2017/5/27

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
アニサキス 食中毒急増 生魚に寄生、激しい胃痛

 胃に入ると激痛やおう吐を起こす魚介類の寄生虫「アニサキス」。最近、タレントの渡辺直美さん(29)や南海キャンディーズ山里亮太さん(40)、品川庄司の庄司智春さん(41)たちが感染をブログなどで報告して、一躍有名になったね。2007年に厚労省に報告された発症は、全国でわずか6件。でも昨年は20倍以上の124件に急増したんだ。ただ、胃けいれんと思われがちだから、実際には年間7000件に上るという推計もあるよ。今年はもっと増えそうで、特に5、6月は増加時期にあたるから注意が必要だよ。

アニサキスをどう防ぐ? 官民、そして家庭で撃退

 急増している「アニサキス」。実は私も数年前に感染して痛い思い≠した一人だよ。このときは「鮭氷頭(さけひず)」と呼ばれる珍味、半解凍したサケ頭部の軟骨を食べてから6時間後に突然、胃袋をわしづかみされたような激痛に襲われたんだ。心臓発作が疑われるほどの状況で、冷や汗を流しながら救急車で大きな病院へ。やがて胃カメラで調べるとアニサキスの幼虫が見つかったんだ。

 すぐに口から遠隔操作の鉗子を入れられ、はさんで取り除いてもらうとウソのように痛みがパッと消えたんだ。そのとき医師に試験管の中でうごめく1cmちょっとのアニサキスを見せてもらい、本当にゾッとしたことを覚えているよ。

 医師に教えてもらったのは「日本は刺し身などで生魚を食べる習慣があるから特に多いんですよ。魚介類に付く寄生虫の被害は、アニサキスが一番多いけれど、虫の種類は結構多くて危険な物もあって。酢でしめたり、しょうゆをつけたり、わさびを付けたくらいでは死なない」ということ。

 通常は魚介類の内臓部分に多く生息しているけれど、魚が死んだら虫は筋肉部、つまり刺し身になる部分に移動してくるんだ。それでは、「食べる前に目で見れば」と思うかもしれないけれど、一見糸くずみたいだから非常に分かりにくい。確実に虫を退治するには、70度以上で1分以上加熱するか、24時間以上の冷凍が必要だよ。

新鮮な魚が食べられる一方で…

 食中毒というと、なんだか食材の「保存状態が悪い」とか「傷んでいる」というイメージだけど、寄生虫に限ると新鮮な魚介類に寄生していた虫が、そのまま口から体内に入る≠ニいうケースがほとんどなんだ。

 以前は鮮度を保つのに、業者は魚介類を買い付けると急速冷凍で保存していたから、この時点で寄生虫は死滅していたんだ。ところが最近は流通が進歩したので、スーパーや料理店も冷凍せずに新鮮なまま刺し身などで提供できる。だから虫が生き残るリスクが増えたんだ。アニサキスは食中毒のカテゴリーに入るため報告義務があり、スーパーなどの小売店は営業停止などの行政処分を受ける危険性があるので、器具や目視で十分対策しているがなかなか完璧という訳にはいかない。

 特に新鮮なサバは、刺し身に近い薄じめで食べる時があるけれど、虫のいそうな内臓は必ず取り除いて。筋肉部分に虫が移っている可能性があるので厳しい目視が絶対に必要。間違っても「虫がいてもよく噛めば死ぬだろう」と思わないこと。虫は弾力があって、噛んでも死なないことがあるからね。

 イカに寄生するとどちらも白くて分かりにくいから光に透かすといいよ。色のついたまな板を使うのも効果的だ。糸くずのような線が見えたら要注意。

なんで激痛が起きる?

 ところでアニサキスで胃の激痛はなぜ起こるんだろう? この虫は胃酸に弱いから胃の壁に頭を突っ込んで懸命に逃れようとするんだ。それを人体が異物と認識するから、胃酸やヒスタミンを分泌して撃退を試みる。これを抗体反応(アレルギー)と言って副作用として猛烈に痛むんだ。時間を置いて波のように痛みが襲ってくるから、胃けいれんと誤って処置されてしまい、アニサキスに気付かなかったケースも多いと見られているよ。

 ちなみに人体内では幼虫は長く生きられない。まれに腸に到達することはあるけれど、ほとんどは投薬で、長くて1週間もすれば死滅する。ただし、まれに開腹手術が必要となるケースもあるから、「放っておけばそのうち治る」と甘く見ないでね。

家庭でできる対処法

 家庭でできる対処法も紹介しておくよ。どの家にもある「正露丸」(大幸薬品)は、一定の効果のあることが厚労省への届け出で立証されているんだ。またツムラの漢方顆粒薬「安中散」(5番・胃酸過多薬)も幼虫の動きを鈍らせる効果がある。夜中の急な発症は慌てるよね。アニサキスは胃痛とおう吐などだけの症状が特徴なので、これらの薬で一時的に抑えることができるんだ。

 ただし、下痢や発熱の症状があれば、他の原因かもしれないので素人判断をしないようにね。


<食中毒の種類>

【細菌性・毒素型】

 一番有名なのは黄色ブドウ球菌。人の皮膚から食品に移って増殖。仕出しなどの食中毒は大半がこれ。ボツリヌス菌は、1984年に熊本のからしレンコンで11人が亡くなった。

【細菌性・感染型】

 腸炎ビブリオは、海水の中にいて未加熱魚介から。サルモネラ菌とカンピロバクターは生肉から。病原性大腸菌はO157が有名で、感染源特定が難しいから厄介。

【ウイルス性】

 ノロウイルスが悪名高い。感染力が強く人から人に移るため極めて危険。

【動物性自然毒】

 毒キノコの菌類系。チョウセンアサガオやトリカブトなどの植物系。フグなどの魚類系。貝類の貝毒などがある。

【寄生虫】

 肝臓ジストマは生煮えのタニシなどから感染、肝硬変を起こすから恐い。アニサキスは生のサバ、サケ、サンマ、アジ、イカ、イクラなど。

■厚労省が勧める「家庭でできる食中毒予防」6つのポイント

@ 購 入 時

消費期限などチェック。保冷剤を上手に使おう。

A 家 庭 で

冷蔵庫温度管理を。生ものと加工品の接触に注意。

B 下 準 備

食材、調理器具やタオルを/よく洗って、清潔に。

C 調 理

加熱時は念入りに。電子レンジはムラ焼けに注意。

D 食 事

常温放置はダメ。食器や手を清潔に。

E 残った食品

食べる時再加熱徹底。小分けで清潔に冷蔵庫保管。