週刊大阪日日新聞

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2020/8/29

「夫は財務省に殺された!」

赤木雅子さんロングインタビュー


▲裁判を終えて裁判所の外で夫の遺影を掲げる赤木雅子さん=7月15日

 森友学園への国有地巨額値引きを巡り、公文書改ざんを強要され命を絶った財務省近畿財務局の赤木俊夫さん(享年54)の妻、赤木雅子さんが、改ざん事件の真相解明を求めて国と佐川宣寿元国税庁長官を提訴した裁判は、7月15日に始まった。

 今から1カ月半前の「戦闘突入」に、雅子さんはどんな思いで挑んだのか。雅子さんとの共著『私は真実が知りたい』を刊行した大阪日日新聞編集局長の相澤冬樹記者が、雅子さんに改めてロングインタビューした。

 「もう大体7月15日で相澤さんともお別れだよとか思ってて。これでもうサヨナラできると思ってた。とにかく7月15日までは頑張ろうと思ってたんです」

 いきなりの爆弾発言≠セ。そんなことを思っていたとは気づかなかった。

 話の主は赤木雅子さん。森友の公文書改ざんを無理強いされ、命を絶った財務省近畿財務局の職員、赤木俊夫さんの妻。「すべては佐川理財局長(当時)の指示です」と改ざんの実態を書き残した俊夫さんの「手記」を3月18日に本紙で公表し、同じ日に国と佐川氏を相手に提訴した。

 新型コロナウイルスの余波で裁判が遅れていたが、ようやく7月15日に始まった。国・財務省との闘いが火蓋(ぶた)を切った今、改めて赤木雅子さんに、この4カ月の体験と俊夫さんへの思いを聞いた。

 冒頭の発言は、提訴から裁判開始に至る間の心の揺れを尋ねる中で飛び出した。私と一緒に夫の上司らを訪ね歩いた時のこと。

森友改ざん 壊された夫婦の幸せ、暮らし

赤木 やっぱりね、行った時はね、もうすごい高揚してるんですよ。で、相澤さんは、そこから記事を書かれるから、たぶんそのまま突っ走るけど、私、そこでストンと落ちるんですよ。

─ああいう大きな出来事をやった直後が危ないですね。「こんなことやったって無駄です」っていきなり言われたのを覚えてます。

赤木 そう。やっぱり落ち込むんですよ。

─そういう意味ではね、そもそも取材を受けるっていうことにも、ものすごく後ろ向きだった時期が長くて。うまくいかないことがいろいろあったじゃないですか。あの時もだいぶ…。

赤木 もう、へこみました、超へこみました。だからもう取材なんか一切断ろうと思ったし、もう…。

─実際そう言ってましたよ。「もういいです」って。

赤木 言ってましたかね。

 この流れで冒頭の発言が出る。裁判の初日が終わってしまえば報道の熱も冷めるだろうし、私とのやりとりもなくなっていくと考えていたようだ。でも、実際は違った。

─でもね、7月15日が見えてきて、あの頃から怒濤(どとう)の取材を受けるようになったじゃないですか。一番の大きなきっかけは、やっぱりTBS「NEWS23」の小川彩佳さんと「報道特集」の金平茂紀さんだったと思います。あれが非常にうまくいってね、放送後もすごく評判よくて。

赤木 すごく大きかったです。で、あの取材を受ける前にNHKの取材があったので、ちょっと慣れてたんです。家で取材を受けたので。

 NHKとは、クローズアップ現代の取材。早くから赤木雅子さんに接触を図り、担当ディレクター2人が5月の時点で雅子さんと会っている。何度か面会を重ねて信頼関係を築き、自宅での撮影取材にこぎ着けた。

─NHKの取材が終わった後、「すごい疲れた」って言ってましたね。

赤木 4時間かかったからね。

 テレビ番組の取材はどうしても相当な時間がかかる。そのことはあらかじめ雅子さんに伝えていた。

─追加取材もあったでしょう?

赤木 あったんですよ、3時間。

─だからね、相当しんどかったと思うんですけど、あの時はあまりへこんだように見えなかったんですよ。「次はもういいです」とは言わなかったですもんね。

赤木 それはあの人たち(取材ディレクター)のおかげやと思う。うん。それでちょっと慣れてた上にあのTBSの取材があったので、すごくよかった。

 NHKとTBSの取材がうまくいったことで弾みがつき、その後はちょっとあり得ないぐらいの連続取材となった。在阪民放5社すべての取材を受け、新聞・通信社の取材も相次いだ。それは負担が重すぎないかと心配する声もあったが、結果的には裁判直前の13、14日とフルに取材を受け、15日の裁判初日に臨んだ。

