2017/3/25

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
韓国・朴(パク)大統領が罷免

どうなる? 今後の極東アジア

 韓国の憲政史上、初めて大統領を辞めさせられた朴槿恵(パククネ)さん(65)。親友≠ニいわれる女性実業家の利益のために、大統領の地位や権力を乱用するなど憲法に違反したとして、憲法裁判所が決定を下したんだ。次の第19代大統領は5月9日に決まるとみられているよ。

 最近の韓国は、経済が伸び悩んでいて若者の就職難も深刻なんだ。不満だらけの中で大統領がらみの醜聞が出たものだから、国民の怒りが一気に爆発してしまったんだよ。

 次の大統領として有力なのは革新系の4人。そもそも韓国は保守系と革新系が交互に政権を担っている。1998年からの10年間は、金大中(キムデジュン)・盧武鉉(ノムヒョン)の革新系2人が。その後の9年半は李明博(イミョンバク)・朴槿恵の保守系2人ときたから、次は革新系になるのは確実さ。

 戦後独立から脈々と続いた保守系政権の流れはここでいったん断ち切られ、金大中の革新系路線を継承する南北対話路線≠フ新大統領に戻るよ。

 新大統領に代わることで今後の日韓関係はどうなる?北朝鮮は暴走しているし、勢力を伸ばす中国の動きも気になる。日本を取り巻く極東アジアは今後どうなって行くんだろう。各国の思惑を眺めながら問題を整理してみよう。

 そういえば韓国の大統領って、なぜ任期が終わる間際にいろんな問題が起きるのかを知っているかな? 理由は2つあって、一つは大統領に権力が集中し過ぎるからなんだ。国会議員は国民に選ばれた大統領側につこうと思って、選挙のたびに離合集散する習性がある。だから本来、大統領をチェックしながら政策を提案するという政党政治のカタチになっていないんだ。

 もう一つは大統領の側近や閣僚は、その大統領の地縁・血縁・学閥で占めるのが韓国のお国柄だから。その恩恵から外れた者が「次こそ…」と一生懸命に現職のあら探しをするんだ。

 日本人が分かりにくいのは、「そもそも日本は韓国と一度も敵対していないのに、なぜ反感を持っているの?朝鮮戦争で敵対した北朝鮮と中国には親しみを覚えているのに…」という点じゃないかな。このことについて、私の親しい韓国の外交官はこう話しているよ。

 まず北朝鮮については「同胞である北(朝鮮)には、日帝が支配 (戦前の日韓併合時)していたとき、徹底的に抗日運動を繰り広げたことに対して敬意を払っている」そうだ。日本への反感については「確かに韓国民は安倍首相ら日本右派勢力への強い警戒感がある。だが今の安倍政権は、韓国の本当の姿以上に反日≠フイメージを増幅し過ぎている。特に南北対話路線の革新系をかなり毛嫌いしているが、よく思い返してほしい。歌や映画などの日本文化を国内に解禁したのは革新系の金大中時代だ」。中国については「単に経済的に無視できない隣りの大国にすぎない」のだそうだ。

歴代韓国大統領の退任後

1〜3代 李承晩(イスンマン)
在任期間
1948〜1960年
軍事境界線「李ライン」を設定。学生デモで失脚、亡命先ハワイで死去。
4代 尹ボ善(ユンボソン)
1960〜1962年
民主化運動の闘士。軍事クーデターで失脚。
5〜9代 朴正熙(パクチョンヒ)
1963〜1979年
高度経済成長の立役者。元軍人で、在任中に側近に撃たれ暗殺。
10代 崔圭夏(チェギュハ)
1979〜1980年
官僚出身の元首相。軍事クーデターで失脚。
11、12代 全斗煥(チョンドファン)
1980〜1988年
元軍人で軍事クーデターにより台頭。学生デモ鎮圧強行で死刑判決後、恩赦。
13代 盧泰愚(ノテウ)
1988〜1993年
88年ソウル五輪組織委員長。退任後、不正蓄財などで逮捕、有罪後特赦。
14代 金泳三(キムヨンサム)
1993〜1998年
30年以上続いた軍事政権から脱却した文民政治家。次男や側近が収賄で逮捕。
15代 金大中(キムデジュン)
1998〜2003年
「金大中事件」で知られる日本と関係の深い野党系政治家。息子3人が収賄で逮捕。
16代 盧武鉉(ノムヒョン)
2003〜2008年
初の戦後生まれの人権派弁護士。弾劾訴追されるも棄却で任期全う。退任後親族や側近逮捕で投身自殺。
17代 李明博(イミョンバク)
2008〜2013年
在日韓国人2世初の大統領。元ソウル市長。親族や側近が収賄で逮捕。
18代 朴槿恵(パククネ)
2013〜2017年
朴正熙大統領長女で初の親子二代にして初の女性大統領。側近逮捕で収賄容疑、初の弾劾罷免。

日本・中国・韓国・北朝鮮の思惑は…

【日本】

新政権との人脈を早々に

 安倍首相と朴大統領の関係は表面的には最悪に見えたけれど、実はその裏での外交実務はうまくいっていたんだ。慰安婦の問題は日本が基金を作って、韓国も大使館前の慰安婦像撤去に乗り出したし、北朝鮮関係の情報を共有する「ジーソミア」(日韓秘密軍事情報保護協定)も合意。北朝鮮ミサイルを撃ち落とすためのレーダーシステム「サード」を韓国内に配備することも決まった。

 でも、新大統領が「北朝鮮に配慮」すれば、これらすべてがご破算になるかもしれないね。

 慰安婦像問題などに反発した安倍首相は、駐韓大使と在釜山総領事を日本に一時帰国させたままだ。これまで北朝鮮のミサイル発射や金正男(キムジョンナム)暗殺など、タイミングは何度かあったのに、いまだに戻していない。

 今の韓国の内政を情報収集したり、次の政権との人脈を早々に築くためにも、早く大使たちを戻した方が得策だよ。


【北朝鮮】

韓国新政権から助け船?

 金正恩(キムジョンウン)政権は、金正男氏(キムジョンナム)の暗殺やミサイル発射、核実験とやりたい放題。この北朝鮮に対し、米中が圧力をかけ、国連も経済制裁を強めている一方で、「韓国の新政権が北朝鮮に助け船を出す」という不思議な構図になるかも。

 表向きには外交的な圧力をかけていても「本当は北朝鮮の崩壊を望んでいない」のが近隣他国の本音なんだ。もし崩壊してしまうと、多くの難民を受け入れなければならないなどいろいろと問題があるからね。その近隣他国の弱みを北朝鮮は知っているから、足もとを見ているのさ。


【中国】

北朝鮮は現状維持が理想

 経済は失速するし、中国にとって都合の悪そうな米トランプ政権は誕生するしと、内にも外にも悩みを抱える中で、朝鮮半島については現状維持が理想だと思っているよ。北朝鮮が崩壊して、米国の息のかかった韓国と国境を接するのは嫌だし、難民がドッと中国北東部に多い朝鮮族居住地域に流れ込むのも避けたい。

 金正男氏の暗殺後、息子のハンソル氏が安全な場所に身を隠すことができたのも、中国が裏で協力したからなんだ。「正恩政権が崩壊しても、一挙に韓国が半島統一するのではなく、ハンソル氏で北朝鮮国家を継続してほしいから」というもくろみだろうね。