週刊大阪日日新聞

大阪市(北・都島・城東・旭・鶴見区)・守口市・門真市
(社)日本ABC協会加盟紙 251,012部

2020/5/16

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

「学校9月入学制」を考える 長引く休校≠ェ生み出した議論

「受験生・就活生ファースト」の判断を

 コロナ禍で休校が続いていた大阪の現役高校3年生女子3人が「日本の全ての学校の入学時期を4月から9月へ!」とネット上で署名活動を呼び掛けたことで、国会で議論が始まった。9月入学制は世界の半数以上116カ国で実施されている超多数派。呼び掛けたメンバーは「来春受験を控えた当事者が声を上げないと何も変わらない」と切実。署名は5月に入って2万人を超え、文科省に提出された。9月新学期制を考えてみよう。


▲2月上旬の私立高校入試の風景。マスク着用のまま試験に臨んだ生徒たち

感染爆発の遺産≠ニして

3カ月休校中の非常事態

 一般社会では、政府が緊急事態宣言を出した4月からコロナ禍が日本全土を覆ったイメージが強いが、学校現場は学年末を控えた3月上旬から休んでいる。春休みをまたいで4月新年度に入り、全国的なばらつきはあるが5月いっぱいまで授業が全くない学校も多数出ている。ネット端末を使った「オンライン授業」が代替案として浮上しているが、全国平均すれば対応できるのは5%のみ。卒業式や入学式含めた前学年からの総括すらできないままの子どもたちもいるのだ。

 遅れた授業を取り返す方策として「夏休み短縮、あるいは返上」「土日授業」「修学旅行などの学校行事取りやめ」「平日の授業時間積み増し」などが論議されているが、これらの手段を取っても6月中旬正常化がギリギリのタイムリミット。コロナ感染自体が夏休み前に収束する保証は十分でない。さらに、秋以降にコロナ第2波が襲ってきたら再び分散登校や時差授業を余儀なくされ、来春の学年末までに規定されたカリキュラムを履修し切れない学校が出る恐れがある。高校や大学の受験時に「習っていない範囲から出題された」という、あってはならない教育格差が生じる危険性すらある。大人が知らないうちに、教育現場はここまで追い込まれているのだ。

知事や中高齢者に賛成者多数

 9月入学は世界標準だけでなく、日本も明治時代初期は9月だった。それが国の会計年度に合せる形で現行に変更された。

 全国知事会での論議でも、大阪・吉村、東京・小池、宮城・村井ら先進派といわれる知事を中心に賛成者が多い。逆に元官僚の知事からは「コロナ対策に集中しろ」「どさくさにコロナに絡めるな」との強い反対意見もありまとまっていない。メディアなどのアンケートでは当事者世代、つまり10代では反対が大半で、逆に50歳以上の祖父・祖母世代では支持が逆転し、国論も2分されている。

 国会で質問された安倍首相は、自身もかつて9月入学制を模索した経緯もあり「検討する」というニュアンスより少し前向きな「前広に…」という官僚用語を使った。しかし霞ヶ関官僚は、総反対の様相。当事者の文科省は「小学校から大学まですべてに関わり、準備期間が全くない。実現しても来秋」と及び腰。以下「保育園に影響」(厚労省)、「新卒採用に影響」(経産省)、「会計年度とズレる」(財務省)と、知事らからの逆提案に不快感を隠さない。

安倍政権レガシーに

 9月入学制は、アジア各国のトップ大学とグローバル競争にさらされた東京大が8年前に提案したが、文科省に受け入れられなかった。

 コロナ禍に振り回されている各省庁官僚は「これ以上、仕事を増やすな!」と迷惑顔。しかし、彼らは政治家が「やるぞ!」と制度を法令で決めれば、それに向かって一気に動く。