 実は雅子さんは「15日の後のことは、15日のことがうまくいくかどうかで考える」と話していた。ちゃんとできるかどうか自信がなかったようだ。だから、どこかに「15日で区切りを付けたい」という気持ちがあったのだろう。それが「相澤さんともお別れ」という言葉に表れている。

 しかし実際には、法廷で自ら意見を述べ、公の場で記者会見するという、ものすごく高いハードルを越えた。これは、報道を通して多くの人の理解を得ることにつながる。この体験が雅子さんの気持ちを支えているように思う。

─終わった後に、どうですか? 気分的には。

赤木 取材は受けてよかったなあってすごく思うし。

─見ててね、法廷での意見陳述すごかったですよ。

赤木 そうですか。

─本当に気持ちがこもってて。だから裁判官もちゃんと受けとめてくれたしね。その後の記者会見も完璧です。そういうふうにうまくいったっていう実感があるから、そのまますぐに、じゃあ17日は文化放送行って生出演しますとかね。初めてのことがトントントーンと続いたんですよ。

赤木 そうですねえ。不安でしたもん、ずっと。

─でも赤木さんのすごいところはね、不安だっていう割には一切練習はしなかった。

赤木 あ、練習はしてないですね。練習するとよくない、自分で言ってました。

─僕もそうだと思います。だから実をいうと、法廷での意見陳述はものすごく気持ちがこもってたんですが、記者会見で同じものを読んだ時は、ちょっと薄れてると感じたんです。

赤木 そう、なんかね、もうすごい(記者たちが)こっち向いてはるし、早く読み終わらな迷惑かけると思って急いで。

─感じるんですけど、前は上司のところに行ったり、どこかの取材を受けたりした直後にすとーんと落ちることがあったんだけど、7月に入ってからそれがないような気がするんです。

赤木 そうですね。落ちてないと思います。うん。

─もう嫌になったっていうような空気が全然ないんですよ。むしろ、次どうしようっていう、前向きのね。それってご自身では、何でそうなったと思います?

赤木 何なんでしょうかね。分からないですね。

─私が考えてた都合のいい答え。15日ですよ、やっぱり。裁判だけじゃないですよ?

赤木 何があったんですか、え?

─本が発売された。

赤木 あ! そうだ。本が出たからです。さすが。そうです、本が出たからです。

─今まで気分が落ち込む時も数々ありましたけども、4カ月の間にね。そういう時、どういうふうに気分転換をしてましたか?

赤木 友達と母に電話することです。あとお姉さん(兄の妻)と。今でも毎日してる。それが唯一の私の元気のもとかもしれない。

─そうやって支えてくれる人がいるっていうのが。

赤木 大きいですね。うれしいですねえ。ふふ。

応援が後押し

 提訴が宣戦布告≠ニすれば裁判開始は戦闘突入=B気分が高揚する時だ。でも人間ずうっと気分が高まったまんまとはいかない。

─あの時はちょっと落ち込んだなとか、自信なくしたなっていう時はありましたか。

赤木 それはもうたくさんあって。1日の中でもあるし…やっぱり夜になったら、雨が降ったりすると特に気分が落ち込みます。「こんなことしなきゃよかったかな」って思う時はいまだにあるし。

 「雨が降ったら」というのは理由がある。俊夫さんが亡くなって実家のある岡山県に親族の車で向かう時、豪雨が降っていた。雨が降るたび、あの時の気分を思い出すのだという。「夜」についてはこんな話もしてくれた。

赤木 夫の調子が悪くなってから、夜眠れなくなったんです。眠れない時はソファに座って、とにかくずっと、う〜ん、考えるのは、夫のこと思い出すことが多い。ベランダに向かって置いてるんですよ。

─それはもしかしたら、ソファからベランダを見ているというのは、その時に右手の方を見たくなかったということなんですか。(「右手の方」とは、俊夫さんが亡くなっていた居間の窓際のことを指している)

赤木 そうです。だから変えました。(ソファの)位置をね。

─やっぱり俊夫さんが亡くなっていた場所、あそこを…。

赤木 避けてる。うん、つらいですよ。

─初めてお部屋に訪れた時にびっくりしたんですよ。「ここで亡くなったんです」って言われて。居間だから。やっぱり嫌だったんだ。

赤木 うん、嫌ですね。

─今でも嫌ですか。

赤木 嫌ですね。

─そこを指さしてくださいって言って写真を撮る人間のことはどう思いました?

 この数日前、私は雅子さんにお願いして、その場所を指さしてもらって写真を撮っている。

赤木 いや、でもね、最初、警察の人がね。夫が亡くなったその日の夜に来てね、首はどっちに傾いていたとか全部やるんですよ。で、それを指さして写真撮られたんです。一番に。なので相澤さんに言われても、もう平気。ははは。

 会話の合間によく笑う雅子さん。本当は平気なはずはないが、逆にこちらを気遣っている。

─夜、眠れないという状況はいつごろから変わりましたか?

