週刊大阪日日新聞

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2019/9/28

「不親切な店作り」で学生に大ウケ 

歴史を刻め 下新庄本店

 2010年にオープンして以来、行列の絶えないラーメン屋「歴史を刻め 下新庄本店」。人気の秘密は、男子大学生への戦略的なターゲティング≠セが、単純に「男子大学生はデガ盛りラーメンが好きだろう」という稚拙な考えではない。同店からビジネスの視点を学ぶ。

 大学生活はたったの4年間だ。この短いサイクルで入れ替わる大学生をどうやって獲得し続けるのかは、経営視点からすると非常に興味深い。

 普通の思考なら、こう考えるのではないか。せっかく学生が店のファンになっても卒業すればいなくなる。つまり期限付きの客だ。一方で入学したばかりの学生を呼び込むにも、コストがかかって大変だ―と。

 「歴史を刻め」は、このありがちな視点から目を覚まさせてくれる。入学と卒業を繰り返す大学生は、決して経営に不利なターゲットなのではなく、むしろ大学生の母数自体が変化しないメリットがある。加えて、4年という短いサイクルだから、味への飽きを心配することもない。

 また、サークル活動などで先輩から後輩へ伝統の味≠ニして受け継いでいくストーリーまで想定しているというから驚きだ。

先輩から後輩へ受け継がれる仕掛け

 その先輩から後輩へ℃け継がせる仕掛けがおもしろい。入店したら、自分で券売機上のタオルウォーマーから「おしぼり」を取らなければならない。続いて、券売機横のケースに入った箸とレンゲを持ち、さらに入口奥のコップに水を汲んで席まで持っていく。一見、不親切にも思えるこのセルフサービスは、「おしぼりはここ」「箸とレンゲを持っていって」と、知人や後輩に店のルールを教えながら優越感に浸ってもらうためだ。「暗黙のルールや自分だけが知っている店を自慢したいと思う男心を戦略的にくすぐるんです(笑)」と社長の藤原大地さんは説明する。

「あいさつ」を徹底


藤原大地プロフィル 「(株)元気ですか」社長。格闘家を目指してプロの道に進むが、1軒のラーメン屋に出合い起業を決意。二郎系ラーメンと独自の経営センスで、フランチャイズを含め現在7店舗に急拡大。「スーツは着ない」がモットー。大阪市出身

 藤原さんはアルバイトや社員からの信頼も厚い。ジェネレーションギャップすら感じさせない少年のような心を持つ。その藤原さんが、従業員に唯一徹底しているのがあいさつ≠セ。「『ありがとうございました』の言葉も、従業員の姿勢や想い一つで、お客様には全く異なった印象を与えてしまう」と藤原さん。

 このため、同店では、元気に客を迎え入れ、ラーメンを食べて元気になってもらい、そして元気に送り出すことを、全ての従業員が全力で取り組んでいる。

 同店ではラーメンにニンニクをトッピングする際、スタッフが「ニンニク入れますか?」とお客さんに元気な声で問いかける。通常、この手のトッピングは券売機で細かくメニューを設定し、オペレーションを簡素化するのが一般的だが、同店ではあえて 客と従業員がコミュニケーションをとるタイミングに利用している。お店の窮屈ささえ、客との距離感を詰める演出だ。このちょっとした積み重ねがファンを魅了する。

「やり方」ではなく「あり方」が重要

 最後に「歴史を刻め」の味や戦略を真似たライバル店が出現したら、と尋ねた。藤原さんは「絶対に負けない自信がある」ときっぱり。「何を売るか」「どんな風にやるか」ではなく、「どうありたいか」が重要だからだ。

 自分たちがどうありたいかを突き詰め、その先にあったのが、多くのファンや従業員が愛してやまない歴史を刻め≠ネのだ。


記者の視点

 歴史を刻めを取材して、一番印象的だったのは戦略的なテクニックよりも、「褐ウ気ですか」の方針や想いの部分だ。藤原さんは「自分と従業員は上下関係ではない」と言う。「みんなでお店を築き上げている」「みんなで売り上げたお金」の考えを徹底しているだけあって、スタッフに当事者意識が芽生えていると感じた。

 飲食業界全体が人手不足に悩む中、同店では、求人広告費が一切かからないという。店のファンがアルバイトになるケースがほとんどで、さらにアルバイトから社員希望も多い。このお店で働きたいというより、藤原さんについて行きたいと思うのだろう。

 自然と人を引き寄せ、コミュニティーの中心的な存在となる藤原さんのカリスマ性。たとえ違う業態の店を経営しても繁盛店になると感じた。


このコーナーは、飲食店の経営サポートを行うアクセススタートアップ(株)と週刊大阪日日新聞が共同で、オモシロイ経営≠ナ新しい飲食の価値を創り出している店舗をシリーズで紹介しています。


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