週刊大阪日日新聞

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2020/3/28

特集 橋下教育改革10年目の検証 

大阪府公立トップ10校の今
〜校長インタビューリレー〜

 グローバル社会をリードする人材の育成を掲げ、橋下徹知事(当時)の教育改革の一環として大阪府立高に導入された専門学科「文理学科」と「グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)」は、2020年度で10年目に入る。文理学科を開設、GLHS指定を受け、躍進を続けるトップ10校の校長に成果や課題を聞く。

大阪府立天王寺高校 吉岡 宏校長

仲間を応援し合う精神が生徒の無限の可能性を引き出す

 ―天王寺高の教育方針は。

 「『授業第一主義』『鍛錬主義』『本物志向』を三本柱に、大阪を代表する学校として、世界に羽ばたく人材を育てる全人教育を目指している。大学合格はゴールではなく、社会に貢献する力をつけるための通過点。チーム天王寺≠合言葉に、教員が、生徒が、一体となって授業、行事に全力で取り組んでいる。天高で培った仲間との絆は一生の財産」

 ―特徴とする学習は。

 「45分間の授業で1日7限。年間35単位の教育課程を実施し、府立でも最多クラスの授業日数をこなす。45分間だが50分の授業内容に匹敵し、集中力が要求される密度の濃い授業を実現している。授業第一主義は生徒が授業を大切にするだけでなく、日本一の授業が受けられる学校を目指す指導側の決意と覚悟でもある。効率的に正解を求める力をつけることではなく、本来の人格形成を私たちの授業は目指している」

 ―天王寺高の強みは。

 「柱の一つである『鍛錬主義』。水泳訓練や林間学校など、力を合わせて限界に挑戦する行事を通して仲間の意味を知る。応援に駆け付ける卒業生の姿を見て時を超えた絆を知る。この人を結ぶ力こそが天高の強み。そして、互いの個性を尊重し、全力で頑張る仲間を応援し合う精神が、生徒の無限の可能性を引き出す」

 ―文理学科10年が経過し、生徒に変化は。

 「学校が目指す『自ら考え行動する力をつける教育』がSSH(スーパーサイエンスハイスクール)や文理学科の取り組みと結びつき、大学入試だけが目標ではなく、もっと自由に可能性を試す行動につながった。科学オリンピックや学会など校内外の行事に積極的に挑戦する生徒が多い。夢中になって取り組むことが生徒を成長させている」

 ―より高めていくために。

 「国が進める教育改革は、天高が既に取り組んできたこと。さらなる高みを目指したい。そのためには授業の質を一層高める必要がある。これからも、自ら考える探究的な学びを学校の柱に据え、変化する時代に対応できる人材を育てていく。世界と渡り合うためには、本物の思考を育てる授業、考える授業を確立していかなければならない。このことが先生たちの中にも明確に意識化されている」

 ―中学生にメッセージを。

 「全力で頑張ることがかっこいい学校。互いを尊重できる仲間との出会いが待っている。ここはゴールではない。大学もゴールではない。将来社会に貢献できる人間を目指し、チーム天王寺の一員になってほしい」


▲全人教育を目指している天王寺高校

 大阪市阿倍野区三明町。1896(明治29)年創立。SSHや科学技術人材育成重点枠の指定を受け、米国海外研修や専門性の高い理数教育などを柱に、将来の国際社会をリードする人材育成に取り組む。2016年度入学選抜から普通科を廃止し、文理学科のみの募集となった。


大阪府立三国丘高校 浜崎年久校長

生徒自ら学ぶ姿勢や高い理想を抱く学校を目指す

 ―教育理念や目指す学校像は?

