週刊大阪日日新聞

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2020/4/11

介護職の魅力発信 働きがいある職場とは

慶生会とオールケアライフ 事業者7割が人材不足感


▲利用者(左)と話をする介護職員の男性(慶生会提供)

キャリアアップ支援や経営理念で働きがい

 日本国民のおよそ5人に1人が後期高齢者(75歳以上)の「超高齢社会」を迎えるといわれる2025年、厚生労働省の都道府県別調査では、大阪府は約3万4千人の介護人材不足が生じる見通しだ。超高齢社会を支える介護、福祉人材の確保と定着が急務となる中、府は若者を主なターゲットにした介護職の魅力発信や事業者支援に力を注ぐ。民間の介護、福祉事業者は、経営理念の浸透を図りながら職員のキャリアアップ支援などの充実を進め、働きがいを感じられる職場づくりに努めている。


▲社会福祉法人「慶生会」の特別養護老人ホーム=大阪市生野区

 介護労働安定センター大阪支部が府内の896事業所を対象に実施した2018年度の介護労働実態調査によると、従業員の過不足では「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせると、68・2%が不足と感じている状態だった。採用が困難な理由(複数回答)には、「同業他社との人材獲得競争の激しさ」「他産業に比べ労働条件などが良くない」などの回答が、それぞれ約5割に上っていた。

 17年10月〜18年9月の正規、非正規合わせた介護職員のうち、在籍者に占める採用者の割合を示す採用率は21・3%と全国平均(18・7%)より高いものの、離職者の割合を示す離職率は16・2%で全国平均(15・4%)を上回っている。実態調査をみると、人材定着が課題となっているのが浮かび上がってくる。

■一人一人の成長

 「自己研さんする人を応援したい」―。大阪市内を中心に介護事業などを展開する社会福祉法人「慶生会」(管理本部・大阪市生野区)。同本部の太田高貴次長(38)は、法人の理念をこう説明する。

 慶生会は特別養護老人ホームをはじめ、通所サービスや訪問サービスなどを幅広く展開。事務職などを含めた全従業員は約千人に上る。このうち6割以上の従業員が、介護現場で利用者と接している介護職員たちだ。10代後半から70代の職員が、利用者の日々の生活を懸命にサポートしている。

 仕事の内容から不規則な勤務になりがちで、体力が必要とされるシフト制や利用者が認知症の場合には特にきめ細かい対応が必要になるなど、決して楽な仕事ではない。


▲重度の障害がある利用者と楽しく会話する介護職員=オールケアライフが指定管理を行っている門真市障がい者福祉センター

 「3K」「4K」。きつい、汚い、危険、さらに給料が安い。こう呼ばれることもある介護業界は、世間からマイナスイメージで見られることも少なくない。そんな風潮に太田次長は「過去の業界はそうだったが、変わってきている」と力を込める。

 慶生会では、新人職員を先輩がマンツーマンで指導。技術、メンタルの両面を支える。さらに、看護師や作業療法士などさまざまな資格取得を目指す職員が、通信講座や専門学校で学ぶ際の奨学金制度を設けている。

 将来のキャリアアップを考えた仕事やプランも用意しており、本人の希望や適性に沿ったキャリアアップが可能という。職員一人一人の成長を支えることが、結果として法人の成長につながるとの考えからだ。

 太田次長は介護業界を目指す人に向け、「(利用者から)ダイレクトに『ありがとう』と感謝され、関係性ができたときも『やっていて良かった』と思える。介護に興味を持ち、施設に足を運んで知ることから始めてほしい」と話す。

■「人の役に立つ」

 重症心身障害児(者)を対象にした通所施設や居宅介護などを行う民間の障害福祉事業者「オールケアライフ」(本社・守口市)には、グループ会社も含めて介護福祉士や看護師、保育士など468人(19年9月1日時点)が在籍する。本年度のグループ全体の離職率は10%と、府の平均を大きく下回る。

 事業を続ける上でマンパワーは欠かせない。人材定着を図る 鍵は、経営理念を隅々まで浸透させて職員のやりがいを引き出すことだという。鎌倉義雄社長(56)は、働く人の心を支える経営理念の大切さを説く。

 グループは「多くの人々のお役に立つ」「人格の向上」の二つの大きな理念の下、リーダー育成と職員の輝く場所づくりに力を注ぐ。

 職員は、介護や介助を通じて「利用者の人生をつくり上げる応援をする」という考えで業務に当たるように努めるが、相対するのは人間でもあり接する中で落ち込む時もある。鎌倉社長はその際のリーダーの対応を重視する。


▲理念が職員の精神的な支柱になると語るオールケアライフの鎌倉社長

 「利用者を気に掛けるのは担当職員であり、上司はその職員を気に掛けないといけない」。退職者が出ると、施設の責任者の対応がどうだったのか検証する。

 施設単位で週1回程度、役員や現場責任者らリーダーが集まる会議などを行い、「人の役に立つ」経営理念に立ちながら部下が輝ける方法≠考える。こうした積み重ねで、個々の職員が働きやすい環境づくりを進め、利用者のサービス向上につなげている。

■可能性を引き出す

 理念に沿った「人格向上」に努める職員には、キャリアアップを目指す者も多く支援も手厚い。 福祉職採用で入社した職員が看護師資格の取得を希望する場合、給与とともに看護学校の学費も全額会社が負担する。支援を受けてこれまでに4人が看護師資格を取得し、2人が今春から看護学校で学ぶ。

 体力的に介護の仕事が難しくなったり、介護以外の分野に興味を持ったりする職員もいるが、離職せずに引き続き働ける場をつくる事業が「GOGOプロジェクト」だ。医療的ケアや重度障害に対応する相談支援事業を皮切りに、農業やコンサルティング業など職員のやりたいことを後押しする。

 鎌倉社長は「人対人の仕事を通じて職員が人間的に成長し、多くの人のお役に立っている」と話す。介護業界のイメージを覆し、働きがいのある分野にと挑戦を続けている。

大阪府 介護人材確保の取り組み
若者向けに積極PR

 大阪府は、増え続ける介護需要に対応するため、2017年に「介護・福祉人材確保戦略」を策定し、新規就業者の参入促進▽定着のための労働環境・処遇の改善▽介護・福祉人材の資質向上―に取り組んでいる。

 人材確保に向け、若者をターゲットにしたPRを積極的に行っている。前年度は、動画サイト「ユーチューブ」に介護の仕事の魅力を伝えるチャンネルを開設。高校生が介護福祉士との出会いを通じ、介護の道を志す物語仕立ての動画を公開した。3月17日現在、再生回数は約15万回と上々の反応だ。

 本年度はデジタルブックを制作。チラシのQRコードをスマートフォンで読み取ると、介護職についてイラスト付きで分かりやすく解説した画面を見ることができる。

 人材定着に向け、職員のスキルアップに取り組む事業者支援も進めている。17年度から、介護福祉士の受験に必要な実務者研修を職員が受ける場合、受講期間中に雇う代替職員の人件費の一部補助を実施。来年度は、介護福祉士の資格取得にかかる初任者、実務者研修の受講費を負担する事業者に対し、費用の一部を補助する方針だ。

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