週刊大阪日日新聞

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2019/9/14

Makuakeのクラウドファンディングは飲食業界を変革するか?

菊地凌輔 (株)マクアケ 西日本事業部 事業部長 
室屋恭平 宮崎牛藁焼き「桜縁」アンノウン(株)代表取締役CEO


▲クラウドファンディングを活用した飲食業界の可能性について対談するマクアケの菊地さん(左)と桜縁の室屋さん=なんばスカイオ内「WeWork」

 宮崎牛を藁焼きで楽しむ会員制レストラン「桜縁(おうえん)」を昨年オープンさせた室屋恭平さん。実は室屋さん、クラウドファンディング(以下CF)を活用し、オープン前にファンを確保するという新たな飲食店販促を成功させていた。これを仕掛けたのは、サイバーエージェントのグループで国内CF最大手「マクアケ」の菊地凌輔さんだ。両氏が「桜縁」の成功例をもとに対談し、飲食業界の新たな可能性を見いだしていく。

開店と同時に数百人のファン


マクアケの菊地さん

室屋 菊地さんのお力添えで、オープン時に数百人の会員がいる状態で開業できました。開店と同時に、店にある程度のファンがついていて安定した経営が見通せる。クラウドファンディング(CF)ってすごいって実感しています。

菊地 開店2、3か月前から話題化させていき、うまくファンを募れましたね。もともと神戸牛や松坂牛の種牛でもある最高峰の「宮崎牛」をわら焼き≠ノするなんて、パフォーマンス性も高いし、むちゃくちゃ面白いって思っていましたから。

室屋 半年たって、現在の会員はさらに2倍近くまで増えたんですよ。

菊地 エーッ、それはすごいですね!

室屋 今回の実体験から、飲食店のオープン販促にCFは非常に有効的だと感じました。事前に「どれくらいの人にニーズがあるか」「どの層に人気があるのか」などマーケティングも出来ますし。それに飲食経営にとって、最初の手出し負担が一番大変ですから。

菊地 いきなりモノを作ってマーケットデビューさせるよりも、CFを活用してある程度ファンを作ってからデビューすれば最小のリスクで済む。月間数百万人のマクアケのユニークユーザーがそれを支えてくれています。

室屋 やってみて気づいたんですが、ユーザーと一緒に作っていけるスタイルがいい。

菊地 おっしゃる通りです。従来はメーカーが企画した商品をそのまま消費者が使う、いわゆる一方通行ですよね。しかし、マクアケのCFは双方向なので、商品をデビューさせる前に、サポーターから「こんな機能もあったらいい」などの意見が聞けます。サポーターがプロダクトを見つけることだってある。一緒にモノづくりをしている感覚になるので、よりお店のファンになりやすいんです。

室屋 実際にプロジェクトをどう進めていくか、菊地さんには手取り足取り手伝ってもらえて本当に助かりました。

菊地 CFを運営する事業者はたくさんありますが、単にプラットホームを提供して「どうぞ自由に使ってください」というスタイルが多い気がします。マクアケの場合は1つのプロジェクトに対して1人のキュレーターをつけるようにしています。サービスの魅力を引き出すコンサルティングをしながらプロジェクトの設計まで手厚くサポートするのが強みです。

室屋 私自身、販促に関してずぶの素人だったので、ページの作り方やユーザーに伝わりやすいストーリー構成、リターンの設計に至るまで、こんなに綿密に打ち合わせをしてくれるのかって驚きました。

「残るべきものが残る」世界を。


桜縁の室屋さん

菊地 「桜縁」さんは会員になれるというトピックを使い、資金を集めた。会員制と聞くと、昔は10万円くらいかかってお金持ちしかなれないイメージでしたが、今は1万円など誰でも手の届く範囲で、店で特別扱いしてもらえてプチ贅沢を体験できるというプロダクト。今後はゴールド、プラチナとかにエスカレーションさせて会員としての価値を高めていくとかいろんな可能性に取り組めると思います。
 特に飲食は職人気質の方が多い業界ですから。料理は優れていても、販促に明るい人は少ない。しかも、店側の問題だけでなく、提供する側も飲食のデジタルマーケティングに造詣の深い人はおらず、化粧品などの業界に比べると明らかに遅れている。だから、この分野はまだまだブルーオーシャン(競合のいない未開拓市場)だと感じています。

室屋 確かに。ものすごくこだわった調理法を実践しているのに、「うちでは当たり前のこと。わざわざ宣伝するようなことじゃない」っていうオーナーシェフも多いですし。料理の腕に自信はあれど、宣伝が上手な人は正直少ない。せっかく本物を作っているのに「良い物と売れる物は違う」っていうのが現実の世界です。消費者がどんな情報にベネフィット(便益)を感じるかの視点には、あまりにも無頓着ですね。

菊地 もちろん、私たちも毎回成功させられるわけじゃな く、失敗することもある。でも、失敗しても飲食店オーナーからすれば負担はないわけだし、われわれにとっては学びの一つになります。マクアケではこうした多くの案件が並行して進んでいる。情報はスタッフが横軸で共有して、蓄積したノウハウをクライアントにフィードバックできます。

室屋 ほとんどの飲食店は、まだまだ「お客様に来店してもらって楽しませる」ことしかできていない気がするんです。そこで桜縁では、リソースの宮崎牛をプロダクトして、薫製風のわら焼きをウーバーイーツでデリバリーしている。ラウンジやスナックですごく需要があって好評なんですよ。

 このネットを活用したさまざまなサービスの広がりは、今後の飲食のあるべき姿として可能性を感じています。

菊地 「生まれるべきものが生まれ、残るべきものが残る」―。マクアケのCFを通じてそんな世界を作りたいですね。


マクアケがヒットさせた藁焼き桜縁≠チてどんな店?

 神戸牛や松阪牛の種牛でもある「宮崎牛」を藁焼きで味わえる住所非公開の会員制レストラン。利き酒師が選ぶ日本酒とのペアリングコースを楽しめる。

 最高峰のブランド「宮崎牛」の稀少部位という素材もさることながら、特筆すべきはその調理法だ。和牛の調理は一般的に炭火がおいしいと言われるが、研究を重ねた結果、瞬間火力で旨味を閉じ込める調理法が最もおいしいことに行き着く。その手法として、あえて藁焼きを実践。従来の和牛と全く異なるおいしさを実現した。

 宮崎牛のコース料理といえば、2万円は下らないのが相場だが、同店の会員には5500円で提供している。


対談者プロフィル

きくち・りょうすけ (株)マクアケ西日本事業部長 学生時代にベンチャー企業のスタートアップに携わった経験を生かし、ウェブサービス開発ディレクターとして2つの新規事業に参画。2015年(株)サイバーエージェント・クラウドファンディング関西支社の立ち上げに貢献。関西支社長として「モノづくり関西」の特色を生かした多くのプロジェクトを成功に導く。

むろや・きょうへい 宮崎牛藁焼き「桜縁」を運営するアンノウン(株)代表取締役最高経営責任者。大手証券会社に勤務し、さまざまな投資手法にふれる中でクラウドファンディングと出合う。飲食業×CFの資金調達としての役割やマーケティングとしての可能性に将来性を感じ、2018年独立開業。マクアケでプロジェクトし、約1カ月で300万円超の資金を集め「桜縁」をオープンさせた。


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