赤木 変わったのは確実に提訴するって決まって、今の先生(弁護士)に変わってからです。眠れるようになったんですよね。完全に。

 そして迎えた3月18日の「手記」公表と提訴。周りの人たちの励ましに支えられたという。

─近しい人たちにもギリギリまで伏せていたと思いますけど、提訴したことについてどのように言われましたか。

赤木 もうみんなすごく応援してくれて、とにかく体に気をつけて頑張りよってホントあったかいです、皆さん。親戚も友達も。

─誰かが言ってくれたことで覚えてることありますか。

赤木 兄はもともと(裁判に)反対してたんですよ。なのに「おまえがやるんやったら、困ったらいつでも(実家に)帰ってこいよ」って、「嫌なことがあったらわしが守ってやるからな」って言ってくれて。あんなに反対してたけど、今は賛成というか、いつも私の味方してくれてる気がする。

─提訴の日から記事がスタートしてるんですけど、当初は本名を出すのはためらうってことで仮名にしました。ただ仮名も「昌子」さんにしましたよね。同じ音で。あれはどういうふうにお感じになりました?

赤木 本当言うと、あの「まさこ」っていう同じ響きやから嫌だったんですけど、もうお任せ。

─あれは、俊夫さんが書き残したものを、そのまま使おうと思ったら「まさこ」じゃないとどうしても理屈が合わなくなるんで。

赤木 ああ、そうだ。それ、お姉さん(兄の妻)に言ったら、「じゃあマサエにしたらよかったのに」と言われた。

─それでね、しばらく「昌子」で続いたと思いますけど、4月末から本名にしたんですよ。あの時、本名にするっていう時の気持ちってどんな感じでしたか。

赤木 いや、あんまり違和感がないというか、響きも一緒やし。私は自分の名前が好きなので、親がつけてくれた名前なので、自分の名前のほうがいいなと思いました。

─3月の末から再調査の署名活動を始めて、ものすごい勢いで賛同者が集まったでしょう? それから応援のメッセージ、手紙やメールがいっぱい来ています。ああいうのも影響したんじゃないですか。

赤木 それもあります。(裁判が)怖かったんですけど、あんなに応援してもらえると思ってもいなかったので、応援してもらえて、それはすごい後押しになったと思います。もう、本名名乗ったほうがいいと思いました。

実家の支え

 赤木雅子さんの一番の支えになっているのは、岡山の実家で暮らす母親と兄の一家だ。赤木さん夫妻には子どもがいないが、子どもが好きで、兄夫婦の男の子3人、まだ子どもだった甥(おい)っ子たちをかわいがっていた。甥っ子たちは、俊夫さんが亡くなった後、雅子さんのことを気遣っていたという。

赤木 (俊夫さんが亡くなって)私が実家に帰ってる2カ月の間に、やっぱり荒れてたと思うんですよ。で、元気がなかったら、一番下の小学5年生だった子が「まあちゃん、こういう時はな、お笑い番組見たらいいんやで」って言って、番組を録画してくれて。で、その子は自分の見たい番組とかいっぱいあるじゃないですか。なのにね、部屋に連れていってくれて、それで一緒にお笑い、「千鳥が好きやろう」って言って、それをわざわざ録画してくれてて、一緒に見てくれたんですよ。

 お笑いコンビ、千鳥は、雅子さんの高校の後輩に当たる。そんな縁で好きなのだが、この話には続きがある。

赤木 そしたらね、真ん中の子がね、急になんか様子がおかしくなったんですよ。で、下の子に「もうちょっとその番組消せ」って大騒ぎになって。「ええじゃん、どしたん」とか言いながら見てたら、お笑いのそのネタに事故物件(室内で自殺者などが出た物件)の話があったんですよ。ほんならね、真ん中の子はすごい気つかう子やから、その事故物件のネタが出るの分かってたから、「もう消せ、消せ」って大騒ぎしてくれて。うん、優しいなあと思った。ははは。

 俊夫さんの葬儀では、甥っ子君たちも含め、実家のみんなが色紙に寄せ書きをして、ひつぎに入れたという。

─ご実家の家族全員ね、一度文春の記事に登場してもらってるんですけども、甥っ子君たちも3人、それぞれ思いを語ってもらいました。

赤木 あの書道のところの写真(甥っ子君の一人が俊夫さんに書道を習っている)を見て、「これは僕や」「これは僕や」って大騒ぎになって、親もどっちか分からんていう。ふふふふ。いまだに判明してないから。あと「僕のほうが大きい」とかね、写真の扱いが。


ロングインタビューの続きは大阪日日新聞のホームページをご覧ください。
https://www.nnn.co.jp/dainichi/

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