週刊大阪日日新聞

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2020/7/11

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

3万人解雇より怖い 失業予備軍423万人 

休業者は再び仕事に戻れるのか?


▲雇用調整助成金の申請の仕方などを熱心に聴く中小企業の経営者ら

 コロナ禍に関連した正社員解雇や非正規社員雇い止めが全国で3万1710人に上っている(7月1日時点、厚労省調べ)。3万人と言われてもピンとこないが、6月当初の同じ統計が2万人だったことを考えると、この1カ月に急増したことになる。大阪は東京に次ぐ全国2位。最も多かった業種はホテルや旅館などの観光業で、次いで飲食業、バス・タクシーの運送業と続く。実はこの3万人よりも怖いのは、今なお休業状態にある「失業予備軍」だ。その数は423万人に上り、日本経済の危機がジワジワと広がっている。

働き方が変化。終息後も元には戻らない

氷山の一角

 雇用状況をみると関西では、製造業は中小企業が多くてピンチ。次いで飲食業とサービス業への影響が大きい。

 雇用状況はアベノミクス経済を掲げる安倍政権の生命線。内閣発足以来ずっと好調を維持し、コロナ直前まで人手不足が何かと話題だった。それが一転、人員過剰まで大きく逆振れし、同時に内閣支持率は急降下。それまでの「休みを増やそう」という『働き方改革』から「テレワークなど働き方自体を変える」ための『新しい生活様式』へと世の中自体が発想転換。ITのさらなる活用も急速に進み、単に「コロナが終息したら、世の中は元に戻る」という期待もむなしくなった。

 世界と比べると日本はどうだろう。米国の失業率が一時14%近くまで上昇したのに対し、日本の完全失業率や有効求人倍率はコロナ禍前後で、実はそれほど大きく変わっていない。この種明かしは、従業員を解雇せず給料を払っている企業に雇用調整助成金(雇調金)が支給されてるからだ。

 つまり、休ませているのに給料を払い、そのお金は国の雇調金で今のところ埋め合わせているわけだが、企業自体がコロナ前の経営状態に戻すことは難しい。現にステイホームが行われた時期を経て、女性は化粧品類を買わず、男性はお茶やジュースなどのドリンク類を買わなくなった。一方で男女を問わずマスク、体温計、消毒剤などの衛生用品は購入を増やしており、消費動向が以前と変化している。また、テレワークが普及し、自宅で仕事できる設備や低価格の戸建ても売れている。

 仕事のやり方から消費動向までを一変させたコロナ禍。そうなると休業状態の423万人の人々が本当に仕事に復帰できるかどうかは不透明だ。

製造業、飲食業の人は強い

 業種別に見てみよう。まず製造業で代表的な自動車業界だ。リーマン・ショック時に非正規の派遣労働者が次々と切られ、年の瀬には派遣村≠ェ出来た。今回はこうした労働者たちが、雇調金によって休業者にカウントされているから表面的には目立たない。しかし自動車業界は裾野が広い分、下請け業者の中には「これ以上、続いたら無理」と限界を感じる経営者もでてきている。

 飲食業では、「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービスが114店の閉鎖を発表。街の居酒屋もひっそりと閉店するなどの事態に。大手居酒屋チェーン「ワタミ」の渡邉美樹会長は、コロナ後の経営ポイントとして「ファミリー(家族連れ)、テーク・アウト(持ち帰り)、デリバリー(出前)」を挙げている。「もう従来型の居酒屋は無理」と表明したのに等しい。今後の外食産業はサクッと食べられる低額ランチ系とゆったり少人数の高額ディナー系に二極化し、中途半端では維持できない。働いている人は、想像よりずっと長くこの業界に留まるケースが多い。まず「まかない飯」があり食いはぐれがないこと、俗に言う客あしらいのノウハウさえ習得すれば、優秀人材は常に不足しているので他店でもすぐ雇ってもらえる。

サービス業は持給金で

 サービス業では、スポーツジムのインストラクターや接客を伴うナイトクラブのホステスなどが、店が閉じるとそのまま仕事を失うケースが目立つ。ホステスの場合、店の選別もシビアで「上客を持っている人は残す、ない人は切る」とはっきり。自営業扱いが多いので「持続化給付金」(持給金)100万円の対象にはなるが、三密が避けられず先行き不透明な業界だ。

 一方のインスタラクターは幾つかの仕事を掛け持ちしている人も多く、この場合個人事業主としての「事業所得」ではなく、「雑所得」や「給与所得」にしているケースも多い。コロナ発生当初は、持給金対象が「事業所得」に限られていたため困った人も多かったが、このほど条件変更され支給対象に組み入れられた。

非正規は弱い立場

 アパレルなどの衣料品業界と百貨店などの物販業界は密接な関係性がある。宣言後の営業自粛で百貨店休業が長引き、アパレルでは「レナウン」が民事再生法を申請。百貨店は大きく分け、大丸・松坂屋などのJフロントに代表される旧呉服屋系と、阪急・阪神百貨店のH2Oリテイリングなどの電鉄系に大別される。総じて電鉄系は沿線立地に特化して手堅いが、旧呉服屋系は経営統合を繰り返して合理化を進めたものの時代のニーズから取り残されつつある。しかも販売員は非正規やメーカーからの派遣などの女性が多く立場的に弱い。

 観光・レジャー業界は、ホテル・旅館が人件費と賃料など固定費の割合がもともと高く、頼みのインバウンド激減で体力を奪われるとたちまち資金繰りに窮してしまう。厚労省調査でも6月時点 で最多の5249人が解雇や雇い止めに遭っている。

 東京ディズニーランド(TDL)やユニバーサルスタジオジャパン(USJ)などの大規模レジャー施設はようやく再開したが、感染症対策で入場者数を抑え、消毒などで人手と経費が余分に掛かり収益は伸びない。カナダのパフォーマンス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」が全スタッフの95%に当たる3500人の正式解雇を発表、衝撃を呼んだ。日本のTDLなどは非正規スタッフが圧倒的に多いので目立たない雇い止めになり、「シルク・ドゥ・ソレイユ」のようにはすぐに解雇数には表れてこないだけに根は深い。

 複雑なのは運輸業だ。観光バスやタクシーの業界は、4月以降平均して売り上げは3分の1以下に急落。特にインバウンドに特化していた会社は即倒産も。こうした業界の運転手は解雇される一方で、物流を支えるトラック輸送業界は逆に取扱量が増え人手不足。比較的スムーズに、会社を変わってハンドルを握る人も多い。

コロナ前には戻らない

 今の不況が「いつ解決するか?」は、これから襲ってくるかも知れない第2波、第3波のコロナ再感染状況次第という向きもあるが、そもそもコロナ前の景気が良かったわけではない。ばらまきによって、かろうじて失業の波が覆い隠されているが、雇用崩壊が起きれば当然、収入がなくなり需要の落ち込みは全産業に派生していく。

 「コロナ前の状態には戻らない」と腹をくくり、企業や働き手ともに変化して、しぶとく生き抜いていく必要がある。

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