週刊大阪日日新聞

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2019/6/15

Interview 大阪メトロ 河井英明社長

 民営化から1年。大阪市営地下鉄の運営を引き継いだ「大阪メトロ」は、ホーム柵の全駅設置など鉄道事業の安全対策強化にとどまらず、地下街や駅ナカを活用したサービス事業の充実や顔認証式のチケットレス化といった情報通信技術(ICT)の導入など、民間ならではのスピード感で新機軸を次々と打ち出している。大阪メトロの目指す理想の終着駅とは─。

 河井英明氏(64)=1977年松下電器産業(現パナソニック)に入社。2012年に常務、14年に代表取締役専務に就任し、17年に顧問。18年4月から大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)代表取締役社長。


▲民営化から1年が経過した大阪メトロの現状と可能性について語る河井社長=5月28日、大阪市西区の大阪メトロ本社
■民営化から1年が過ぎた。

 試行錯誤の連続だったが、社員の多くが民営化を意識し、しっかりやってくれた。全体としてはまずまず順調に推移している。将来へ向けた取り組みも始まっており、ある程度の手応えも感じつつある、非常に濃い1年だった。

■具体的な変化は。

 一例を挙げると、年に1度だった決算を昨秋から月次決算に変更し、事業の状況を確認するとともに業績見通しを分析するようにした。同じ数字を扱っても、事業活動が終わってから結果をまとめるだけの決算と、事業をうまく進めるための決算では意味合いが圧倒的に違う。変革を象徴する一例であり、手応えを感じている部分だ。

 4月に発表した中期計画の見直しには、可動式ホーム柵の全駅設置などかなりの分野で取り組みの前倒しを明記した。これも民営化の成果の一つで、予算内で動くことが求められる行政と違い、お客さまの満足度を上げるためにできることをできるだけ早くやる柔軟性を発揮することができた。

■大阪メトロはどう変わっていくのか。

 メトロの仕事は基本的には地下鉄とバスを中心とした交通インフラ。そこを充実させつつ、利用者の日常生活を充実させ、さらに快適にするような、大きい意味での社会生活インフラを目指す。

 そこで大事なのが、駅ナカといったリテール事業。今は物販などが中心だが、今後は「もの」を売るだけではなく体験などの「こと」を扱いたい。例えば「少し早く家を出て、駅でちょっと勉強したい」とか、子育て世代が「駅の近くの保育所に預けたい」とか、そういう希望に応えたい。

 地下鉄は毎日250万人が利用し、地下街を通る人は毎日70万人もいる。これらのお客さま一人一人のニーズにお応えする形でサービスを展開していく。

■駅のデザイン化事業など新しい取り組みも多い。

 メトロにとって、安全▽安心▽快適性▽利便性─の四つが運営のキー ワード。安全安心を担保した上で、快適性と利便性の分野で魅力度をどう高めるかが課題だ。

 駅のリニューアルでは「派手過ぎる」などの批判もあったが、その後は反対意見をデザイン案のブラッシュアップにつなげる取り組みも行っており、逆にお客さまとの距離は縮まった。これからも知恵を絞っていろいろなプロジェクトを推進し、お客さまの声にしっかりと耳を傾けてより良いものにしていきたい。

■民間出身の経験をどう生かす。

 民間企業として取り組むべきことはたくさんあるが、それは言い換えればもっと会社が良くなるという可能性。社員らが自ら考え、やっていこうという歯車が回りだすのが理想で、社長としては良い意味で刺激を与えることを心掛けてきた。

 例えば、就任から今まで少なくとも50以上の事業戦略や経営改善案を自ら提案してきた。これはどこを押せば効果的に歯車が回るのかを探るため。メトロの可能性が一つ一つ見つかるから楽しみながらやっている。

 メトログループは、社会生活インフラに加え、街を元気にする活力となるようなインフラを目指している。街に暮らす人々の生活に寄り添い、生活を豊かにすることで街を元気にする。そんな会社になりたい。

(聞き手は浜田匡史)


15駅を全面改修

利用するだけで楽しくなる駅に

 大阪メトロは2024年度末までに地下鉄御堂筋線と中央線の15駅を全面改修する。船を模すなど駅ごとに地域性を反映させたデザインを採用。利用するだけで楽しくなる駅を目指す。

 大阪市内を南北に走る御堂筋線の9駅と、東西に走る中央線の6駅が対象で、19年度に完成する中津駅を皮切りに順次改修。全133駅に設置する可動式ホーム柵や洪水の流入を防ぐ災害対策など駅の基本性能を充実させるのと並行し、デザイン面も強化する。

 市営時代の駅舎は、安全面を最優先した機能本位なものが多く一部から「無機質過ぎる」との声もあった。今回の改修では駅ごとにコンセプトを設定し、デザイン性を前面に打ち出す。

 ベンチャー企業が多い「にしなかバレー」エリアにある中津駅は「プレゼンテーション」がコンセプト。コンコースに展示スペースを設け駅周辺の企業が取り組む最先端プロジェクトなどを紹介する。地上駅の大阪港駅は「船」がコンセプトで木質感のある素材を使い、甲板を表現。大阪港に沈む夕日をクルージング船さながらに眺めることができるなど、各駅の特徴を生かしたリニューアルを目指している。


▲ベンチャー企業の最先端プロジェクトが展示される中津駅のイメージ図(大阪メトロ提供)

 昨年12月の発表後、「デザイン案が派手過ぎる」との批判を受けて利用者アンケートを実施。賛同の声も多かったものの「天井が派手だと案内表示が分かりにくい」「毎日利用するのに落ち着かない」などの声もあり、それらを踏まえて具体化したデザイン案を8月中にも発表する。

 改修を担当する活力インフラ施設課の担当者は「駅の改修は大阪を元気にする取り組みの第一歩。洗練されたデザインでワクワクするような駅にしたい」と話す。


活力インフラ整備に注力

地上、地下の両方から大阪を元気に

 地上、地下の両方から大阪の元気を創り続ける─。大阪メトロは、鉄道会社の基本となる安心・安全な「社会生活インフラ」に加え、にぎわい創出でまちの活性化を図る「活力インフラ」に注力。鉄道を核にした生活まちづくり≠フ取り組みを着々と進め、次世代に向けたワクワクの仕組み構築に挑む。

 地下空間では新たな活用スペースを生み出していく。駅構内の駅ナカでは、これまで使い切れていなかった小規模スペースの徹底活用を進め、2025年度までに40%拡大する考えだ。


▲「ホワイティうめだ」泉の広場のリニューアル後のイメージ。
新しいワクワク空間が期待される(大阪地下街提供)

 現在改修中の「ホワイティうめだ」など、地下街を大幅リニューアル。店舗だけでなくイベント利用なども充実させ、快適で楽しい空間の再生を目指す。併せて構内のキャッシュレス化を進めるなど、利便性の向上も図る。

 地上では都市開発事業を展開していく。駅がリニューアルされる南北軸の御堂筋線、東西軸の中央線の沿線で、商業施設やホテル、アミューズメント施設の開業を計画。同沿線エリアを中心に多様な価値を提供し、鉄道やバスとの相乗効果も狙ったにぎわい創出を仕掛ける。

 新たな活力インフラの拠点として、夢洲の開発も見据える。


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