週刊大阪日日新聞

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2019/12/28

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

大阪都構想住民投票 今秋にも2回目

2度目の正直!?

 大阪維新の会が政策の1丁目1番地≠ニ位置付ける『大阪都構想』の是非を決める2回目の大阪市民対象の「住民投票」が2020年秋から冬の時期に実施されるのが確実となった。維新の会は、府知事・大阪市長のトップに加え両議会で多数派を握り、反対派だった公明党も都構想賛成に転じ、既に投票の行方は決したようにも見える。市制施行130年の歴史を誇った大阪市は、維新の思惑通り大阪・関西万博開幕直前の2025年1月1日に消滅するのか?

「勝てば官軍」大阪維新


▲法定協議会の後、記者の質問に答える松井市長(手前)と吉村知事(その右隣)=2019年12月10日、府庁舎

 政治の世界は「弱肉強食」「勝てば官軍」の分かりやすい世界だ。国政選挙での、死票の多い小選挙区や大きすぎるし拘束名簿などがあり分かりにくい比例代表選挙はともかく、地方首長や中選挙区の府議・政令指定都市(大阪府内では大阪市と堺市)議選は住民の意思が比較的反映されやすい。

 19年4月の統一地方選で、当時の松井一郎府知事と吉村洋文市長はそれぞれの地位を捨て、ポスト交換して立候補する選挙史上まれに見る奇策≠用いて、府議・3市議を併せた五重選挙すべてに勝利した。「何と言われようが勝てばいい」。つまり維新の候補者は覚悟≠フ度合いが他党とは違う。その勢いに恐れをなしたのが公明党。「勝ち馬に乗る」のが基本的政治スタンスの同党がよく引用する「民意は示された」との総括で一夜にして立場を一転させた。それでも自民や共産の反対派にとっても黙るしかないのは、冷徹な選挙結果ゆえだ。

公約は「再び住民投票」

 そもそも「住民投票で一度出た結果を、再度投票で覆すことが可能か?」と言う議論は今や維新の前には成り立たない。松井、吉村両氏はかねがね再投票を最大の公約に掲げて、立候補し当選しているのだから「それが民意」ということだ。英国でEU離脱の是非を問うて解散総選挙し、与党保守党が大勝利し議論に終止符を打ったのと似ている。

 大阪維新の会は、2015年の最初の「都構想住民投票」で反対50・4%、賛成49・6%とわずか1万票余り(0・8%)差で敗北した痛み≠ェ、今日の戦闘力のバネとなっている。その手痛い敗北で、党の顔だった橋下徹氏の引責引退という形で大きな持ち駒を失った。しかし、かつて各地各選挙でブームを呼んでは消えていった一過性の新党と異なり、府内各地で大量の地方議員と首長を絶え間なく産み出し、その足腰の強さが大きな底力となって腰折れせず継続してきた。

 維新議員の真の顔は極めて保守色が強い。自民党内と比べても、むしろ安倍シンパが多く右寄りだ。先の統一地方選で躍進した府議、市議をみると初選挙の清新な候補者が多い。対抗する自民は世襲候補や多選のベテラン候補も多く、太刀打ちできなかった。

維公組めば負けなし

 方針転換した公明党は12月10日、都構想法定協で財源配分などを合意し可決。最大のポイントは、新たな4区に児童相談所を設置することと、拠点商業地の存在。淀川区は新大阪、北区は梅田、中央区が難波、そして天王寺区は阿倍野と各ターミナルを位置付けた。

 早やければ、来年4月から住民説明会が大阪市内各地で開かれ、並行して府市の議会で議決。半年後の2度目住民投票で賛成多数が得られれば、大阪市の解体が決まる。なお、いったん大阪市はなくなれば再配置や復活はできない。既に安倍政権も都構想に理解を示しており、松井市長は住民説明会について「時間が限られているので、反対意見は別の機会に」と強気の発言。刻一刻と状況は進んでいる。

都構想の真実は?

 都構想のネーミング通り、目指しているモデルは東京都。特別区23区と都内の市町村が並立し、その23区に代わるのが4区という訳だ。「大阪都になるのはイヤ!」という府内市町村住民は多いが、大阪府の名称はそのままなので、住居表示が変わるのは大阪市内だけ。

 府内のある自治体首長に言わせると「大阪市が消えても、他市に別段悪影響はない。むしろ府経由で大阪市税が迂回(うかい)して使えるようになる。これはメリット」という。実際、年間6600億円とされる大阪市税収の内、21%は府に、79%が新たな特別区に戻される計画。その首長は「大阪市民はいい人たち。二重行政≠ニいうのは、それだけ手厚い行政サービスしている≠ニ言う意味に他ならない。それを自ら放棄し、他の府内自治体にばらまいてくれるのだから」と歓迎している。

 都構想というくらいだから東京都の真似なのだが、東京府にあった東京市が消滅したのは太平洋戦争真っ盛りの1943年。終戦のわずか2年前で、迫り来る米軍機に対し帝都防衛≠目的に、防空指揮命令系統の一元化を図ったのが本意。そこには維新の主張する、二重行政解消や予算有効活用の発想などみじんもなかった。実際、東京の下町では今も根強く「東京市復活」の住民運動の声が絶えない。

4特別区の素顔

 では新たな大阪の4特別区はそれぞれどの程度の規模か?