 「伝統として受け継いできた文武両道・自主自立・切磋琢磨(せっさたくま)の三丘(さんきゅう)スピリット≠育み、次世代をけん引する真のグローバルリーダー育成を心掛けている。グローバルリーダーズハイスクール(GLHS)に指定されていることを念頭に、自ら学ぶ姿勢や高い理想を生徒が抱くような、国際感覚の醸成を意識した学校であることを目指している」

 ―文理学科が設置10年目を迎える。

 「学区の撤廃もあり、本校に魅力を感じて入学を選ぶ生徒が府内全域から集まっている。生徒一人一人の可能性を高めるため、教員の意識も向上した。進学を考えた勉強だけでなく、部活動や学校行事など何事にも一生懸命に取り組む生徒ばかりで、とにかく学校生活を楽しんでいる印象だ」

 ―独自に取り組む特徴的な学習は。

 「机上の勉強だけでなく、実際に肌で感じる体感学習を重視している。2014年から5年間の指定を受けたスーパーグローバルハイスクール(SGH)の成果を踏まえ、引き続き本校独自に『スーパーグローバルプログラム(SGP)』を実践。米国やフィリピンなどを訪ね、語学だけでなくビジネスプラン作成の研修や現地の人との交流を通し、総合的な問題解決力を伸ばすことにつなげている。総合学習の一環として行う『三丘セミナー』では、卒業生を含む大学関係者から最先端の研究内容や詳しい専門分野を紹介してもらい、生徒の選択肢を広げることに一役買っている」

 ―取り組みの成果は。

 「文科省から指定を受けるスーパーサイエンスハイスクール(SSH)の取り組みでは、卒業生で宇宙飛行士の土井隆雄さんとの縁もあり、NASA(米国航空宇宙局)への研修を実施している。魅力を感じて実際に参加した生徒の一人は、その後の進路に大きく生かした。そんな生徒が増えている」

 ―GLHS指定校として、どう力を入れる。

 「基礎レベルより一歩進んだ学力の養成と、バランスの取れた人間力の育成に力を入れたい。そのために、生徒が自ら探究する課題研究がより活発になっていくような環境をつくり上げていく」

 ―入学を目指す中学生に一言。

 「主体的な学習力やコミュニケーション力、周りに気を配り支える心など、グローバルリーダーとして必要な能力を一緒に培っていきましょう」


▲三丘スピリット≠受け継ぐ三国丘高

 堺市堺区南三国ケ丘町2丁目。1895(明治28)年創立。近くには世界文化遺産に登録された「百舌鳥・古市(もず・ふるいち)古墳群」があり、悠久の歴史と文化を感じさせる。授業内容の充実と授業時間の確保のため50分授業(週35単位)を実施。科学の体感学習を重視した理系カリキュラムに取り組むSSHにも指定されている。2018年度入学者選抜から、文理学科のみの募集となった。


大阪府立大手前高校 松田正也校長

つまずきや気付きを通じて成長し社会に羽ばたいてほしい

 ―大手前高の特徴は。

 「校歌にも入っている『つよき信念(まこと)、たかき理想(のぞみ)』の言葉を大切にしている。創立134年の伝統校で、しっかりと意志を持って将来を切り開く子どもを育てている」

 「もともと理数科があった時代があり、2008年にスーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定された。数学科学に特化した取り組みを続け、さらに文理学科に応用して発展させている。毎年夏に本校主催で行う全国高校生数学研究発表会(マスフェスタ)は、全国の数学研究の成果が集う一大イベントとして続いている」

 「英語の4技能の育成など国際教育にも注力している。イギリス、オーストラリアなどの4、5カ国の海外研修は生徒から人気があり、毎年全学年の約180人が参加している」

 「クラス替えは1年生の終わりと2年生前期が終わった時に行うのも特徴的で、文系・理系のミスマッチを少なくしている。定時制があるので午後5時50分には完全下校するなど時間にシビア。生徒は目的意識が高く、上手に時間を使える集中力も育む」

 ―GLHS(グローバルリーダーズハイスクール)事業の主な取り組みは。

 「1年〜3年の前期にそれぞれのテーマを設定し、少人数で追求する『課題研究』が大きな取り組み。小・中学校までは調べ学習が中心だが、高校では『研究』に変わる。大手前高では大阪大の教授の指導を受けるなど、研究方法の基礎知識、論文の組み立て方などを大学より早くから学ぶことができる」

 「12月の2日間のキャリアセミナーは、パイロット、アナウンサー、医師、研究者など多彩な職種の卒業生約70人が在校生にアドバイスをしてくれる機会となる。職場見学もでき、学習意欲の向上や進路選択に生かされている」

