週刊大阪日日新聞

大阪市(北・都島・城東・旭・鶴見区)・守口市・門真市
(社)日本ABC協会加盟紙 251,012部

2019/10/26

考え方を変えたらV字回復 

大衆居酒屋まるちゃん


▲丸山貴央(まるやま たかなが)34歳。兵庫県尼崎市出身。26歳から居酒屋FCオーナーとして3店舗を経営するが、売上不振に陥る。1店舗を任せていた兄とけんか別れするなど困難を乗り越え、「大衆居酒屋まるちゃん」を開業。自らの考えを改め売上を倍増させた。

 居酒屋甲子園で関西第2地区準優勝にも輝いた、大衆居酒屋まるちゃん。連日、常連客の笑い声が響き、店内は活気づいている。店員の声も明るく、ビールもうまい。実はこの店、つい半年前までは存続の危機に見舞われていた。いかなる方法でV字回復を果たしたのか。

 半年前に月商100万円で存続の危機だったと思えないほどに活気づく「まるちゃん」。店は兵庫県尼崎市の市役所近く。最寄りのJR神戸線「立花」駅からは約1キロ離れ、繁華街にあるわけではない。それなのに、売上が倍増し、社員が増えて組織も蘇った。

 どうやって奇跡を起こしたのか。代表の丸山貴央さんによると、答えは存在意義≠見つめ直し、考え方≠変えたことだという。

なぜ、居酒屋をしているか

 「どうすれば売上が増えるか、と考えているうちは、一つとしてうまくいかなかった」(丸山さん)。

 きっかけは、わらをもつかむ思いで参加したセミナーだった。そこで得た学びは、「だれのために、なんのために店をやっているか」の存在目的≠自身に問うこと。丸山さんの心の底から出た答えは、「地域の人に愛されるお店、スタッフになりたい」だった。

行動が変わる

 店を経営していれば誰もが「地域の人に愛される店でありたい」と思うはずだ。実際にモットーに掲げる店もあるが、その目的は「消費者によく見られるための宣伝」であることが多く、本気で「誰かのための店作り」を考え、実行に移している経営者は少ない。

 「この考えに行き着いてからは、あらゆる行動に目的意識≠ェ生まれるようになったんです」と丸山さん。


▲大衆居酒屋まるちゃん(兵庫県尼崎市七松町3-12-12)

 具体的にはどういうことだろうか。以前と現在の丸山さんの行動を比べてみたい。一つは、アルバイト採用の視点だ。以前は、店が忙しい日を基準に「木曜日に出勤できる人」といった感じで募集していた。しかし、現在は「こういう店にしていきたい」という思いを面接で伝え、賛同者を採用するように変わったという。

 二つ目はビールサーバーの洗浄だ。毎日行う水通しとは別に、メーカーが週に一度と推奨する「スポンジ洗浄」。以前はその回数通りを行っていた。しかし、現在は「どこよりもおいしいビールを飲み、元気になって帰ってもらいたい」ことから毎日欠かさず洗浄を行っている。

 通常、この手のオペレーションが新たに加わると、スタッフから「面倒な作業が増えた」と不満が出そうだが、同店はスタッフも「一番うまいビールを飲んでもらいたい」と心底思っているため、面倒な作業≠焉A気持ちの行き届いた仕事≠ノなっている。

伝染する「思い」

 丸山さんのマインドが変化し、スタッフも最初は「熱い店長」という程度にしか感じていなかったかも知れない。しかし、毎日率先して大きな声で「いらっしゃいませ!」と客を迎え入れ、額に汗を浮かべながらトイレを磨き上げる。その一貫した姿勢にスタッフの心も動く。

 あるとき、丸山さんがピカピカに磨き上げたトイレを眺めていると、女性スタッフが「化粧直しに必要だから、コットンなどのアメニティを置きましょう」と提案してきた。すると今度は客が、トイレの備品を置くための棚をプレゼントしてくれた。

 一貫した思いと行動がスタッフに留まらず客にも伝染していった。

「思い」は結果に

 マインドの変化から約半年で店は劇的に変化。営業成績が前年度比で180%に迫る月も。今では同じ思い≠持つスタッフ(アルバイトから昇格した)に店を任せるまでになった。

 丸山さん自身は月商1千万円超、利益率20〜30%で業界屈指の「肉汁水餃子餃包」で修行中。さらなる進化を目指している。


 人が集まらない、スタッフの能力が低い、儲かったら宣伝する…。経営者の多くからは、コピーされたような同じフレーズばかり飛び出すが、丸山さんと話しているとそれは「誤った思い込み」だと気づかせてくれる。成功に必要なのは考え方≠セ。トップの考え方次第で、冒頭のフレーズも、人が集まってくる、スタッフが自発的に考えてくれる、お客様のためにお知らせしなければ…に変わる。同店は、指示待ち社員を生み出すありがちなトップダウン組織ではなく、スタッフが自発的に考えて行動する組織に変わっていった。

 世間では「売上」「取引件数」「費用対効果」など事業のあり方≠謔閾お金≠ノ着眼した話題ばかりが先行している。企業は内部留保を肥大化させるほど高収益を上げているが、そこで働く社員は本当に生き生きしているだろうか。数字上の成功ではなく、本当の成功のあり方≠大衆居酒屋まるちゃんから学べるのではないか。


pagetop