週刊大阪日日新聞

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2019/11/23

町を訪ねて 「新今宮」


▲星野リゾートが都市観光ホテルを建設中の現場

 JR西日本と南海電鉄の新今宮駅、大阪メトロの御堂筋線と堺筋線の動物園前駅がそれぞれ隣接する「新今宮」は大阪市内でも有数の交通の要衝だ。JRの北側は通天閣に象徴される歓楽街・新世界が広がる浪速区となり、南側は労働者の町として知られるあいりん地区(通称・釜ケ崎)を包摂する西成区。2022年4月には、JR線の北側に星野リゾートが都市観光ホテルをオープンし、31年春には、JR大阪駅北側の再開発地区「うめきた」とJR難波駅、南海新今宮駅を結ぶ「なにわ筋線」が開業する。大型開発を街のにぎわいにつなげようと、行政と民間が連携して動き始めた。

星野リゾートと新今宮フェス


▲新今宮フェスティバルを楽しむ親子連れ

 今年5月、星野リゾート(長野県)が新ホテルの計画概要を発表。地上14階建て、436室の都市観光ホテルで、約1万4千平方mの敷地に緑豊かなガーデンエリアを確保するとともに、ホテルから徒歩圏内の町のスポットを案内するサービスを展開する。

 同社のブランド力への期待が高まる一方で、西成区側では地価の上昇による「釜のおっちゃんたち」への影響を懸念。星野佳路社長は「地域を変えようとは思っていない。地域に今ある魅力を地域の皆さんと一緒に考えて発信できるホテルになりたい」と話す。

 釜ケ崎は労働者の高齢化で福祉の街へと変貌、外国人観光客の増加で観光の街への進化を目指す。ただ、観光客は低料金を求めて宿泊はしても、実際の観光は新世界側に流れているのが現状だ。一過性でないにぎわいづくりをと西成区と地域の人たちが取り組むのが「新今宮Rプロジェクト」。第1弾の事業として10月から11月にかけて2回に分けて「新今宮フェスティバル」を開催した。

 理容院店主・詩人・大学教授・ホテル経営者・紙芝居屋さんなど多様なメンバーで構成される実行委員会と同区が主催した。前半は台風の影響もあって集客に苦労し、後半に参加者は増加したものの、回遊性などの課題が浮かび上がった。一方で、オリジナルゲームに参加して「楽しかった」と笑う親子や、英語通訳付きのまち歩きツアーで「商店街全体が面白かった」と話すオーストラリア人男性など好評なイベントもあった。西成区では、空き店舗などを再生してにぎわいの拠点とする事業も進めており、「商売としてなり立てば呼び水になる」(横関稔区長)と意気込む。


人情味あふれる*」力を伝えたい

新今宮小で星野リゾートが授業


▲スタッフと町の魅力について考える子供たち

 JR新今宮駅前で都市観光ホテルを建設中の星野リゾートのスタッフが近隣の新今宮小(大阪市西成区)で11月7日、ホテルと地域のつながりや町の魅力発信のポイントについて考える地域学習授業を行った。

 同小はホテル建設をきっかけに、町とどう関わっていくべきかを模索しようと同社と連携した授業を実施しており、3年目の今年は4年生50人が参加した。

 北海道で街ガイドを担当するスタッフが、スーパーの品ぞろえを例に大阪と北海道の違いを紹介。新今宮の魅力を「人情味あふれる」などと話すと児童らも大きくうなずいていた。

 積極的に手を挙げていた須田悠生さんは「この町の魅力を一番知っているのは私たちだと思うので、海外から来る人たちにも魅力を伝えたい」と話していた。


西成を起点にチャレンジを

ウーピー理容院店主 新今宮フェスティバル実行委員長
吉田 充男 さん

 祖父の代から続く理容院で、創業して88年、自身の代になって15年が経つ。「このまちにどういう魅力があって、(店を)出せばどう自分が変わるのだろうか」と振り返りながら、地域に店を出そうとする人に思いを寄せる。

 「出店したり、チャレンジストアを出したりする人は何かをつかんでここを起点にしてほしい。有名店も西成がもともとの発祥地という土壌はある」と望む。

 新今宮フェスティバルの実行委員長を引き受けた。「課題がたくさん出た。回遊性が悪かった。もともと活気があった街だが代が変わってきてつながりが薄れている。店同士、団体同士、人同士、もっとつながっていければ」とまちの再生に意欲を示す。


爆音でクラシックを

クラシック音楽バー「ココルーム」
佐竹昭彦さん


▲畳の上に設置されたオーディオセットとレコードを持つ佐竹さん

 入って左側のカウンターには焼酎の瓶と書籍が並び、右手にはクラシック音楽のCDが大量に入ったボックス。店主の佐竹昭彦さんが中学時代から集めた1万枚のうち、約4千枚が店内にあるという。奥に設置された200万円相当のオーディオセットから爆音で流れるワーグナーの「ワルキューレの騎行」。映画「地獄の黙示録」で使用された曲で、最もリクエストが多い。

 西成の飲み屋街に現れたクラシック音楽バー「ココルーム」の雰囲気は来店客でがらりと変わる。指揮者による演奏の違いを指摘する「釜のおっちゃん」、やたらと飲ませ上手で上品なご婦人、スーツにネクタイで読書にふける紳士。来店客の約1割が外国人客で、外国語が飛び交う日もある。3割ほどがクラシック音楽ファンで高名な指揮者やピアニストが訪れたことも。

 佐竹さんは「クラシックを爆音で聴きたい人は来店を」と様々な訪問者に見事に対応する。


手荷物預かり50円〜

ダイコクロッカー
昔は日雇い労働者、今はインバウンドに人気


▲外国語表記が目立つ店先に立つ代表の岡西義友さん

 西成区太子1丁目で50円からという格安で手荷物を預かる「DAIKOKU LOCKER(ダイコクロッカー)」。店の看板は日本語以外に英語、中国語、韓国語で表記されている。

 かつて手荷物を預けていくのはほぼ日雇い労働者で、仕事に行く前に「衣類など家財一式」を預けていく人が多かったが、労働者の高齢化で顧客は激減。

 関西空港への格安航空会社(LCC)の就航とインターネットでホテルが予約できるようになったことが大きく、現在の顧客は訪日外国人客(インバウンド)が8割ほどになったという。

 代表者の岡西義友さんは「ひまだった時に英語を勉強していたことが役立っている。安すぎてもうからないが」と笑う。


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