週刊大阪日日新聞

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2020/8/29

大阪・天満橋に創業して1世紀半 造幣局の来し方、行く末

造幣局理事長 川嶋 真さんに聞く


▲大阪市北区天満の大川(旧淀川)沿いに位置する造幣局の建物=造幣局提供

造幣局の歩みを語る川嶋真理事長=西口優子撮影
【かわしま・まこと】1961年、滋賀県生まれ。東京大卒。大蔵省(現・財務省)入省。国税庁課税部長、大臣官房審議官を経て2018年4月に独立行政法人造幣局理事長就任。

 造幣局が1871(明治4)年に創業し、来年は150周年の節目となる。貨幣の製造供給を担う国の機関が大阪・天満橋に立地した背景には、東京の治安状況や大阪遷都論の存在をはじめ、当時の海運に適した大川(旧淀川)の流れる環境もあったようだ。造幣局構内の川岸を開放した「桜の通り抜け」は浪速の春の風物詩として広く親しまれている。地域に根ざして1世紀半─。造幣局の来し方、行く末について、川嶋真理事長に聞いた。

近代工業の先駆け

 造幣局は大阪に本局を設けた唯一の国の機関として創業した。その3年前の1868年に英国領の香港造幣局から造幣機械一式の購入契約を締結し、大阪に輸入した立役者の1人が、明治期の大阪経済の発展に貢献した五代友厚だ。その後、「長州ファイブ」と呼ばれていた5人のうち、伊藤博文、遠藤謹助、井上勝、井上馨の4人が造幣局長を務めている。

 そもそも、造幣局の立地先が大阪だった理由として、王政復古の大事業に貢献した大阪財界に対する配慮▽当時の東京の治安状況▽大阪遷都論の存在▽大阪が天下の台所で経済の中心─という事情が語り継がれている。さらに、工場建設には川や土地が必要であり、旧幕府の材木置き場跡だった現在のこの地が選ばれた。


▲貨幣製造過程の「極印」修正作業=造幣局提供

 創業当時は、元香港造幣局長のキンドルら「お雇い外国人」が1889年まで雇用されていた。また、近代工業の先駆けとして硫酸、ソーダ、石炭ガス、コークスの製造も手掛け、大阪のガラス工業発展に貢献した。この他、電信設備、天秤(てんびん)、時計の製作、複式簿記の採用、断髪、廃刀、洋服の着用をいち早く実行した歴史が造幣局にはある。

三つの顔

 現在の造幣局は三つの顔を持っている。一つは貨幣・勲章を製造する国の機関としての顔であり、二つ目が観光スポットとしての顔、三つ目が地域貢献活動の顔だ。

 観光と地域貢献を象徴する事例が、桜の通り抜け。先ほど紹介した長州ファイブの一人で、造幣局長だった遠藤謹助が「局員だけの観桜ではもったいない」と構内の桜並木の開放を始めた。1883年以降、毎年4月中旬の開花時に全長560mの桜並木を1週間開放し、数十万人の方に楽しんでいただいている(2019年は58万7千人)。


▲2019年4月の「桜の通り抜け」=佐々木誠撮影

 今年は、枝垂れ桜と匂い桜をゾーニングして開放する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、中止を余儀なくされた。ウィズコロナの時代に、安全を期すことと楽しんでいただくことの両立を模索していかなければいけない。

 構内には、明治時代の西洋風建物を復元改装した造幣博物館もある。大判、小判の古銭をはじめ、国内外の貨幣、日本の勲章、1964年東京五輪入賞メダルなど約4千点を展示している。貨幣工場も見学することができ、小中学生の社会学習などを受け入れている(現在は工場見学休止)。

 大相撲春場所の優勝力士への造幣局理事長杯贈呈、天神祭奉納花火への協力も地域貢献として取り組んでいる。天神祭については、日本の祭りをテーマにした七宝章牌(しっぽうしょうはい)シリーズの第1号に選び、人形船、奉納花火、大阪城、川崎橋をデザインし、大阪商工会議所会頭に贈呈した。後に、大阪天満宮へ奉納されたと伺っている。

日本の誇り


▲新しい500円貨幣=造幣局提供

 貨幣製造については、偽造防止技術の研究開発を続けている。

 2021年度上期に発行予定の新しい500円貨幣には、素材に「バイカラー・クラッド(二色三層構造)」、貨幣の縁に「異形斜めギザ」などの新たな偽造防止技術を施す。2017年データだが、流通量1億枚当たりの偽造貨幣発見枚数は、500円貨幣が13・4枚なのに対し、2ユーロ貨幣は1895・5枚だった。日本の技術が世界トップクラスということがお分かりいただけると思う。

 国内のキャッシュレス化の進展も視野に入れ、この高い技術力を海外の貨幣製造に生かしていきたいと考えている。

 これまでも、2007年には日本・ニュージーランド友好記念としてニュージーランド1ドルプルーフ銀貨幣を製造した。外国の記念貨幣としては戦後初の受注だった。一般流通貨幣では、バングラデシュ2タカ貨幣を2013年に受注した。今後もこういった外国貨幣の製造を通じ、国際的にも貢献できればと思う。

 150年の歴史で積み上げた貨幣製造技術は、世界に誇れるものであり、今後もその技術に磨きをかけたい。

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