 今からでは丸3か月しかないから時間は全く足りない。しかし、スタート時は70〜80%と準備不足でも来夏が学年末となればまだ1年以上ある。安倍内閣としても、不人気な「憲法改正」よりよほどレガシー(遺産)として、こちらの方が国民に支持されやすい。

 卒業式も入学式もないまま自宅学習を強いられる小・中・高・大の新1年生は多数。次々中止になっている部活動の各種大会やイベントも実施余地が生まれる。何より学習不足のままでの来春卒業で受験や就職に不安が広がる小6年生、中・高3年生、大学4年生の身になって考える視点こそ大切だ。

「9月入学制」のメリット

@休校措置の遅れを1年掛けて取り戻せる(仮にコロナ第2波がきても来夏卒業まで時間的余裕が生まれ、教育格差は生じない)

A海外と留学生のやりとりがしやすい(送り出しはもちろん、少子高齢化日本では外国からの受け入れ人材は大切)

B入試時期の雪害やインフルエンザ禍を防げる(猛暑受験への新対策は必要)

C大学のような前後期制になり、中高でも単位制による再履修方式でしっかり学習する「習得主義」への変更可能に(現在、中高で主流の平均点方式「学年主義」では、苦手科目が放置されがち)

「9月入学制」のデメリット

@ 就職活動に影響(諸外国のように通年採用への移行も視野に。仮に8月卒業なら、前年夏にエントリーし受験。春内定を経て、その会社で研修バイトなどをし9月正式入社)

A各種国家試験時期に影響(既にコロナ禍で今年予定はグチャグチャ)

B私大などで授業料が半年入らないと経営危機に(私学助成金などで個別手当必要)

C会計年度と異なり、同じ公務員間で教員職と一般職の異動時期がズレる(学年途中での教員異動も出るが、一般職では珍しい事ではない)

D高校野球やインターハイなど部活動に支障(夏の甲子園大会などが消滅危機。春か秋に開催時期変更必要)

E来春、小学校新入生が約1.5倍近くになり教員と施設がパンク(一挙に1.5倍とせず、1年に1か月ずつズラして入学させ、5か月分の新入生を満5年で吸収する過渡期を設ける)

■熊本豪雨被害に危機感 コロナ3密回避をセット 大阪の避難所運営は?

■災害時に 求められる迅速さ 水都大阪の水害に危機感 新型コロナには特別な対応

■重症コロナの臨時施設 来年1月までに60床

■大阪城トライアスロン 10月開催 安心・安全な運営を模索

■中小企業の販路開拓 大商が応援サイト新設

■天神祭の神事 ネット配信 来夏に向け広報活動強化

■泉佐野市の逆転勝訴 「ふるさと納税」除外取り消し

■「感染防止宣言ステッカー」発行 ガイドライン順守

■名称は「大阪公立大学」 府立、市立大統合の新大学

■府市統合の新大学「大阪公立大」 強み生かす知の拠点。25年にメインキャンパス

■「大阪信愛」入学金なし コロナによる家計ピンチに

■大阪発 ザ・論点 国はコロナで「力」使い果たすな

■注目度高まる吉村知事 新型コロナ対策で矢継ぎ早の対策

■売上急減の事業者に家賃6カ月分を給付 2次補正予算成立

■“DiDi Food”が大阪上陸 「コロナに負けない!」飲食店の強い味方

■都構想制度案可決 本質反映、胸張る 二重行政解消、役割分担を明確化

■門真の人たちをひとつに─ 折り鶴12万羽プロジェクト

■大阪へ「いらっしゃ〜い」 府内宿泊 2500円還元 観光業支援キャンペーン

■大阪マラソン中止 3密対策見通せず

■世界環境デー in 大阪 極意論スペシャル 参加者募集

■抗体保有率 大阪0・17%どまり

■「づぼらや」閉店へ 通天閣社長「相方失ったような気持ち」

■都構想の実相 議論深めて 甲南大学名誉教授、高寄さん地方自治本出版


pagetop