週刊大阪日日新聞

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2019/1/26

弁護士対談
弁護士の理念と報酬 バランスをどう保つか

収入得る仕組みを構築し、理念にも邁進を

 前回(2018年12月22日号)に引き続き、関西学院大大学院司法研究科(ロースクール)で教授を務める池田直樹弁護士と、法曹としての理念に燃える牧尚人弁護士が対談。今回は、弁護士としての理念に邁進する一方で、生活のために報酬も得ていかなければならない現実の課題に対し、うまくバランスを保つにはどうすればよいかを導き出す。


牧法律会計事務所 代表
弁護士 牧 尚人さん

 池田先生は1988年に「過労死110番」の活動を始めたと言われました。内容を聞かせてください。

池田 当時は好景気に沸くバブルの最中。「24時間戦えますか」のCMが流れた頃です。一方で、働き過ぎによって亡くなる人も増えていましたが、当時は過重労働がなかなか認定されなかった。そこで、先輩の弁護士と一緒にホットラインの電話を開設したところ、相談が相次いだんです。夫を亡くし、1歳児を抱えた母親の相談にも応じました。その母親とは今でもお付き合いがあります。当時1歳だったその子も成長し、結婚式にも出席させてもらいました。しかし、世界的に見て、日本は今も「ワーク・ライフ・バランス」が遅れている国だと感じます。

 池田さんは93年に米国のミシガン大ロースクールを卒業されました。ミシガン州の司法試験に合格し、現地の法律事務所勤務の経験がありますね。

池田 一番印象に残っているのは、米国人の元夫から我が子の親権を取り戻そうとする日本人女性の弁護を担当したことです。判決で、母親は我が子を取り戻し、日本に連れて帰ることができました。母親が1年ぶりに我が子と再会し、頬ずりしながら「何、食べたい」と聞きました。その時、子どもはどう答えたと思いますか。「マミーズ ミソスープ」でした。その姿を見て私は涙が止まりませんでした。ペーパーワークの仕事は大切ですが、こうしたドラマのある仕事はやりがいがあります。まさに、弁護士の醍醐味(だいごみ)です。

 私は弁護士になり12年目に入りましたが、日々の活動を通して弁護士としての理念が薄れていくことを懸念しています。正直に言って、生活のため「お金」を稼がなければいけないのも事実です。池田先生は弁護士としての理念と、お金を稼ぐことのバランスをどのように保っていますか。


関西学院大大学院司法研究科 教授
弁護士 池田 直樹さん

池田 私の場合、弁護士の仕事を3分の1ずつに分けて考えています。その一つはロースクールの教授として後進を育成すること。2つ目は環境問題に取り組む。3つ目がビジネスローヤーとして、きちんと対価を得ることです。この3点の仕組みが大切だと思います。

 環境問題について聞かせてください。

池田 ダイオキシン公害、土壌汚染公害の調停や一般廃棄物処理施設の住民訴訟などを巡って自然保護団体側、住民側の弁護活動を続けてきました。報酬を考えると、割に合わないかもしれません。それでも、私は開発者側の弁護はしない。これも、弁護士としての私の理念です。
 私は松山市の出身で、自然豊かな土地で育ったからかもしれません。今でも、飼い犬を連れて近所の森林公園を散歩するのが大好きです。ただ、弁護士の報酬がしっかり確保できる仕組みを作らなければ、環境問題に向き合う弁護士の確保が難しくなることが考えられます。

 どんな仕組みが必要でしょうか。

池田 例えば、不特定多数の人がインターネットを通して資金を提供するクラウドファンデングも一つの手だと思います。自然保護活動に共感する人たちを募る。募金活動には限界がありますが、クラウドファンデングには広がりがあります。
 地球温暖化対策に、政府は2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指すとしています。環境問題への関心は今後ますます高まるはずです。

 池田先生は、他の弁護士があまり取り組んでいない環境問題に目を向け、さらに報酬を得る仕組みも考えておられますね。報酬に直接結びつかなくても意義のある仕事をする一方で、きちんとした仕事の対価を得ることの重要性を再認しました。

池田 プロとして仕事する以上、正当な報酬を求め、依頼人と対等な関係を保つことは大切です。

 最後に一つ聞きたいことがあります。私は四六時中、仕事のことが頭から離れず、時に息苦しさも感じてしまう。池田先生はそんなことがありませんか。

池田 プロになることは、仕事の失敗を引きずらないことです。失敗を忘れることが平気になってしまうのは問題ですが、頭の切り替えは必要でしょう。
 かつて、民事再生を申し立てたビジネスホテルの代理人を引き受けましたが、「2次破綻」が起きそうになり、私は鬱(うつ)状態になりかけました。その時、周囲の人たちが「責任を背負っても仕方ない」「自らを当事者化するのではなく、代理人だと割り切りなさい」とアドバイスしてくれました。ある人は「抱き枕」をプレゼントしてくれました。ユーモアと気遣いに救われた気がしました。失敗したときは、「すみません」と謝ることも大切です。嘘(うそ)をつけばつくほど、隠せば隠すほど、どつぼにはまっていくのはどの仕事も同じだと思います。プロの意識を持って仕事していきましょう。

 本日はどうもありがとうございました。


牧尚人(まき なおと)プロフィル

 仕事を通じて、まだまだ弁護士には相談しにくい、あるいは弁護士の仕事は遅いと思う人が多いと感じ、気軽に相談できるように2回目の相談まで無料で受付。加えてスピーディな対応をウリにしている。業務の遂行には、依頼者の負担を軽くするため、手を煩わせることは最小限に、ムダな費用も省くよう心掛けている。

牧法律会計事務所
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