週刊大阪日日新聞

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2019/10/12

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

関電役員 金品受領問題の本質は?

横暴元助役論に騙されるな

 関西電力幹部の金品受領問題が連日、テレビのワイドショーをにぎわせている。関電側は、福井・高浜町の元助役(3月に90歳で死去)ばかりを悪者にし、そのキャラクターの特異性を強調。会社に関しては「適切ではなかったが、違法性はない」の論法で、肝心な部分は「個人情報保護と第三者委員会任せ」で逃げ切りを図っている。事態の本質をじっくりと考えたい。

刑事立件の壁 当事者死去と時効

 まず、企業幹部が出入り業者から金品を受け取る行為は、会社法での役員贈収賄罪と特別背任罪に当たる危険性がある。また、本来企業が得るべき金を幹部が受け取れば、株主の利益を横取りしたことになり、株主代表訴訟の対象になりうる。

 収賄罪は、贈賄側業者から不当な要求があったことと、役員自身の職務権限が条件。つまり、個人的な友人が業務に関係のない部署にいる者に贈り物をしても該当しない。となると、元助役からの金品贈与は、彼がすでに亡くなっているから立件が非常に難しい。ただし最近になって出てきている「別の業者が、原発幹部に直接金品」は、その趣旨を巡って当事双方を事情聴取できるし、当然やるだろう。検察側にとっては願ってもないオイシイ事例だ。

 特別背任は、自分の利益のために会社の金を不当に使う行為を指し、コレを該当させるのは無理。いずれも時効は5年だから急ぐ必要がある。検察にとっては、関電がこの問題を「個人対個人」で矮小化しようとしているのは返って好都合。贈収賄の立件は法人ではなく、あくまで個人犯罪だから。双方当事者が生存している案件に絞り、速やかに捜査に着手するだろう。

リーダーなき原発ムラ それぞれの利益で動く危険な構図
原発維持のツケは消費者に

原発はなぜ、過疎地にあるのか?

 原発が日本に登場して約半世紀。今回の問題から、「そういえば、なぜ原発は過疎地にばかりあるのか?」という素朴な疑問が浮かぶ。

 過去の政府は「原発は絶対安全」と口では言いつつ、とはいえ絶対はないから「事故リスクを考慮すると、できるだけ被害を少なくするため大都会から離れていた方がよい」という理屈は十分に理解できる。

 特に関電の原発があるのは、自社のテリトリー外の北陸地方ばかり。過疎地であるうえ、塩害で一般企業の誘致にも適さない日本海側の元寒村だ。遠い発電所からの送電は、放電によるロスもあるから、本来ならもっと近い場所が適している。

 それなのになぜか? ここで「関電」を「自治体」、「原発」を「ゴミやし尿の処理場」などの迷惑施設として仮定してみよう。自治体は、迷惑施設をどこかに作らなければならないが、当然地元では住民の反対運動が起こる。こうした時に地方議会議員など有力者の立場で交渉の窓口になってくれる地元まとめ役≠ェ出現する。まとめ役は「何がなんでも反対」ではなく、地元への見返りに公園や施設整備を持ちかける条件交渉に転じる。自治体はそれに応じ、建設を実現できる―という構図だ。これは迷惑施設の建設の際に多かれ少なかれ起こる現象だ。

 結局原発は、他に選択肢がない過疎地が渋々受け入れ、その見返りとして恩恵を被る迷惑施設に過ぎない。関電などの電力事業社は事故や故障のリスクを抱えているから、まとめ役の言動には極めて弱い。つまり電力会社側が見返りとして一方的に便宜供与させられるのが当然、というのがこれまでの展開だ。だが、それが「環流して関電幹部に戻って渡る」というのは過去に聞いたことがない。他の電力会社も自主調査ですべて否定している。

 本当にその元助役は関電の言うように、「極めて特異な、どう喝型の人物」で一方的に責任があるのだろうか? その確認のためには、元助役が贈った金品の原資を提供した建設業者と関電の各種契約受注状況が明らかにならなければ判明しないが、関電側は契約状況公開を拒んでいる。

ホントに原発は怖いのか?

