2016/10/22

そうやったんや! 畑山博史のわかるニュース
主婦の「働き損」誘う 税金と年金

パート年収の「壁」、103万円? 106万円?

 パート妻に対する配偶者控除(夫の扶養家族から外れずに、世帯の税金を減額してもらう制度)の壁「年収103万円」と、社会保険料免除(夫の側から、妻側の健保料や年金掛け金を出す制度)の壁「年収106万円」が話題になっている。与党の自公両党は選挙向けに「配偶者控除103万円の壁≠150万円以上に緩めますよ」という方針を示した。

 夫婦や親子など家族≠ニいう単位を重んじる与党は、もともとは「配偶者控除廃止で夫婦にバリバリ働いてもらって税金や社会保険料を共に負担してもらい、代わりに夫婦控除制度≠新設し税金を減額しますよ」という方針だったが、180度方針転換した。

 この一連の動きを、「あなたの家計を損しない」ことをポイントに調査分析してみよう。

「取りやすいところから取る」が大方針

 まず基本として、国つまり財務省は「取りやすいところから取る」(消費増税やたばこ税・酒税引き上げ)と「企業への税負担は軽く、個人への税負担は重く」(法人減税・所得増税)という大方針を絶対変えない組織だということを忘れないで。

 天文学的な数字の負債(赤字国債)を抱える日本。一方で人口は、世界でも希有(けう)なスピードで少子高齢化が進み、医療・介護・年金の社会保障費用は増大するばかり。そこで国民には出来るだけ長時間長期間働いてもらい、国にせっせとお金を納めてほしいのが本音。

配偶者控除の廃止が本音

 まず配偶者控除から。現行は妻の年収103万円以下なら、夫の年収から38万円を差し引くからその分所得税が減る。そこで財務省は「配偶者控除を止めて、夫婦控除を新設」と提案してきた。これだとパート妻の年収上限がなくなるし、「夫婦という単位も尊重して割り引くからいいでしょ」という触れ込みだ。

 ところが、税収減少を避けるため財務省は当然のごとく「世帯合計年収上限」を同時に設けようと画策。そうすると現在配偶者控除を受けている高額所得夫の世帯は増税になる。1961年に創設され、国民になじみ深い配偶者控除を「どうしても廃止したい」というのが財務省の本音で、だまされてはいけない。

 財務省が一転して、現在の「壁」103万円を、150万〜200万円に引き上げてきた背景も、そう考えると分かりやすい。彼ら一流の深慮遠謀だ。

便利な理屈にだまされないで

 さてもう一つの「壁」106万円の社会保険料を考えよう。パート妻はこの額以内だと、国民年金は夫の第3号被保険者になれて、健保も夫に家族としてぶら下がれる。これが出来なくなると、単純に試算して「社会保険料免除時ギリギリの年収105万円と、同額の実収入を得るためには125万円程度必要」となる。ただし長い目でみると、3号被保険者の国民年金だけでなく、将来妻自身の厚生年金を受け取れるメリットはあるが、「10年後の1万円より、明日の100円」が皆の本音でしょ。

 いずれ財務省は、「年金支給年齢を繰り下げて、高齢者再雇用を更に延長しよう」なんて言い出すのは目にみえている。

「勝ち組・負け組」の言葉を死語に

 ここで少子高齢化時代の日本の働き方を考えてみよう。

 安倍政権の掲げる1億総活躍の目玉は3つ。女性・高齢者・外国人による新たな労働力の確保だ。具体的には、正社員夫がもっと家事子育てなどに時間を割き、パート妻の社会再進出と出生率向上を促そうという青写真だ。

 実際には結構ハードルが高く、本音と建て前が激しくぶつかり合う。

 成熟した少子高齢化社会の日本は、国だけでなく企業も人も生き方を変えて「ゼロ成長でも立ちゆく日々の暮らし」を目指さないとダメ。男性中心の争って奪い合う競争社会から、女性中心の育てて分け合う共生社会へ。「仕事も子育ても」を実現できないと意味ない。もういい加減「勝ち組・負け組」なんて言葉自体を死語にしようよ。