2017/3/25

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
地下鉄民営化で何が変わるの?


大阪市営地下鉄の御堂筋線心斎橋駅

 大阪市営地下鉄が来年4月から民営化することが決まったけれど、そもそも「なんで民営化するの?」を今号で解説しよう。気になる運賃やサービスについても、1年後の地下鉄とバスの姿をシミュレーションするよ。

 そもそも民営化の話は今から15年ほど前にさかのぼる。2002年度までに赤字が3千億円近くに膨らんでいた市営交通を、当時の関淳一市長は国鉄が民営化したときと同じように「これ以上、行政で面倒を見切れませんよ」という感じで切り出したんだ。

 しかし、市議会などの反対に遭い、次の平松邦夫市長も消極的だったから、構想は立ち消えた。でも03年度以降の市営交通はずっと黒字で、10年にはたまった赤字を解消できるところまできた。だから橋下徹市長が都構想を実現し都営交通≠ニいう構想に意欲的だったんだ。

民営化で大胆改革 一方で、市民サービスの低下も

〈夢に終わりそうな地下鉄延伸計画〉

 今回、吉村市長に引き継がれた維新市政が再び民営化にかじを切った理由はいくつかあるよ。少子高齢化もあって、今後10年で利用者が1割近く減る試算があったから。それに代わる収益の柱を見つけたいけれど、公営のままでは「収支トントン、大阪市民へ公平に」という行政の大原則があるから「大胆な改革はできない」という結論だった。それでは民営化後のゆくえを占ってみよう。

民営化で活性化

 これまで市交通局が中心となって進めた「オスカードリームビル」(住之江区)と「フェスティバルゲート」(浪速区)はいずれもずさんな計画で失敗。民間企業で取り組めば駅ナカスペースや駅周辺の土地活用をもっと積極的にできるからね。

 すでに駅コンビニは今春からファミリーマート+ポプラからローソンに完全切り替え。8月までに44店すべてが移り、7年間で37億円余が契約金として市にもたらされる。公営では入らない鉄道会社からの税金が、国からの交付税減免と相殺しても年間40億円程度真水≠ニして市に入っているのもメリットさ。

■市営地下鉄と関西私鉄の比較
(2015年実績データから)
収益(億円) 年間輸送
者数(億人)
営業キロ数 従業員数
市営地下鉄 1,561 8.86 138 5,328
近 鉄 1,559 5.74 501 7532
阪 急 1,031 6.45 144 2,989
南 海 586 2.33 155 2,567
京 阪 541 2.88 91 1,563
阪 神 349 2.34 49 1,438
収益至上主義に?

 利用者に直接関係のあるサービスや運賃はどうなるだろう。もともと他の私鉄よりも割高だった運賃は、3年前から少しずつ値下げしている。1区が200円から180円に、2区も今月240円から230円に引き下げた。サービスの面では、トイレの改修や終電の延長はすでにやっているし、どうも目新しい物が見当たらない。一方で、直接収益につながらないという理由で高齢者市民割引が廃止されたり、ホーム開閉扉の設置が先送りされたりするかもしれないね。

 あとは、交通局の職員は公務員から会社員に変わるわけだから、いったん退職するので退職金も必要だ。5000人規模の転籍で、約1000億円を一括して支払わなければならない。借り入れしている企業債の約5000億円も市中銀行から借り替えして一括返済が求められる。これでは新会社は、内部留保も十分ないまま多額の借金を抱えてスタートするしかないので、新規事業の見送りも無理ないだろうね。

民営化後は合理化

 30年前に国鉄からJRに民営化した例をみてみよう。JR東海は、ドル箱の東海道新幹線を抱え、在来線は名古屋地区など3県だけで効率がよく、超優良会社だ。逆に赤字ローカル線を大量に抱えたJR北海道とJR四国には収益の柱がないから、こうした路線を次々に廃止したり民営化したりしても黒字にはほど遠い。

 大阪地下鉄の場合、ドル箱は御堂筋線で「100円もうけるのにいくらかかるか?」という営業係数は45の超優良ぶり。堺筋線、谷町線、四つ橋線、中央線も黒字。赤字なのは、近鉄難波線・阪神なんば線と競合している千日前線、キタやミナミの私鉄ターミナルと直結していない長堀鶴見緑地線と今里筋線、南港地区の新交通システム・ニュートラムの4路線だ。

 一括管理が原則で切り売りできないから、堺筋線が阪急千里線、中央線は近鉄けいはんな線と相互乗り入れして黒字化したように、不採 算路線は他社とつないで以遠権を発揮しないともうからない。

 大阪市議会で公営廃止の議決が通ったのは与党の維新・公明に加え自民の賛成があったから。自民は最新の今里筋線の将来延伸確約に最後までこだわったが、吉村市長は玉虫色の結論しか示さずじまいで実際には、凍結に近いニュアンス。地下鉄は路面電車や公道を走るバスと違って事後の廃線は困難だから、民営化後ももうからない路線を合理化し維持し続けるしかない。

 現在の地下鉄で市内24区のうち駅がないのは西淀川区と此花区だけ。公営時代に地元市議の要求を受け入れて、目一杯路線拡大した結果だよ。橋下市長時代に示されたさらなる延伸の計画はこの際凍結し、利用者の多いターミナルの駅ナカや周辺での収益事業を民間ノウハウでどんどん開発しなければ将来の利用者減による大波到来に対抗不可能になる。

 今でこそ守口、吹田、東大阪、堺、八尾、門真の隣接各市に乗り入れしているが、1970年大阪万博の際には大阪市外にあった会場への直接乗り入れを渋り、吹田と豊中両市内だけわずか3駅の北大阪急行を別会社として設立させるほど大阪市モンロー主義=i19世紀モンロー米大統領による孤立主義を指す)的な自意識が強かった。東京の地下鉄に比べ、相互乗り入れが一向に進まなかった弊害もここに起因しており「今後どうするか?」は経営安定に欠かせない。