2017/4/8

来る南海トラフ大地震への備え 過去の体験を学んで生き抜け!

 近く発生が予測される南海トラフ巨大地震に対して、必要なのは防災意識の喚起だろう。地震、それによる津波など、来るべき時への心構えこそが、防災力の底上げになり、命を守ることに繋(つな)がるからだ。世界的に知られる「防災教材」や活発化してきた大学の防災面での地域連携などを取り上げた。

「稲むらの火」


▲1937年発行の国語教科書

 日本の醤油誕生の地として知られる和歌山県湯浅町の南に、隣接する広川町。人口が7000人ほどの小さな町だが、ここは「防災を考える」うえで重要な土地である。

 同町の西側に広がる湯浅広港に向って進むと、これ以上の進入を拒むかのような赤い鉄扉が現れ、その両側には松並木を前にした堤防が延びる。高さ5m、長さ約600m、幅20mの「広村堤防」。国内外の教科書に掲載されるなど、「防災教材」として世界的に知られている「稲むらの火」のモデル、浜口梧陵が巨額の私財を投じ、約4年をかけて築き上げたものだ。

 古より幾度となく津波に見舞われてきた歴史を持つ広川町。「稲むらの火」は1854年の安政南海地震で、津波来襲時に稲むらに火を放って、村人を救ったという出来事をもとにした物語。 この津波で当時の広村のほとんどの家屋が被災し、再起不能といわれた。そこで「100年後の次の大津波に備えて」築いたのが、この堤防であった。


▲92年後に効果を示した広村堤防

 そして安政南海地震から92年後の1946年に昭和南海地震が発生し、約30分後に高さ5mほどの大津波が村を襲った。波は堤防にさえぎられ、南西側の川に沿って村に侵入し、堤防の外側に建てられた中学校や紡績工場とその社宅を襲ったものの、村の居住地区の大部分は広村堤防に守られた。堤防は歴然とした効果を示したのである。


▲濱ロ梧陵記念館と津波防災教育センターから成る「稲むらの火の館」

 「稲むらの火」は小泉八雲の英文を地元出身の小学校教員が再構成して、教材として応募。年代や場所も省かれた普遍的な話とした。1937年文部省発行の小学校国語読本巻十(5年生用)に採用、1940年まで用いられた。さらに2011年度の小学5年生用教科書に「百年後のふるさとを守る」のタイトルで、一部が採録され、64年ぶりに復活している。

 広川町には、防災体験室などを備え津波防災のあゆみや防災精神を継承する「津波防災教育センター」と、濱口梧陵記念館を併設する「稲むらの火の館」(崎山光一館長)があり、津波から命や暮らしを守る術が学べる。また「稲むらの火」の避難場所となった「広八幡神社」(佐々木公平宮司)や、梧陵が開いた私塾の後継である耐久中学校の銅像、広村堤防の「感恩碑」などもあり、防災を考える一日には絶好のロケーションとなっている。


▲築堤作業を再現したジオラマ(「稲むらの火の館」館内)


避難所は自分たちで

奈良大学 社会学部心理学科
西道 実教授

 避難所は、一般的には行政が開設するものだと思われているが、そうではない。例えば台風といった事前に予想できることならば、そうなのだが、大災害の場合には行政も被災者であって、対応できない。

 となれば、自分たちが主体的にやらなければ仕方がない。また実際にそうやっている。だから日常的に普段から、もしもの時にどうするのかを考えておくことが大事になる。

 多くの避難所は学校や公民館などの公的施設だが、その管理者は仕組み的に避難所の運営には関われないようになっている。

 しかし学校の使い方を最も知っているのは学校の先生であって、先生が指示すれば避難者も指示に従う。つまり施設管理者が避難所の立ち上げなどの初動には積極的に関わるべきだ。

 家庭内防災も重要である。まず救援物資はない、すぐには届かないという事実を知り、自分で何がいるのかを考えて、用意しておく。最低限、水と明かりだけは確保する。それとわが身を守るために、どこへ行けばよいのか、考えておいてほしい。そうすれば避難所にも興味が持てるはずだ。


過去の災害を学ぶのは無駄ではない

「両川口津波記」石碑

 大阪市内にも安政南海大地震の津波被害を教訓として生かすために、後世に語り継ぐモニュメントが存在する。木津川に架かる大正橋の東詰(浪速区側)に立つ「大地震両川口津波記」の石碑だ。すでに150年以上の歳月を経ているが、地元住民(記念碑保存運営委員会)によって石碑は洗われ、刻まれた文字に墨が入れられ、教訓は現在に伝えられている。


▲教訓を伝える「両川口津波記」の碑

 安政の大地震で大阪では甚大な犠牲者が出た。死者のほとんどが地震を恐れて、小船で川へ避難した人たちが津波に襲われた溺死だった。かつて宝永地震でも同じような被害が発生しており、過去の教訓が生かせていなかった。