 私は過去に原発視察の取材で高浜町を訪れたことがある。冬のどんより曇った日本海から、容赦なく寒風が吹きつけ、粉雪が舞う。乾燥した晴れが続く大阪からは想像できない厳しい自然環境だ。

 一番驚いたのは、原発が核融合で発熱するのは分かっていたが、メカニズム自体は湯を沸かす蒸気機関車と同じだと知ったことだ。「科学の灯といっても、その程度なのか?」と何だか拍子抜けした。

 地震や津波に対する緊急停止に関しては、大事故になった福島第一と安全に停止した女川(宮城県石巻市など)の両原発を比べれば分かりやすい。東日本大震災では、ほぼ同規模の14m級の津波に同時に襲われ明暗を分けた。しかも設計や配置は無事だった女川の方が古い。単純比較は難しいが、過去の津波被災例を地元で知る東北電力の女川と、遠隔地・東京電力の大規模津波をナメた態度の違いが、先の福島原発事故で強制起訴された東電旧経営陣(一審は無罪)の法廷対応に見て取れる。

理屈簡単、小泉の反原発

 小泉純一郎元総理が、反原発の急先鋒に立っていることは良く知られている。彼の理屈は簡単で、 「総理在任当時、官僚などの専門家から原発は安全、クリーン、安価と3拍子そろって、わが国に欠かせないエネルギー源≠ニ言われ、すっかり信じていた。それがひとたび事故を起こせばとてつもない被害をもたらし、福島の住民は何十年も戻れない。以後は、事故防止への安全対策で金が次々必要で切りがない。事故で次々原発が止まっても、日本は電力供給を維持できる。無限にある太陽・風・水を使っていけばいい」と講演で述べている。

 私は原発推進でも反原発でもないが、単純に「これから原発を再稼働するには、すごくお金が掛かるんだろう」と漠然たる金食い虫化≠ヨの不安が強い。「安全、クリーン、安価じゃないなら、無理して続ける必要はない」というのが本音だ。

なぜ原発稼働にこだわるのか?

 今回の金品授受問題で、事業主の関電、地元有力者の元助役、そして関連工事を受注する建設業者が登場した。俗に原発ムラ≠ニ呼ばれる組織には、他にどういう連中がいるのだろうか。

 まず政治家。地元の国や地方の議員だけでなく、電源三法などの成立に関わった族議員と呼ばれる国会議員と経産省などの担当官僚。さらに原発メーカーも経済界では重要な存在。一翼の日立製作所は中西宏明会長が経団連会長だし、逆に東芝は子会社の米国WH(ウェスチングハウス)の経営破綻で本体が大きく傾いた。

 原発は文字通り政・官・財三者が一体となって進めてきた事業であり、小泉元総理のように簡単に 「間違っていました。開発を止めます」とは口が裂けても言えない。

 この大きな原発ムラには、村長に当たる政治家リーダーが存在しない。与党のバックには官僚と財界がおり、今回のように原発にまつわる不祥事を追及すべき野党は電力各社労組と結びつきが強く、及び腰だ。チェック役の新聞やテレビの既存メディアも、関電をはじめとして地元電力会社から莫大な広告料を貰っているから、こちらも忖度しがちだ。

 こうした世間の傾向が、太陽光や風力の発電設備の普及を妨げていることは否定できない。一時ブームになった家庭用太陽光発電も、電力事業者の買い取り価格低迷で下火になった。期待された電力販売自由化も電源立地が自由化されていないから、事業者は一向に増えない。

 実は、この原発維持のために私たち消費者が高い電気代の支払いを強いられているとしたら…。今回の問題を一人一人が、自分事として考えないといけない。


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