 ―GLHSの成果は。

 「卒業生徒の大学進学先で高い学習意欲や熱心さが教授から褒められることが多々ある。大学で花開く生徒も多く、自主性が高くて研究リーダーになるタイプの人も多い。これが成果と言えると思う。これから社会で活躍する卒業生がどんどん出てくると楽しみにしている」

 ―中学生へのメッセージを。

 「勉強の楽しさを感じてもらいたい。授業は簡単ではないが、大手前だからこそできる経験がたくさんある。在学生の口癖も『やることが多くて大変。でも楽しい』。つまずきや気付きはむしろ多くあってほしい。大手前でたくましい生徒が育ち、社会に羽ばたいてくれることを願っている」


▲将来を切り開く人材を育む大手前高=大阪市中央区大手前2丁目

 大阪市中央区大手前2丁目。1886年(明治19)年創立。全日制と定時制課程がある。2学期制で、65分5時間授業。2011年にGLHS指定され、18年度入学生から文理学科のみ9クラスとなった。体育祭、コーラス大会、文化祭(青桐祭)、球技大会、恒例の「大阪城ランニング」などの行事も盛んで、加入率98%の部活動などで心身を鍛える。生徒の自治会活動、同窓会「金蘭会」の支援も活発に行われる。


大阪府立高津高校 山崎晃昭校長

校内外を問わない学びの環境を積極的に提供していきたい

 ―高津高の教育方針は。

 「昨年度、創立100周年を迎えた。『自由と創造』『日新日進』の校風・校是のもと、生徒たちは少々失敗してもへこたれず、自由にどんなことにでもチャレンジしている。GLHS(グローバルリーダーズハイスクール)の取り組みを生かし、机の上の勉強だけでなく、『課題研究』や校外での『創造探究事業』に積極的に取り組んでいる」

 ―特徴的な学習は。

 「まず、『体験型進路学習』。1年生はグループに分かれて職場訪問によるインタビューを行い、職業観を育成する。訪問で得たことをパワーポイントにまとめ、クラスや学年全体で発表会を開く。2年生もグループに分かれて大学の研究室を訪問し、各学問分野について体験的に学ぶ。学んだ内容をまとめてポスターを作成し、ポスターセッションを行う。どちらも、プレゼンテーション能力を高める取り組みにもなっている」

 「課題研究は、生徒の自主性や意欲を尊重し、生徒自身が自由にテーマを設定して取り組んでいる。創造探究事業は、土日や長期休みを利用してさまざまな大学や研究機関、企業の見学会や体験授業・実習に参加している。校内の勉強には限りがあるので、最先端の科学の一端 を学ぶなど、校外の力も利用している」

 ―文理学科が10年目に入る。

 「10年前は課題研究に対して生徒や教諭が手探り状態だったが、生徒側も教員側もノウハウが積み重なり、方法や発表の質も相乗的に高くなってきた。変化の激しい社会を生き抜く中で、なぜこの課題研究の学習が必要なのか、生徒たちも分かっている。全クラスが文理学科になり、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)の取り組みも相まって、課題研究のような探究的な取り組みはますます重要となってきている。課題研究などを通して生徒たちが常に高い志を持つような指導を心掛けている」

 ―今後、力を入れていくことは。

 「今まで通り、授業・講習が学校の中心であることに変わりはない。さらに主体的・対話的で深い学びとなるよう、授業を深化させていく。社会貢献につながる力を備えるため、校内外を問わない学びを与える環境も積極的に提供していきたい」

 ―中学生に向けて。

 「とにかく前向きに積極的にいろんなことにチャレンジする。少々失敗してもへこたれずに挑戦する。さまざまなことに興味関心がある。そんな子どもたちに高津高に来てもらい、お互いに切磋琢磨(せっさたくま)して、さらに個性を膨らませてもらいたい」


▲高い志を持つ生徒の育成に努める高津高=大阪市天王寺区餌差町

 大阪市天王寺区餌差町。1918(大正7)年創立。大阪の繁栄の礎を築いたとされる高津宮跡に立つ。部活動にも活発に取り組み、知・徳・体のバランスの取れた人材を輩出。SSHの指定も受け、将来の日本の科学技術を担う研究者の育成に取り組む。2018年度入学選抜から、文理学科のみの募集となった。

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