 端的に言えば東大阪市より大きいが堺市より小さい。4区の本庁舎は現行区役所に置かれるが、新たに再配置される旧市職員がすべて入りきれるはずはない。現行計画では、中之島の大阪市役所は、新たな4区の合同庁舎となる。各区でかなりの職員が中之島で勤務することになり、特別区役所にいない担当者が相当数見込まれる。維新側は「現在の市役所をシェアオフィスとして使うことで事務コストを削減できる」と説明。特別区住民は、中之島庁舎に出向く機会も増えそうだ。

 住居表示変更は、新区名の下に現行の区名が入って、以下はそのまま表示されるのが基本。多少煩雑になり表記自体が長くなるのはやむをえない。旧大阪市全域のすべての会社法人登記から、看板や名刺まで作り直すことで、新たな経済需要も生まれそうだ。

 都構想による経済効果について、維新側は「10年間で1・1兆円」と試算、反対する側は「年間1億円がいいとこ」とまったくかけ離れており、どちらを信じるかはその人次第。実際はやってみなければ分からない。

自共だけでは阻止不可能


▲特別区の配置やスケジュールなどに議論を交わす委員ら=2019年11月24日、大阪市役所

 では反対の急先鋒だった自民党府連はどうか?小泉チルドレン≠フ生き残り、渡嘉敷奈緒美・前府連会長(衆院議員)は裏で官邸意向を忖度して「都構想」に一定の理解を示したが、傘下の大阪市議を中心に猛反発を受け頓挫、会長職を早々に辞した。党内では、大阪市議団に続いて、府議団も都構想反対を表明しているが、議員数も足りないし維公連携≠フ下では大きな影響力はない。

 その背景には、同党太田房江・参院議員が府知事時代の2000年に「大阪新都市構想」と題し、「都構想」とそっくりな提案をした過去が横たわる。当時の磯村隆文市長は激しく反発し議論その物がストップ。次に就任した関淳一市長は一転して「府市連携」にかじを切り、06年頃から水道事業の統合などを合意。太田議員は今では「二重行政解消に動いたのは事実だが、維新の都構想とは根本的に中身が異なる」と火消しにやっきだ。

 結局、制度論ばかり先行し、中身に関しては「やってみなくちゃ分からない」のが正直なところ。政令都市の権限が大きく強くて、道府県が困っているのは何も大阪だけではない。神奈川県は3市、福岡県も2政令市を抱え、オイシイところは常に持っていかれているが「ウチでも都構想を」という声を聞かないのは、削減効果が不透明なためだ。

 大阪では、東京五輪以上の経済効果が見込める大阪・関西万博が25年に開催。その前後には同じ夢洲にIR(統合型リゾート、つまりカジノ)ができる。「それまでにさっさと決着を付けて」と、大阪市以外の府民は願っている。


■大阪都構想の経過

2010年
 橋下徹が立ち上げた地域政党「大阪維新の会」
都構想を党是ともいうべき最重要政策に。

2015年1月13日
 法定協議会で大阪都構想の設計書に当たる協定書が承認された。

2015年3月
 大阪市議会、大阪府議会で制度案を可決・承認。

2015年5月17日
 住民投票で同構想は、僅差で否決され廃案に。橋下は松井と共に記者会見し、政界を引退する意向を表明。

2015年11月
 大阪府知事・市長ダブル選挙で、大阪維新の会の松井一郎・吉村洋文が当選し、都構想の再挑戦を政策に掲げていた松井が当選したことで、都構想が再び議論されることとなった。

2019年4月
 松井知事が知事・市長を入れ替える「出直しクロス選」を表明。維新vs反維新(自民・公明・立憲・国民・共産)の構図の中で、松井市長・吉村知事が圧勝。再び都構想議論へ。公明党が都構想賛成に転換。

今後の予定

2020年3〜4月
 住民向けの説明会

  6月
 都構想制度案を正式に決定

  9月上旬
 府議会・市議会での制度案の承認

  11月
 住民投票(否決された場合は現行の大阪市24行政区が存続)

2025年1月1日
 大阪都制に移行(住民投票で可決された場合)

■都構想、懸念を表明 大商定例会見「住民が判断を」

■「私と夫の立場に立って」 妻の赤木雅子さん 法廷で意見読み上げ

■商店街支援に50万円 GoTo商店街 府が独自上乗せ

■万博の教育プログラム始動 小中向け独自教材開発

■防災、社会保障、教育にリスク 専門家指摘

■そして新万博へ 1970年大阪万博50周年式典


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