週刊大阪日日新聞

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2020/5/16

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

新型コロナ対策 賞賛される大阪モデル 

吉村知事の手法を検証

 政府の緊急事態宣言が解除されて1週間がたった大阪の街。府の1カ月半に及ぶ事業者への休業要請と、府民への自宅待機も解け、少しずつ活気が戻りつつある。その間、吉村洋文府知事(44)は独自の大阪モデルを打ち出し、全国の首長で最も評価され株を上げた。その知事の手法の裏側を検証してみたい。

 吉村知事は河内長野市出身。九州大を出て弁護士となり、2011年大阪維新の会から大阪市議に。14年には途中辞任して衆院選に転じ、比例で復活当選。翌15年には2度目の途中辞任で橋下徹氏の後継として大阪市長に転身した。19年には途中辞任で松井一郎氏と入れ替わる裏ワザで府知事になった。

 過去3度の公職の座を党決定ですべて途中辞任し次のステージに挑戦して勝利。「民主主義は選挙結果がすべて」の橋下イズムを真正面から受け継いだナンバーワン後継者といえる。

「大阪モデル」手法の裏側は!?

若手経営者を応援

 政府の緊急事態宣言とは別に、独自の大阪モデルで自粛要請を解除する出口≠定め、通天閣や太陽の塔をライトアップする信号方式を採用した吉村知事。一方で、ウイルスの第2波、第3波が襲来したときの再自粛要請の数値を入り口≠ニして用意。その周到さは実に分かりやすくて見事。「ウイルスゼロはあり得ないが、経済を回さないとそっちで死人が出る」の言葉にも説得力がある。

 この取り組みの背景にあったのは、維新の熱心な支援者が多い若手経営者への配慮だ。このやり手の若手経営者たちは経営基盤がもろく、コロナ禍には想定外に弱かった。

 早く地域経済を回さないと彼らが干上がってしまう―。5月23日には突然、知事会見抜きで「大阪モデルの一部修正」が発表された。従来型の基準数値ではせっかく灯り続けた青信号が24日に黄信号になることが確実視されたからだ。

賞賛される情報公開

 コロナ禍に対する吉村知事の手法を検証してみよう。大阪の国内総生産(GDP)は7・1%で、京都・兵庫を加えた3府県12・8%の大部分を占める。コロナ対策費には、府のへそくり(財政調整基金)が約1200億円も使えるし資金に余裕もある。官僚出身の京都・兵庫の両知事はカリスマ性で吉村知事には到底及ばず、経済と人の流れでも大阪モデル≠ノ追随するしかない。府内の首長の大半は維新が握っており、知事の大号令に異を唱える者もほとんどいない。

 感染のまん延を防止するために吉村知事は、独自判断で名前の公表にも踏み切った。府内最初の感染者情報を皮切りに、クラスターが発生したライブハウス、厚労省内部の公文書、自粛要請を無視したパチンコ店など相次いで情報を開示。「責任は自分が取る。府民に隠し事をしない」という姿勢は胆力を感じさせ、全国でも賞賛が広まった。

 根底には維新独自の「地方自治体への権限と財源の委譲」の促進と、「国が宣言¥oすなら自粛ではなく規制であるべき。それには休業補償と違反罰則がセットで」といった支配強化思想がある。一時、問題になった検察庁法改正案にしても「公職で一番偉いのは選挙で選ばれた者」という思想から「検察を暴走させないために、内閣による人事関与はある程度必要」と三権分立そのものに懐疑的な考えを示している。

観光崩壊 どうする?


▲新型コロナウイルスの感染拡大防止に伴い、府独自の解除基準内を示す緑色のライトアップを続ける通天閣(大阪市浪速区)

 「大阪は商人の街。コロナ時代の新たなビジネスモデルを示してもらいたい」とエールを贈る安倍総理。浪速っ子はもともと機を見るに敏。既存スタイルに捉われない特性があり、引くのも攻めるのも素早い。

 国の宣言と府の自粛が解除されても、コロナウイルスが全くなくなるわけではない。結局、コロナ対策の入り口であるワクチンと、出口の治療薬が安定供給されるまで「手洗い、マスク、3密回避」などの地道な生活習慣を続けるしかなく、地域経済の低迷は長引く。

 知事のアキレスけんになりかねないのはインバウンド観光の急落だ。韓国や中国などからの来訪者でにぎわっていた道頓堀などの府内観光地は現在、コロナの影響で閑散としている。25年の大阪・関西万博、27年のIR開業にはインバウンド復活は絶対条件だが、このままでは会場となる夢洲(ゆめしま)の開発にも危険信号が灯りかねない。知事は「USJや海遊館などの早期再開も促す。まずはインバウンドより府内や近隣からの内需拡大を」と将来像に言葉を濁している。

 インバウンドをアテにして増え続けた飲食店や遊興施設はすでに、コロナ禍で立ち直れないところも出ている。

府民の命を守れるか

 府民にとって今後、気になるのは再び感染が拡大した時の医療体制だ。府市一体となって医療システムをバックアップする「フォローアップセンター」を設立。病院内のクラスター感染阻止のため、松井一郎市長が十三市民病院をコロナ専門病院に緊急指定するなど維新はここでも打つ手が早かった。

 ただし、橋下時代の維新政治が「二重行政解消」をうたい文句に、府市の公立病院統合でベッド数を減らし、保健所を削減したのも事実だ。過去にクラスター(感染者集団)が出た業種として、最後まで解除されなかったライブハウス、カラオケ、スポーツクラブ、接待を伴う夜の飲食店なども、府から明確な感染予防基準はいまだ示されず業界は戸惑う。

 知事は「今後はクラスターを起こさないことに全力を」と話し、大阪モデル維持で感染爆発を阻止し、感染者数を増やさないことが政策基準なのだ。

 それなら宣言解除以来、利用者が急増する朝夕の電車ラッシュ時の3密状態も最優先課題のはずだが、抜本的な知事提案はいまだ聞こえてこない。

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