2016/11/26

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
トランプ政権誕生 日本への影響は?

国際協調から米国第一へ

 ドナルド・トランプさん(70)が来年1月に第45代大統領に就任するよ。42代ビル・クリントンさん、43代ジョージWブッシュさんと同い年で、史上最も高年齢の新大統領誕生だ。内外では今も賛否が入り乱れているトランプさん。その伝説的人物像の研究は週刊誌などに任せ、本紙では、今後予想される日本との関係に絞って考えてみよう。

「米国に得か?損か?」

 トランプさんは総資産100億ドル(1兆円)ともいわれる金持ちで、国内でアメリカンドリームを実現する自由競争を歓迎しているよ。自身の経済活動はすべて身内に引き継ぐことも明らかにしている。

 こうしたワンマン経営者の考え方を端的に表す言葉に、田中角栄元首相の長女真紀子さんが外相時代に発した「人間世の中に3種類しかいない。家族、敵、そして使用人」というたとえがある。どんな忠実な部下でもしょせんは使用人で、信用できるのは家族などの身内だけ。このどちらにも属しない人間は敵ということなんだ。

 つまりこれまで「対米追従外交」といわれてきた日本は、トランプさんの使用人になるしかない。でなければ、彼のバラエティー番組での決めゼリフ「おまえはクビだ!」とバッサリやられそうだよ。

 トランプさんの興味は「メキシコなどからの不法移民排除」と「対中国貿易の赤字解消」しかない。そのために、「アメリカン・ファースト(米国のことを第一に考える)で国内経済を持ち直す」と考えている。日本への要求も、「米国に得か?損か?」で判断しているよ。

防衛予算が倍増に?

 そのトランプさんが日本へ要求するポイントは次の4つだよ。

@駐留米軍の経費負担を増やす

A米軍が世界の警察≠やめ、その肩代わりとして兵器類を大量に購入してもらう

B牛肉やオレンジなどの農産物の輸入を増やしてもらう

C米国債を買い増してもらう

 思いやり予算≠ニいわれる在日米軍関係費は、光熱費などの駐留経費1920億円をはじめ、周辺対策や土地代などを含めると年総額5500億円余り。韓国やドイツに比べてケタ違いに多いんだ。

 それでもトランプさんは、日本の自衛隊が交戦権を持たない弱みを徹底的に突いて、さらに増額を求めると思うよ。

 米国の財政赤字は連邦政府分だけですでに19兆3千億ドル(1930兆円)。景気を良くするために、トランプさんはお金をばらまくつもりだから、さらに赤字は増える。だから、世界中の米軍を撤退させて軍事費を削減し、帳尻を合わせようとしているんだ。

 ただし、単純に減らすと支持母体の一つである米国軍需産業が痛手を被るので、その肩代わりを日本などの同盟国に引き受けてもらおうとしているよ。もともと安倍首相は、超タカ派で「日本の自主独立は、自身の手で」という論者だから、これは渡りに舟。現在5兆円程度の日本の防衛予算はザックリ計算しても倍増しそうだよ。

TPP離脱は先延ばし

 「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)離脱」はトランプさんの公約の一つだけど、国内の輸出業者からのプレッシャーも強いのでまずは表明だけして様子を見る。その間に、メキシコやカナダなどと結んだ北米版TPP≠ニもいえるNAFTA(北米自由貿易協定)を破棄し、アメリカン・ファーストの実行を支持者にアピールする。一見、日本には関係なさそうだけどメキシコに工場を持つ日本企業は大きな痛手になるよ。

 棚上げするTPPの代わりに、まずFTA(2国間自由貿易協定)を日米間で結ばされ、枠を拡大して牛肉やオレンジ、海産物などの農産物、米国が膨大に抱えるシェールオイルといわれる石油が一挙に日本へ流れ込む。日本のような資源輸入国は一転して重い負担となるダブルパンチだ。

対米追従が命取りに

 最後は日本がすでに120兆円も保有する米国債の買い増しだ。米国の赤字は最終的に円高ドル安で軽減するしか手はないんだ。しかも市場経済原則を無視したネオコン(保守タカ派)中心のトランプ政権の意志≠ナ為替が動くから、安倍・黒田コンビの異次元緩和も黒田バズーカも到底通じないよ。

 英国のEU離脱に端を発したグローバリズム(国際協調)の崩壊は排他主義を台頭させ、その流れは来年さらに欧州各地へ飛び火する。日本外交の長年の基軸だった対米追従一辺倒≠フ継続が、アベノミクスの命取りになるかもしれないよ。