週刊大阪日日新聞

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2019/2/23

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース

水道民営化で暮らしどう変わる?

水道民営化に潜むリスク  「都構想」とリンクする改正水道法

 昨年末に国会で水道事業の民営化≠可能にする『改正水道法』が成立した。大阪市の吉村洋文市長はかねてより「府内の水道事業一本化」を主張しており、今回の法改正は、水道事業の広域連携や公設民営化を可能にする内容で、吉村市長の動きを後押しする結果になっている。そんな折、市水道局が発注した掘削工事で指名業者の不正が発覚。市職員のずさんな管理に対する処分も検討されている。大阪市の水道事業はどこへ行くのか?

大阪市水道は超優等生

 大阪市の平均的な家庭の水道料金は、月額使用量で2千円ほど。値上げも約20年間しておらず、政令指定都市の中では一番安い。これは大阪市域が平坦であることや人口密度が高いことが要因だ。加えて、早くから上水道整備を進めた成果でもある。

 全国平均は3300円程度とされており、最安値は赤穂市(兵庫県)の約800円、最高値は夕張市(北海道)の約6千円で、8倍近くの料金格差がある。赤穂市は水源が近く市域が狭い、夕張市は市域が広い上に過疎化が進んだ結果だ。ちなみに大阪市と同じ政令都市の札幌は、大阪よりも約4割高いとされている。

 この超優良な大阪市水道局を、府市で統合しようとしたのが「大阪都構想」の原点であることは、実はあまり知られていない。

都構想は水道が始まり

 2008年2月に府知事に就いた橋下徹氏は、淀川を挟んで近接する大阪府と大阪市の浄水場を視察し、「二重行政だ」と問題視。府水道部を行政組織から切り離して一部事務組合「大阪広域水道企業団」に組織替えをし、両者の統合を目指した。

 この間に「大阪維新の会」も立ち上げていた橋下氏は、平松邦夫大阪市長(当時)の激しい抵抗に遭い、府知事から大阪市長に転身する荒技をやってのけ、平松氏を追放。府市統合のシンボルとして上水道一本化に再挑戦したが、市議会の同意を得られず頓挫した。

 橋下氏の後継である吉村市長は、今回の国の法改正を後ろ盾に、民営化を前面に打ち出し、大阪市を除く府内42市町村で作る「大阪広域水道企業団」への一元化を再び計画。大阪市水道局は年間数十億円の高収益を上げる超優良運営だけに、大阪市民にとっては民営化や統合のメリットが見いだせないが、これぞ大阪維新流の「都構想実現政策の一環」と考えれば納得いく。

人口減と老朽化でピンチ

 昨年6月の大阪北部地震では、府内各地で水道管が破裂。一時10万世帯21万人が断水などの不便を強いられた。大阪市の上水道は他都市よりも早く整備された分、老朽化も進んでいる。「全体の約44%(1900キロ)の水道管が耐震交換する必要あり」とされるが、10年計画でも約1900億円の膨大な支出が必要になる。

 ここへ冒頭の掘削工事の不正が明るみに出たことで、府市の水道統合を是が非でも進めたい吉村市長としては 「ほら、大阪市単独ではロクな事にならないでしょ」と主張できるチャンスがやって来た。

 水道事業は利用者の健康に関わり、しかも食品や衣料のように好みで事業者選択できないだけに果たして民営化になじむのだろうか?

 もっとも同じインフラの電気や都市ガスも今では関西電力と大阪ガスだけの独占ではなくなり、事業者選択できるのでいずれはそれも可能なのかも知れない。

 法改正で当面予想されるのは、施設は行政が設置、管理を民間委託するコンセッション方式と呼ばれる分離運営。この水道事業の民間委託で日本への参入が予想されるのが、上下水道事業を扱う国際的な巨大企 業、水メジャーだ。

効率優先で大丈夫?

 「民間にできる事は民間に」といえば聞こえはいいが、民間企業の軸は利益を出す経営だ。安心・安全より効率化が優先されれば、鉄道や航空機などの公共交通事業でトラブルや事故が相次ぐなどの反動も心配だ。特に口に入れる水ともなれば、不安は大きい。

 安倍政権下で骨太改革の推進を話し合う経済財政諮問会議。この会議で、外資への市場開放論者の代表格、竹中平蔵・元総務相は「コンセッション制度の利活を通じた成長戦略の加速 」を提言。具体的な数値目標に空港6件、下水道6件、有料道路1件とともに上水道6件もすでに取り上げられている。こうした背景を抜きにして、国の水道法改正はありえなかったのだ。

応じなければ、水止める

 昨年末、岩手・雫石町の別荘地35軒に上水道を提供していた民間企業が突然、追加の徴収を通告。「応じなければ、水を止める」と迫った。理由は井戸水をくみ上げるポンプの電気料金負担の転嫁分の要求だった。

 水道事業への民間参入、ましてや外資が相手だと、同様のトラブルが起こっても不思議ではない。諸外国では、いったん民営化したものの料金が高騰したり水質が悪化したりして、再び公営化に戻すケースも起きている。

 「民営化や統合化で本当に得するのか」。自分の地域の状況をよく調べ、住民一人一人がもう一度、日常生活コストを考えた方がいいようだ。


水メジャーって何者?

 世界で普通に上水道がゴクゴク飲める国は、実は日本を含めて15カ国ほどしかない。「海外で生水を飲んではいけない」と注意され、ペットボトルを常用したことがある人も多い。水メジャーと呼ばれる企業の大半は欧州に拠点を置き、発展途上国の水資源開発から配管設備整備、そして管理運営まで一手に引き受けて使用料徴収まで行う。今回の法改正では、こうした外国企業の参入も可能になった。

 外国企業からすれば、@日本の水道料金は総額2兆3千億円のビッグマーケットA料金徴収が途上国では半分程度なのに、日本はほぼ100%。盗水などをしない、まじめな国民性B日本の水道管は漏水率が平均約7%で、諸外国に比べて品質がケタ違いによい―というメリットがあり、管理業務だけでも十分魅力的に映っている。


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