週刊大阪日日新聞

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2019/2/9

がもよんにぎわいプロジェクト 

古民家再生でにぎわい演出


▲古民家を改修したこだわりの店が次々とオープンし、飲食の町として再生した蒲生4丁目の一角

 戦時中の空襲を免れた古民家が数多く残る大阪市城東区蒲生4丁目。通称「がもよん」と呼ばれるエリアでは、古民家をリノベーション(修復)し飲食店などを誘致する「がもよんにぎわいプロジェクト」が進む。下町の住宅街は、こだわりのある個性的な店舗が集積するエリアに生まれ変わった。

〜個性的店舗が集積〜

飲食店の町に

 プロジェクトは2007年にスタート。エリア内に多くの古民家を所有する癈c(すぎた)勘一郎さん(47)が、築120年の米蔵の活用法を、プロジェクト仕掛け人の和田欣也さん(52)に相談したのがきっかけだった。

 和田さんは城東区出身。1995年の阪神淡路大震災の体験を機に耐震診断士の資格を取得。耐震改修を施した上でイタリア料理店にしてはどうかと提案した。経営者はすぐに見つかり、08年にプロジェクト1号店「リストランテ イルコンティヌオ」がオープンした。

 「すぐにつぶれる」との周囲の見方に反して人気店に。和田さんは「エリアを中心に面で進めてみたら面白い」と感じ、改修した古民家にカフェや沖縄料理店、海鮮居酒屋、バーなどが次々とオープンした。「空堀町がアート、中崎町がカフェや雑貨の町ならここは飲食店の町にしようと思った」と振り返る。

自分のペースで

 「がもよん」スタイルの特徴は、店舗を誘致する際に住民の意見を反映させる点。住民が「あればいいな」と思う種類の飲食店であれば最初から需要があるというわけだ。さらに「同業者は誘致しない」「まちおこしに積極的に参加する」などのルールを決めた。店主同士の仲がいいのも競合しないからだ。

 誘致した店舗は現在33店。店主が協力して飲食、歴史文化、音楽イベントなどを月1回のペースで開き、地元住民との交流を深めている。

 近年はアパレルや民泊など飲食店以外の店も出店。糸の開発、販売などを手掛けるニッティングバードの斉藤愛美さん(33)は「店が町全体のコミュニティーの一つとして存在しているのが面白い。人と比べず自分のペースでできるかなと思う」と地域の魅力を語る。

五感で暮らせる町

 飲食店を中心に誘致してきた和田さんは「食を掘り下げる」試みに挑戦する。その一つが八百屋と食堂を兼ねた業種の誘致で、昨年12月「八百屋食堂まるも」がエリア内にオープンした。店長の石原聡志さん(53)は「地域に密着した形で営業できるのがいい。お客さんの反応もダイレクト」と話す。

 4月にはエリア内の空き地約400平方mに「がもよん農場」を開設。1区画を月貸しして農業の楽しさや食の大切さを学ぶ場所として活用したい考えだ。

 目下、和田さんの目標はプロジェクトの手法を全国に普及させること。「空き家対策にもなる」と講演などで全国を駆け回る。そして「がもよん」を「五感で感じる暮らしができる歴史文化を残す町」として「ライフスタイルを提案できる町にしたい」と抱負を語る。


町に新しい力

スギタグループ社長 癈cすぎた勘一郎さん

 プロジェクトのきっかけをつくったスギタグループの癈c勘一郎社長に町の変化や今後の展望を聞いた。


プロジェクトへ期待と展望を語る癈c社長
 ―プロジェクトが始まる前の町の印象は。

 昔から、地元の方の活動が活発で、地域の祭りなど町会長さんが盛り上げたり、サポートしたりしている。ただ、地元の人が蒲生で食事しようかといったことはなく、隣の京橋に行くことが多かった。地域外の人からすると通過点で、自動車を運転される方は国道の標識で認識するくらいの印象だったろう。

 ―がもよんプロジェクトをどう見ているか。

 地域外の人が町を気に入って来てくれて新しい力が生まれ、うまくかみ合ったのだろう。自分は古い建物の良さを後世に残したいとの思いだけだった。これほど大きなことになるとは思わず、びっくりしている。ただ、われわれは家主なので、後方で応援する立場。

 ―住民の反応は。

 小さな子どもをつれて京橋を歩くのは大変で、この地域のお母さん方から近くでお茶ができてうれしいといった声もあり、喜ばれている。古民家が多いと町に明かりが少なくなるが、新しく店が入ることで明るくなる。店の人も子どもの見守り活動をしており、治安面も良くなっていると感じる。

 ―今後の展望と期待を。

 町を盛り上げてくれている地域の方と、新しくできた店の人たちがもっとコラボレーションしてより一層楽しい町にしてもらいたい。新しいマンションもできている。そこの人たちはイベントなどでこの町を知ってほしい。


若者が増え活気が生まれた

和菓子店 梅屋 (上の地図 15)


▲菓子を通じて蒲生4丁目をPRする谷口さん

 1967年創業の和菓子店「梅屋」。「食べてほっとしてもらいたい」との思いを込めた商品は全て手作りで、常連客はもちろん、最近は食への意識が高い子育て世代の客が増えている。

 販売する「かりんとうまんじゅう」や「桜餅」は国産の原材料にこだわり、小豆が高騰しても価格は消費税5%時代のまま。かつて柿の苗木を持って嫁入りしていた風習にちなんで命名した「嫁子柿」は干し柿の中に白あんと栗の甘露煮を詰め、贈答品に好評だ。

 地域のPRをと生地に「がもよん」の焼き印を押した三笠(どら焼き)、大山乳業(鳥取県)の白バラ牛乳を使ったパウンドケーキ「蒲生四丁目たまご番地」など、がもよんにちなんだ商品開発にも力を入れる。

 町の移り変わりを見てきた店主の谷口忠良さん(83)は「がもよんプロジェクト」で「通りを歩く若者が増えてきた。活気が生まれてきた」と笑顔を見せる。


インバウンドの取り込み目指す

ゲストハウス 宿本陣 幸村 (上の地図 28)


▲戦国時代を題材にしたゲストハウス「宿本陣 幸村」の内装

 戦国武将、真田幸村をテーマに築100年以上の古民家を改装したゲストハウス「宿本陣 幸村」は2月1日オープン。赤を基調とした内装が特徴で、戦国時代の合戦の様子が壁一面に墨絵で描かれている。陶器製の風呂釜や野点を再現したリビングなど館全体が「和」のテイストでまとめられている。

 延べ床面積89平方mの建物を1棟丸ごと貸し出す。障子で仕切った2部屋にそれぞれローベッドを配置。国内外で活躍する墨絵師、御歌頭(おかず)さんが幸村と徳川家康の合戦の様子を内壁全体に直接墨で描いた。

 陶器製の風呂釜のそばにししおどしを設置。モミジとサクラの花をデザインした壁紙を使ったリビングは、座敷に赤い傘を立て野点の雰囲気を表現した。

 隣接する既存の「宿本陣 蒲生」も築100年以上の古民家を修復したゲストハウス。2棟目の「幸村」を加えてインバウンド(訪日外国人客)の取り込みを図る。


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