週刊大阪日日新聞

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2020/7/25

来夏は盛大に天神祭を 

大阪天満宮 寺井種治宮司インタビュー


てらい・たねはる
 1963年生まれ。追手門学院大・國學院大卒。明治神宮禰宜、大阪天満宮権宮司を経て2018年4月から大阪天満宮第58代宮司。大阪府神社庁理事。

 7月25日は、「天神祭」本宮祭。本来ならば、陸渡御、船渡御、奉納花火の目玉イベントが繰り広げられ、大阪の夏は最高潮に達するが、新型コロナウイルス感染拡大を受け、今夏は、神事のみの斎行となる。密集・密接の状態を防ぐため、大阪天満宮(大阪市北区)は、神事への参拝自粛も呼び掛けているが、神事の様子についてはインターネット配信する。来夏に向けた広報活動は欠かせないという判断からだ。「今年だからできることをしっかり取り組む」。大阪天満宮の寺井種治宮司(56)は、本紙インタビューにこう力説した。

禰宜が特別解説


▲昨年の船渡御と奉納花火

 インターネット配信は、神事本来の意味を知ってもらえるチャンスだと思っている。毎年、渡御行事や奉納花火がスポットライトを浴び、神事の内容はあまり伝わっていない。そこで、私たちは、一つ一つの意味や作法を詳しく紹介することにした。例えば、本殿の御扉(みとびら)を開けて神饌(しんせん)をお供えする様子を放映し、同時に、大阪天満宮祭儀部長の柳野等禰宜(ねぎ)が特別解説するなど、工夫を施す。本殿の神事は25日午後2時からライブ配信する予定だ。堂島川での鉾流(ほこながし)神事も編集して記録性の高い動画を後日配信する。

 天神祭はもともと、菅原道真公(845〜903年)の御霊(みたま)が、大阪天満宮に祀(まつ)られた翌々年の951年に始まった。 創始の趣旨は「疫病の退散・人々の安寧」の祈念だ。このため、今夏は特に新型コロナの終息を願い、神事に臨む。実際、新型コロナの感染拡大を機に、今年は疫病退散祈願のため参拝する方々がいらっしゃっている。

慚愧(ざんき)に堪えない


▲昨年の陸渡御の様子

 「天神祭の無い夏は考えられない」「寂しい」といった声を多く頂いた。しかし、天神祭の船渡御や奉納花火でにぎわう大川の両岸や橋の上には例年130万人が訪れるため、密集、密接の状態を避けるのは困難だ。新型コロナ感染を拡大させる危険性は極めて高いため、こうした行事の中止はやむを得ない。今年できない寂しさを、来年は爆発させたいと思う。

 天神祭は、大阪天満宮と氏子の絆だ。そして、経済効果が「二百数十億円」と言われ、恩恵を受ける人は多い。大阪の夏に無くてはならないが、千年余の天神祭史をひもとくと、渡御行事の中止と復活を繰り返してきた。

 幕末政変の1865〜70年の6年間「渡御は中絶」、79年は「祭礼中止(コレラ流行のため)」とある。日中戦争が勃発した翌年の1938年から「船渡御中止」は続き、復活したのは49年。「長年の空白による奉仕者の不慣れ・資材不足・地盤沈下などのため支障が続発」した結果、再び「船渡御中止」。53年に復活したが、「前年のオイルショックとそれに続く不況」を背景に74年も中止を決めた。

 オイルショックで中止した時、大阪商工会議所会頭だった故・佐伯勇さんが、大阪天満宮の境内に建立されている碑の句「船渡御へ 見せて浪速の 土性骨(どしょっぽね)」をタオルに織り込み、周囲に配ってくれた。そのおかげで、天神祭はこの時も復活したが、当時の第56代宮司だった伯父の寺井種茂氏は「天神祭中止について、慚愧(ざんき)に堪えない」と語っていた。まさか、私の代で渡御行事や奉納花火が中止になるとは…。伯父と同じ思いだ。

大阪湾へ、船渡御を


▲「船渡御へ 見せて浪速の 土性骨」と刻まれた句碑

 天神祭を守っていかなければいけない。一方で、その時代に応じて、やり方を変えていかなければいけない。東京五輪・パラリンピックは来年7月に延期されることが決まったが、開催時期が天神祭と重なるため、警備員の確保は来年の重要課題となる。高騰する警備費の一部を負担してもらうような行政補助があればと思う。政教分離の面で、補助を受けやすくするため、「天神祭渡御行事保存協賛会」を法人化するなど仕組み作りは必要だ。警備員をサポートするボランティアも増やしたい。

 2025年大阪・関西万博を念頭に、万博会場の夢洲(ゆめしま)がある大阪湾へ、船渡御を向かわすことはできないかと考えている。昔、船渡御は大川を下っていた。しかし、終戦を経て復活した際、地盤沈下によって橋桁が低下し、航行が困難になったため、川をさかのぼる現在の形になった。橋桁の問題などがクリアし、大阪湾に向かうことができれば、船渡御や奉納花火の観賞スペースは十分確保できる。

コロナ禍乗り越えて


▲昨年の鉾流神事の様子

 将来の天神祭のためにも、今年だからできることをしっかり取り組みたい。そのための神事のネット配信であり、広報活動だ。大阪天満宮には広報課があるが、これを宮司直轄の広報室に格上げし、体制を強化する。

 今年の渡御行事、奉納花火の中止は断腸の思いを禁じ得ないが、私たちは新型コロナ禍をどう乗り越えるかということを、試されているようにも思う。今夏は神事のみの斎行だが、意味のあるものにしなければいけない。天神祭を毎年楽しみにしてもらっている皆さんには、どうか心の中でお祈りをしていただきたい。

 来年は今年の分まで素晴らしい祭りにする。

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