 共学化して校名を変更した三田国際学園をはじめ、開智学園、東洋大京北など新たな教育のスタイルの導入で学校改革を打ち出した私学で志願者が増え、入学難関校となった。

 また、現在の中3生が高校3年になる2020年は、東京オリンピック・パラリンピックの開催年。文科省ではこの年をターゲットイヤーと表現。「50年に一度」の世界的なイベントを節目に、首都圏や関西もグローバル化の波にさらされることになる。新しい授業スタイルで、新たな時代を切り開く能力を身につけることが、今以上に求められそうだ。


今さら聞けない アクティブラーニングって何?

 能動的に学ぶ姿勢を身に付けるための学習法「アクティブラーニング(AL)」。なぜ、こうした学習法が必要になるかは、次の質問例を比べれば分かりやすい。

 これまでの試験は「大阪のGDPの額は?」といったような暗記した知識を問う問題が中心だ。しかし、2020年度以降は「大阪を活性化する方法は?」という「正解」のない問いに答える力が求められるようになる。

 この問いに、一人の子は「お笑いの街にして、世界中から人を呼ぶ」と答えるかもしれない。また、ある子は「地下鉄を全部ジェットコースターにすると、通勤や通学も楽しいから活性化する」など、自由で多様な意見が生まれやすい。

 アイデア別にチームに分かれ、「現状で地下鉄の総延長がどのくらいあるんだろう」とか、「どことどこがつながっているともっと便利だ」といろいろと調べ出す。最後にプランをみんなの前で発表するなら、「グラフを入れた方が分かりやすいよね」とか、どうやったら人に伝わりやすいかを考えることも必要だ。

 この一連のプロセスに、話し合いや教え合いなど、能動的な学習方法が入っているというわけだ。

 表は学習定着率を示すラーニングピラミッドだが、教師が一方的に講義する従来のやり方よりも、ALで展開される学習方法の方が定着率が高いことが証明されている。

参考 思考力を問う試験問題とは?

※香里ヌヴェール学院中学校・高等学校の説明会資料より抜粋

知識・理解

(ザビエルの写真を見て)この人物の名前を答えなさい。

論理的思考

ザビエルが日本に来た目的は何ですか? 50字以内で書きなさい。

創造的思考

もし、あなたがザビエルの布教活動をサポートするとしたら、ザビエルに対してどのようなサポートをしますか? 200字以内で説明しなさい。


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