週刊大阪日日新聞

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2019/7/13

リカレント教育 注目集める「大人の学び直し」

 近年、朝会やサロンなど、ディスカッションやディベートを活発にやりとりする会合が盛んに行われている。講習室でというより、カフェで軽食などを楽しみながらのスタイルもあるが、内容はその道のプロを講師に呼んだりと本格的で、大阪でも注目を集め始めた。大人のライフスタイルを変えるリカレント教育。いわゆる「大人の学び直し」の一端を紹介する。


ナレッジキャピタル

変化し続ける時代に対応する多様な教育を提供


▲「変化の激しい時代にこそ学ぶことが必要」と語る野村総合プロデューサー=大阪市北区大深町のグランフロント大阪

 JR大阪駅近くのグランフロント大阪で、会員制サロンの運営や多彩なイベントを展開する「ナレッジキャピタル」。大学などの各機関の研究者が一般向けに最新の研究について紹介する講座「超学校」が人気を集めている。総合プロデューサーの野村卓也氏は「世代にかかわらず、社会が変化し続ける時代だからこそ学びが必要になる」と説く。

 「次世代放射光」「小口径人工血管」など最先端の研究名が講座テーマに並ぶ超学校の会場はグランフロント大阪内のカフェ。午後7時に開講し、1講座に約60人が集う。受講料はドリンク代の500円のみで飲酒も可。スタイルは講師によって異なるが、対話形式で進む講座も少なくない。

 2013年のオープン以後6年間で252講座開講し、延べ1万1千人以上が受講。人気のある講座は予約受け付け開始1時間ほどで満席になるという。ここでしか聞くことのできないオリジナルで専門的な内容の講座のニーズが高いという。

 野村氏は、新たなイノベーションを生むには専門的な研究だけでなく、専門外の教養を得ることが重要とした上で「アクセスの良い都心に研究、開発、教育の拠点を構えた。多様なものの見方や考え方を与える教育を提供していきたい」と話す。


ワークアカデミー

スクール「noa」でスキルアップ 大学連携にも着手


▲幅広い年齢層を対象にした働き方についてのセミナー(ワークアカデミー提供)

 大阪市北区のワークアカデミー(大石博雄代表)は、資格とキャリアのスクール「noa(ノア)」を梅田とあべのハルカスで開講している。近年関西でも広がりつつある大学のリカレント教育もサポート。「夢と勇気が人を育てる」の理念の下、提供する 学びが好評を集める。

 ノアでは、ウェブやパソコン、コミュニケーションなど6分野で多彩な講座を展開する。その人にあった講座をカウンセリングし、複数講座の受講生が同じ教室で自分のペースで学べる「フリー制」が特徴の一つ。パソコン関連などの資格取得率は99%を誇る。

 大学が一般を対象に実施するリカレント教育については、前年度からパソコン科目を担当。本年度はスクールでのノウハウを生かし秘書業務や履歴書の書き方などにも対応している。

 「政府の推進などを背景にキャリアアップを考える社会人は多く、ノアでも特にこの2年は受講者数が伸びている」と話すのは同社開発部の研良平部長。今後は、スキル系に加えコミュニケーション力やリーダー力などビジネス系の強化も「重要になる」という。

 同社大学営業部の原田ゆかり部長は「主体性が求められるグローバルな時代に、学び続けることはすごく大事。社会に出て学びたいと気付いた時に、ワークアカデミーをぜひ利用していただきたい」とアピールしていた。


関西大梅田キャンパス

「大学といえば18歳から」という常識変えたい


▲社会人向け大学院講座でグループディスカッションする受講者ら=大阪市北区鶴野町の関西大梅田キャンパス

 関西大(吹田市)は2016年、社会人向け教育の拠点として阪急梅田駅から徒歩5分の地に「梅田キャンパス」を開設した。同キャンパスオフィスの服部真人事務長は「18歳人口が減り続ける中、これからの鍵を握るのは留学生と社会人」と話す。

 関西大には、オープンカレッジと社会人向け大学院講座の二つのリカレント教育プログラムがある。

 オープンカレッジは「人工知能」「防災塾」「LGBT」など多岐にわたるテーマを体系的に学ぶことができる。受講者数は年々増え、前年度は21講座開講し、受講者数は約3500人に上った。

 社会人向け大学院講座は、会計や海外ビジネスなどの専門性の高い内容を関西大の大学院生と一緒に学ぶ。講義とグループワークの2部構成で、オープンカレッジに比べてより実践的な内容となっている。受講者の年代も20代〜50代以上と幅広い。

 会計や海外ビジネスなど必要な研修を外注せざるを得ない中小企業からの需要があるといい、服部事務長は「従来は資格専門学校に相談することが多かったが、今後は関西大もその選択肢に入ることを目指す。大学といえば18歳から、関西大といえば吹田キャンパスという常識を変えたい」と力を込める。


九つの工芸が学べる大阪市立クラフトパーク

社会への還元活動につなげる人も


▲講師(左)の指導の下、金づちを振るってスツール作りに励む木工教室受講者=大阪市平野区長吉六反の市立クラフトパーク

 大阪市平野区長吉六反の市立クラフトパークは「日本で唯一の総合工芸施設」とされ、吹きガラス、木工、ステンドグラス、織物など9種の教室に約1200人が通う。同館運営課の河田和美課長は「生きがいや個人の趣味として始めるケースが多いが、受講生同士で自主的にグループ展を開いたり、培った技術を地域の人に教えたりと、社会への還元活動につなげている人が多い」と語る。

 基本は週1回3時間の講座で年間4学期40講座開かれる。おおむね半年〜1年で基礎を習得できるが、中には10年以上同じ講座に通い続ける人もいるという。各分野の本格的な設備がそろっているため、県外から通う生徒も少なくない。

 各講座には学期ごとに製作課題が設定されている。木工なら1学期にスツール、2学期にジュエリーボックスといった具合だ。課題を達成すると各自が自由に作品を製作できるようになるため、進度に差が出ても問題にならない。

 年齢層は高めで現在は女性が全体の7割を占めるという。河田課長は「人生100年時代を迎え、仕事を引退した男性のセカンドライフ需要を掘り起こしていきたい」と話す。


追手門学院大の大学院経営・経済研

大学経営を多角的に学ぶ


▲授業では、ディスカッションしながら大学経営について学びを深める(追手門学院大提供)

 追手門学院大(茨木市)は、大学院経営・経済研究科に全国初となる大学経営に特化した研究領域を2018年4月に開設した。現役の大学職員を学生として迎え入れ、大学経営の中枢を担う人材を育成する。

 18歳人口が減少に転じ、2018年度の大学・短大への進学率が57・9%に達する一方、4年制大学の36・1%が入学定員割れとなっている。大学全入時代を迎えた今、大学の存在意義そのものが問われている。

 「企業と大学は経営目的が違う。社会に役立つ大学とは何か。経営と教育を両立させなければならない」。福島一政副学長は、大学経営のプロの必要性を強調する。

 期間は2年で、修了には30単位の取得と修士論文が必要。開講科目は、大学経営の経営戦略論と経営管理論の研究のほか、高等教育論、大学職員論、キャリア開発支援論、高等教育統計解析の6科目ある。

 経営学の視点から大学経営に関する専門分野の理論・事例・政策・制度・歴史を体系的に学び、教育マネジメント課題を調査・分析・考察する力を身に付ける。

 現在、1、2期生計7人が在籍。社会人が学ぶ機会を広げるため、今後は夜間や都心部キャンパスでの開講も視野に入れる。


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