週刊大阪日日新聞

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2019新春号

大阪発・論点 「野分」 

近畿財務局職員を死に追いやったもの 〜森友事件の本質とは〜

 私がNHKを辞め大阪日日新聞に移籍した最大の目的は、記者として森友事件の取材を続けることです。その中でずっと頭に残っているのが、自ら命を絶った近畿財務局の上席国有財産管理官、Aさんの存在です。Aさんはなぜ改ざんに関わることになったのか? 財務省の調査報告書や関係者への取材を通じて新事実が見えてきました。

 森友学園に小学校の用地として売却された国有地が、地中のごみの撤去費用を名目に8億円余りも値引きされていたことが明らかになったのは、去年2月10日。小学校の名誉校長に安倍昭恵首相夫人が就任していたこともあり一気に政治問題化します。国会で追及された安倍首相が「私や妻が関係していれば総理大臣も国会議員も辞める」と答弁したのは17日。土日を挟んで20日には財務省が学園側に「トラック何千台もごみを運び出したことにしてほしい」と、口裏合わせを求めます。ごみを本当に撤去したように装いたかった訳ですが学園側に断られます。

 24日には佐川宣寿理財局長(当時)が「学園との面会記録は廃棄した」と答弁。その一方で部下に、残っている記録があったら破棄するよう指示しています。一方、安倍首相はこの日の答弁で森友学園の籠池泰典理事長(当時)のことを「非常にしつこい」などと一転して批判に回った上で、昭恵夫人の名誉校長就任は「断ったのに講演で紹介され受けることになった」と籠池氏の強引さを強調していました。

 公文書の改ざんが始まるのは、この2日後の26日です。この日は日曜日でしたが、本省理財局は近畿財務局の担当者に出勤を要請しました。首相や佐川局長の答弁と整合性をとるため、月曜日まで待てないほど急いだのでしょう。どこをどう書き換えるのか、事細かく指示が出ました。

 実はこの日呼び出された担当者の1人がAさんだったのです。その後、3月7日から8日にかけても「書き換え案」という形で、さらなる大幅な改ざんの指示が本省から来ました。Aさんの「上席」というポストは本省の指示と現場との摺(す)り合わせが求められる役職で、大抵の人は指示に従います。しかしAさんは「これはおかしい」と意見するタイプだっただけに、改ざんという不正に手を染めることが許せなかったのでしょう。財務省の調査報告書にも「配下職員」という表現でAさんの抵抗の様子が記されています。

 〈近畿財務局の統括国有財産管理官の配下職員は、そもそも改ざんを行うことへの強い抵抗感があったこともあり、本省理財局からのこの度重なる指示に強く反発し、3月8日までに管財部長に相談をした〉

 けれども最終的に改ざんの方針は覆りませんでした。不本意な仕事をさせられたAさんは次第に体調を崩して休職に追い込まれ、改ざんが発覚した後の今年3月7日、苦悩の末に命を絶ったのです。

 森友事件の本質は、なぜ国は国有地を安値で売ったのか、なぜ大阪府は無理をして小学校を認可しようとしたのか、その2点に尽きます。その謎を解明することは、失われた一人の尊い命の無念の思いに応えることでもあります。国の最高責任者は安倍首相、大阪府の最高責任者は松井一郎府知事。この2人が説明しないなら、私たち記者が真相を取材するしかありません。

(大阪日日新聞論説委員・記者 相沢冬樹)


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