週刊大阪日日新聞

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2019/3/23

熱帯びる幼児教育 

時代のニーズ受け英語やプログラム教育が盛ん

 就学前の子どもの能力開発をうたう幼児向け教室が花盛りだ。背景には、2020年度から導入される新しい学習指導要領と大学入試改革がある。子ども同士の対話や議論を通じて主体的に学ぶ力を養う「アクティブ・ラーニング」を取り入れ、授業スタイルを改善。小学校では3〜6年で英語教育を本格導入し、コンピューターがプログラムで動くことを体験する「プログラミング教育」が必修化される。社会の変化に合わせ、幼児教育も多様化している。


仲間と協力して成長

類 塾

▲生徒同士で協力しながら問題に取り組む「幼小科」=吹田市の類塾南千里駅前教室

 学習塾「類塾」(本部・大阪市淀川区)は、5歳から小学4年生までを対象にした無償の「幼小科」を開設している。名文高速音読や図形パズルなど3〜4個のメニューを仲間と協力して取り組むことで追求心を高め、勉強を楽しいものへと導いている。

 同塾は1983年から幼児教室を実施。「生き抜く力や追求心はお金では買えない価値がある」という考えから、さらに門戸を広げるため、小学生から大学生までを対象にした「探求科」とともに2018年に無償化した。

 幼小科は、講師の指導だけでなく、子どもたちが互いに協力し合い「みんなでできるようになるにはどうすればいいか」を考えながら授業が進められる。

 数人で問題を解き、良くできていた人を子ども同士で評価するなど協調性を重視。勉強嫌いや引っ込み事案の子どもたちが積極的に教室を引っ張るようになり、「勉強が楽しくなった」「誰かの役に立ちたい」といった声が聞かれる。

 教育コンサルタント兼講師の山本和枝さん(25)は「類塾は、目の前の現実に対して、否定や諦めではなく、どのように考えて行動するかを大切にしている。子どもたちの学び合いを通してできることを見つけ、良い部分を引き出している」と話す。


ロボット動かし楽しみ体感

プログラミング教室 プログラボ

▲自作のロボットをプログラムで動かす子どもたち=大阪市福島区のプログラボ野田阪神校

 英語と並んで人気を集めているのが、コンピューターがプログラムで動くことを体験するプログラミング教室だ。ロボットプログラミング教室「プログラボ」(事務局・大阪市福島区)は、自分で組み立てたロボットを動かす過程でさまざまな力を身に付けていく。

 「画面にハートを出したい」「左手のタッチセンサーを押すと止まる」─。野田阪神校(同区)ではビギナーコースに通う未就学児がロボットを動かす方法を講師に相談し、試行錯誤を重ねて作ったプログラムを全員に説明した。

 プログラボは阪神電鉄と読売テレビの共同事業で、関西と関東に27校を運営。ビギナーから4コースあり、年長児から中学生の約2500人が在籍する。

 世界標準のロボット教材を1人につき1台使い、プログラムは、視覚的な「ビジュアルプログラミング言語」を使用。ロボットに関する発表を通じて表現力を身に付ける。ビギナーコースはアイパッドでプログラムを作る。同校に通う関屋諒太郎君(6)は「音を出したり手を振ったり、思い通りに動くと面白い」と笑った。

 同校の溝渕健作室長(55)は「あいさつできないような子どもでも自信をつけられる」と述べ、プログラミング指導だけではない点を強調する。


学びと発見のテーマパーク

イング

▲理科実験など楽しみながら学習できるエデュパーク(イング提供)

 学研グループの大手塾「イング」(本社・大阪市浪速区)は、幼児や小学生を対象にした新しい学び場「エデュパーク」を4月に天王寺校(同市天王寺区)で開校する。理科実験やプログラミング、野外体験ツアーなど10講座を展開。楽しく通いながら学力の基礎を身に付ける。

 「学び」と「発見」のテーマパークをイメージしたエデュパークは、子どもたちの無邪気な好奇心を学びに結び付けたいという保護者の要望に応えて実現させた。全ての講座でリポートを作成し、年度末には学習成果発表会を開催。体験を「楽しかった」で終わらせず、うまくいったときや駄目だったときに自分で考える力を養う。

 2月にあべのハルカスで開催した体験授業には、親子連れ約120人が参加。理科実験やプログラミングを行い、参加した保護者からは「思考力や創造力を養い、記述や発信する内容に魅力を感じる」「結果を求める教育から抜け出せない親の考え方を変えるのが重要」などの声があった。

 天王寺校の松崎裕一校舎長(54)は「子どもたちが実体験をする機会は少ない。答えのない物をどう見つけていくか。自己肯定をしっかりと持ち、発信していく力を育てていきたい」と話す。


識者に聞く 英語教育の可能性

 日本人が不得意な英語は教育改革でも大きな柱に位置付けられている。英語教育の課題と方向性について、追手門学院大の松宮新吾教授に聞いた。 (聞き手は今岡浩明)


▲英語学習の可能性について語る松宮教授
 ─英語力強化の理由は。

 少子高齢化に伴う労働力不足で外国人労働力を受け入れる必要と日本人が海外で活躍するためだ。英語のコミュニケーション力はアジアでも低く教育を変えなければならない。

 ─なぜ身に付かない。

 優れた文化、経済力が外国語吸収を妨げてきた。あらゆる情報を日本語で取得できるので切迫感がなかった。言語に関する脳の働きは人種間で差がない。どう開発するかだ。

 ─小学校の学習方法はどう変わる。

 5、6年生の外国語活動は「どんな色が好き」と聞くようなもので発達段階に見合っていなかった。これからは3、4年生で音声に慣れ親しみ、5、6年生は聞くこと、やり取りや発表に力を入れていく。聞き手中心の言語活動になる。

 ─早期教育に意味はあるのか。

 異なる文化の人同士をつなぐ「他文化マネジメント力」に必要なのが英語だ。言葉や文化に向き合う環境を提供すれば、子どもたちはどんどん吸収する。ただ幼い頃から何でも英語で学ばせると、ひずみが生じる。家庭で使う言語と学ぶ言語の切り分けが要る。

 ─これからの英語学習の在り方は。

 言葉は心を振るわせ、人を動かし、人と人を結び付ける。よりよい社会をつくるという経験をしてほしい。


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