2017/1/14

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
佐川男子はなぜキレた?

再配達増え「宅配はつらいよ!」

 昨年暮れの話しだけど、東京都内のマンションから荷物を台車に積んで出てきた佐川急便の男性配達員が、突然キレて台車や荷物を路上にぶん投げて大暴れ。これを住民が動画撮影してYouTubeに投稿し話題に。上司がおわびし、本人は内勤に配転される騒ぎになった。

 そういえば、昨年末は宅配便に関し、不在票による再配達や荷物引き受けの依頼をしようと何度も電話をしたのにつながらなかったとか、配達が早朝や深夜だったりして驚いたという話しをよく聞いた。宅配便のお兄さんは、佐川男子≠ェ写真集になったり、配送先の暴力団員を撃退したりとかなり格好いいイメージだったけど、最近どうも忙しすぎて疲れているみたい。ちょっと内幕を取材してみた。

採算ラインは配達量

 昨年暮れは、お歳暮やクリスマスの贈り物、買い物、そして正月用の食品が一気に集中し、完全にパンク状態。「感触とすれば、この間通常の5割増し」と宅配便配達員は顔をしかめる。そして、「YouTubeボクも見ました。いけないことだけど気持ちは分かる。ボクらは1個の荷物に対して受け取り印をもらうまで配達終了にならない。1回で済んでも何度か再配達で足を運んでも、手数料は同じ。腹も立ちますよ」とこっそり教えてくれた。

 小口貨物の宅配便業界は、始まってまだ40年足らず。今や「クロネコ宅急便」のヤマト運輸と「飛脚便」の佐川急便で2強を形成。「ゆうパック」の日本郵便が約1割でこの3社で全体の9割を占める。

 貨物列車やトラックに、小口荷物を積んで定期的に運び、採算に合うかどうかは単純に量で決まる。

厳しい要求に業界の限界説

 3社の独占で、しばらく平和だった業界が大混乱に陥ったのはAmazonの出現。楽天市場が1997年に登場以来、独占状態だったのに対し、2000年に日本上陸したAmazonは1時間以内で配達する「プライム・ナウ」など早さを売り物にした配送サービスで、急速に売り上げを伸ばした。

 当初、Amazonの商品を配送していたのは日通だったけれど、その後は佐川急便に。その佐川も5年前に配送料が折り合わず撤退。今はヤマトが全面的に引き受けているけれど、時間指定などの厳しい要求に限界説が以前からささやかれている。

 Amazon側も話題のドローンを使った即配を含め、近い将来は自前で配送に乗り出す可能性が高いよ。

ジレンマに苦しむ業界に利用者の協力不可欠

 さて、受け取る側からすれば、ムダを省く対策は「不在時再配達を減らす努力をする」しかない。宅配便で再配達に回る率は通常2割。これが年末だと3割に跳ね上がる。

 しかし、再配達に掛かる経費は全国で年間2600億円、労力延べ9万人と試算され、業者全体労働力の4分の1に及ぶ大きな負担となっている。

 受け取る側の一番問題なのは独り住まいの女性宅。「朝からピンポンされても、ノーメークにパジャマ姿では出られない」とか「インターホンの前に、男性が立っていると怖い」「時間指定したのを忘れていた」などで居留守を使うケースもある。 配送員が怒るのも無理ないよね。

 しかも配送業者からすれば最近のマンションはやっかいだ。「オートロック式だから棟内で複数配送できない。荷物を1つ届けるたびに1階まで下りて1軒ずつ訪ねるんです」というから泣かせる。

 国と宅配業者は、人と時間、燃料のムダをなくすため、さまざまな対策に乗り出している。駅などに宅配ボックスを設置したり、コンビニで受け取れたりするのはもちろん、戸別の宅配ボックス設置も進めている。携帯アプリを使って再配達してくれるシステムも登場。

 宅配業界は1992年に年間11億個だったものが、20年経った現在は40億個超。今やAmazonや楽天市場では、競うように送料無料≠ェ当たり前に。宅配業界は薄利多配の労働集約型産業で、慢性的な人手不足と長時間労働のジレンマに苦しむ。

 これからさらに進む少子高齢化日本社会で、過疎の地方にとっては独居老人世帯などへの食品配達が、生活維持への命綱になる時代がすぐそこまで来ている。早くて便利な小口宅配システムを維持するために利用者も協力出来るところは手伝って、例えば「再配達2回目以降は有料」とかも仕方ないかな?