 碑文は「船に乗るべからず」と警告している。そして年月を経ると教訓を伝え聞く人がまれであると-記し、読みやすいように碑文に墨を入れ、伝えて欲しいと結ばれている。

 2004年のスマトラ島沖地震で、10歳の少女が、地震発生で海に異変が生じたのに気付いた。学校の授業で習った津波の前兆≠ナある知識を思い出し、100人以上の観光客の命を救い話題になった。

 記憶は風化する。教訓が伝わっていないことが多い。過去の災害がどんなものであったか、将来にどんなことが役立つのか、を考えて記録(ささいな内容でも)しておくことは大切であり、貴重な財産である。

 もちろん地震、津波は毎回、規模が違えばパターンも違う。必ずしも過去の体験が生きるわけではないが、繰り返し防災を学習することは決して無駄ではない。

 南海トラフ巨大地震は必ず起きるといわれている。子どもらが災害からおのれを守る力を育てるのは、社会の責務だ。


大学の地域防災拠点化進む

大市大は防災リーダー育成

 全国の大学で地域の「防災」拠点となる取り組みが進められている。

 東日本大震災を機に「都市防災教育研究センター(CERD)」を立ち上げ、災害死ゼロをミッションに、「いのちを守る都市づくり」をテーマに、大阪市立大(住吉区杉本)もこの数年、積極的に防災での地域貢献活動に取り組んでいる。

 なかでも力を注いでいるのは、独自に開発した「コミュニティ防災教育プログラム」を用いての地域住民への防災教室だ。自分が住む街の災害リスクを学ぶ「リスク学習」、避難体力や災害医療、傷病者搬送、車いす使用者の移動、 避難所開設、給食などの「対応訓練」、防災マップづくりの「環境改善」を柱に、防災リーダーを育成し、組織や団体を地域の防災拠点「いのちラボ」として認証する。

 すでに地元住吉区を含めた市内南部6区と協定を結び、活動を展開させており、地域防災リーダー1000人の育成を目指している。また傷病者救助や物資の確保などの課題を達成しながら、目的地にたどり着くといったアクティブラーニング型災害訓練を、住吉中などの中学校と協力して実施した。

 さらに今年度からは、大学の授業を地域住民に開放するかたちで、日本防災士機構の「防災士」資格を取得できるようにも取り組んでおり、地域住民9人を含む26人が取得している。

 一方、「地域防災には力を入れている」(同大広報課)という東淀川区大隅の大阪経済大は東淀川区と「災害に強いまちづくりに関する連携協定」を結び、大学北側の歩道を防災拠点として整備する計画を進行中である。

 防災拠点となるのは、現在は市が所有する歩道で、今年7月にも大学に払い下げられる予定。歩道にはサクラを移植し、公開空地として地域に解放される。地域と大学が一体となったイベントの開催も可能で、東西約180mに、非常時にはカマドとして利用できる「防災ベンチ」を9つ設ける。大学施設を災害時の支援拠点や防災情報発信施設として、地元に提供することも、協定には盛り込んでおり、地域の防災拠点へ進化中だ。


防災に備える保障

選ぶポイントは?

 地震、津波、台風、火災などいつ発生するか分からない自然災害。いざという時の「保障」を考えるにあたって大切なポイントを全労済共済ショップ梅田の岡美里さんに教えてもらった。

なぜ保障が必要なのか?

 住宅がなくなった場合、元通りの生活をするために、貯蓄でまかなえない部分をカバーするのが保障の役割です。全労済では、お住まいの広さや世帯の状況により生活再建のための「必要保障額」を設定しています。お気軽にご相談ください。

自然災害に備える保障はどんなものがある?

 全労済には、新火災共済と新自然災害共済をあわせた「住まいる共済」があります。また、近隣への延焼による損害に対応した「類焼損害保障特約」や、賠償責任が生じるもしもの事故に備えた「個人賠償責任共済」などの特約もあります。

相談はどこでできる?

 大阪市内には、梅田、谷町四丁目、なんばの各駅近くに「共済ショップ」を構え、専門スタッフに保障の相談をしていただけます。中でも梅田は平日午後7時、土曜は午後6時まで営業しています。ホームページや電話での予約もできます。お仕事帰りやお買い物がてら、気軽に立ち寄っていただきたいですね。

読者にメッセージを。

 全労済は、63年前の1954年に大阪を発祥の地とする、助け合いから生まれた保障の生協です。当初は火災共済事業から始まり、地震に対応する保障はありませんでしたが、阪神・淡路大震災を機に自然災害共済ができました。自然災害が多発する中で、住まいの保障を備えていない方(無保障者)をなくすことが全労済の役目であると考えています。


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